ホクロ治療は簡単、でもそうではなかった経験もあります

ホクロの治療はあたかもレーザーを使用すれば簡単に取れるように、数回にわたってブログに書いてきました。

しかし、今でも思い出すたびに「しまった!」と後悔をしている治療もあります。患者さんに申し訳ないことをしたと心から懺悔をした、現在でも忘れることができない経験があります。

医師の経験不足は患者さんの悲劇に直結する

それは今から十数年前の当院がレーザーを導入したばかりの時期でした。中学生の女の子がお母さんと一緒に来院しました。女の子は右胸にある直径5ミリほどの黒子が気になってしょうがない、とのことでした。よくよく話を聞くとセーラー服の襟から少しだけ見える黒子でしたが、第三者の目が気になりだす思春期にありがちな悩みと解釈して「レーザーで簡単にきれいに取れますよ!」と私は告げました。非常に理解力のある御嬢さんであったので、治療に対する恐怖感もなく、治療は順調にまさしく簡単に黒子は取り除けました。

術後のケアも説明して、十分に理解していただき一週間後に念のためチェックをさせてもらう予定を組みました。一週間後の来院されたとき、きれいに黒子が取れていて傷痕も少し赤みがあるだけで順調なしあがりであったため母子はもちろんのこと私も「ねっ、簡単にきれいに取れたでしょ!」と共に喜んでいました。

数年後にとんでもないことが起きていた

数年後のその御嬢さんが当院の一般診療の皮膚科を受診しました。病気自体は単純な湿疹でしたが、首のあたりの湿疹を診察した時に小さな赤い円形の盛り上がった皮膚病変が私の目に入りました。

そこを指摘してよくよく見せてもらうと、なんと数年前に綺麗に取れたはずの黒子と同一の場所に肥厚性瘢痕と呼ばれる状態の異常が認められました。私はあわててお母さんと女の子にいつからこんな状態になっているのか尋ねたところ、治療後数週間で赤みも消えて、傷痕はほとんど目立たなくなったそうですが、半年位経過して少し赤みがでてきて痒みを伴ったので掻いているうちに盛り上がってきたとの話でした。原因として考えられたのは以下の3つ。

  1. 胸部付近の傷はケロイド・肥厚性瘢痕を起こしやすい
  2. 傷痕を刺激すると肥厚性瘢痕になりやすい
  3. 肥厚性瘢痕は傷ができてから時間をおいて発症してくる

上記の点を十分に説明していなかったために惹き起こったトラブルに間違いありません。本人とお母さんは傷痕をひっかいてしまったのでこのような状態になってしまい、原因は自分たちにあると考えていました。

でも、私は上記の私の説明が足りなかったことをお話して、肥厚性瘢痕の治療をそれから数か月にわたって続けさせていただきました。

説明したつもりではいけません 

私は注意点を説明したつもりでしたが、レーザー治療の晩発性のトラブルも考慮に入れて、治療後半年くらいは月一回程度の通院を促しチェックをしていれば防げたトラブルだったと反省しています。そのご、その女の子は社会人になった今でも湿疹や風邪などの病気に罹った時は当院を利用してくれています。綺麗になった傷痕ではありますが、感性が研ぎ澄まされる思春期にすこしでも嫌な思いをさせてしまったことを心からお詫び申し上げます。彼女を診察させていただく度に私は患者さんへの説明は明確にわかりやすく伝えなければいけないと肝に銘じています。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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