眼瞼下垂の手術は眼科?形成外科?それとも美容外科?

目もと・目周り

眼瞼下垂の治療のための病院の診療科の選び方

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上まぶたが下がってきて、目を覆う症状に悩まされたり、気になってしかたがない方は少なくありません。

しかし、上まぶたが垂れ下がってくる症状= 眼瞼下垂症、とは限らないことはあまり知られていないと思います。

眼瞼下垂は病気です、でも手術跡を目立たなくさせるには美容外科?

健康保険を使って治療可能なのは「眼瞼下垂症」であり、老化等にともなって上まぶたが垂れ下がってきただけで眼瞼下垂症と診断することはできません。健康保険は病気の治療を日本中どこの医療機関で行っても、基本的には均一の治療費であることが特徴です。しかし、眼瞼下垂という状態に関しては健康保険で手術可能な医療機関もあれば、全額自己負担のいわゆる自費での手術を行っている医療機関もあります。

どのような眼瞼下垂であれば健康保険で手術が可能であり、どのような場合は自費で手術をした方が良いのか非常にわかりにくい状況になっていますので、私が知る限りの知識を投下して適切な医療機関で眼瞼下垂を治療すればよいのかのアドバイスとしてお役立ていただければ幸いに存じます。

眼瞼下垂は状況を表す言葉であり、病名では無い可能性もあります

眼瞼下垂と同じような状況を表す言葉で「上眼瞼皮膚弛緩症(じょうがんけんひふしかんしょう)」があります。両者の違いを知るためには眼瞼下垂症の定義を明確にしておく必要があります。

眼瞼下垂症はまぶたを開ける機能不全により、視る機能が低下することを意味する病気のひとつです。症状としては

  • 頑張って目を開こうとしても充分な視野が確保できない
  • 眉毛を吊り上げて目を開ける必要がある
  • 顎を上げて視野を確保する必要がある

原因はまぶたの皮膚やまぶたを支えている腱が伸び切ってしまうことが主です。老化現象の一つと考えることもできるのですが、若い人であっても眼瞼下垂症は発症します。若い人が眼瞼下垂症になってしまう大きな原因としてコンタクトレンズの影響や花粉症などで目を擦ってしまうこと、あるいは化粧を落とすために上まぶた付近を必要以上に擦ることが考えられています。

眼瞼下垂症の重症度判定、これに従って治療方法を選択します

眼瞼下垂症であるかを自分である程度チェックできる方法があります。念の為ご自分でチェックをしてから、眼科医あるいは形成外科医を受診した方が、健康保険での手術を受けられる可能性が高まります。

  1. 自分で鏡を見ながら、可能な限り目を見開きます
  2. 白目が十分に見える場合は眼瞼下垂症とは診断されない可能性が大です
  3. 白目が見えないけど、瞳孔(一般的には黒目と呼ぶことが多いよね)は全部見える時は軽度の眼瞼下垂症
  4. 瞳孔の一部が半分以上見える時は中等度の眼瞼下垂症
  5. 瞳孔が半分以上隠れてしまっている時は重度の眼瞼下垂症

以上はあくまでセルフチェックなので眼科や形成外科の専門家は違う診断をする可能性も無くは無いですが、一応の目安にはなるはずです。

https://www.eyedoctorophthalmologistnyc.com/treatment/droopy-eyelid-ptosis/

この図は米国のManhattan Eye Specialistsというクリニックのものです。mm単位で鑑別をしていますが、ここまで詳細に定義しないでも前述のセルフチェックで十分だと考えています。

眼瞼下垂症では無いけど、明らかに上まぶたが垂れ下がってきた状態ならどうすれば良いか?

健康保険はあくまで病気を治すためのシステムです。だって、出産は問題がない限りは全額自己負担、つまり健康保険は使えませんものね(この考え方、あまりにもお役所的だとは思いますし、少子化の原因の一つなんじゃないかと私は考えています)。

眼瞼下垂のセルフチェックで眼科医や形成外科医を受診して、「眼瞼下垂症」と診断された場合は健康保険で手術することができます。ちなみに眼瞼下垂症の手術である「眼瞼下垂症手術」の保険点数は眼瞼挙筋前転法だと7200点だから7万2000円、筋膜移植法だと18530点だから18万5300円となっています。もちろん薬代や診察費用や麻酔費用もかかりますけど、保険診療の対象となった場合自己負担は数万円で済ますことができます。眼瞼下垂症手術の保険点数のところに「その他のもの」として6070点というのもあるのですが、これは上眼瞼皮膚弛緩症に対する手術と考えられますが、皮膚が垂れ下がって視野をふさぐ状態なんでしょうけど、どのような場合に適用されるのか詳細は不明です。

でもさあ、眼瞼下垂症ではないけど、どう見ても上まぶた、つまり眼瞼が垂れ下がっているんだよなあ、って方も少なくは無いです。そのような状況の方に対する診断は、「上眼瞼皮膚弛緩症」とするのが医学的には正しいと考えられます。まあ、その辺りざっくりと「ああ、眼瞼下垂ですね、健康保険で手術しちゃいましょう」と懐深い医師もいないわけじゃないようだけどね。

上眼瞼皮膚弛緩症の場合は残念ながら保険診療の対象とはなっていないので、全額自己負担という腑に落ちないことになっているのが日本の医療制度なのです。日常生活に支障は無い、病気で無い、だから美容的な問題だから健康保険でカバーは出来ないよ、ってことなんです。

眼科医や保険診療で形成外科医に上眼瞼皮膚弛緩症の手術をお願いするのは、日本の保険制度の趣旨に反しますので同じ手術を自費で払うことになってしまうことに強い抵抗感を示すのは当たり前だとも考えられます。美容外科医に自費での上眼瞼皮膚弛緩症の手術を依頼することは、果たして患者さんにとってのベネフィットはあるのでしょうか?

保険診療と自費診療の大きな違いはこれ❗

健康保険で眼瞼下垂の手術が可能である理由は病気であるからです。眼瞼下垂症という病気を治療する目的は機能の改善、つまり視野を確保することです❗一方で美容外科医が全額自己負担で眼瞼下垂(上眼瞼皮膚弛緩症)の手術をするのは見た目の改善(結果的には視野の確保も可能だけどね)です。

外科から派生した形成外科、そして形成外科から派生した美容外科、これらの目的は大きく違っています。このような考え方も出来ます。

生命 > 機能 > 美容

非常事態、例えば戦争のさなかだと、命を優先するために、残念ながら四肢を切断することがあります。機能より生命を優先した結果だと当然その選択は正しいです。生命には影響ないけど、美容面ではマイナスであっても、機能を優先させなければならないこともあります。たとえば大きなやけどをした場合、皮膚移植が必要と成った場合、移植する皮膚を確保する場所には傷跡が残りますし、皮膚を移植した場所はもともとそこに存在していた皮膚とはちょっと違った皮膚が移植されることもあります。皮膚という身体を守る機能を優先した結果として当然そのような選択がなされます。

眼瞼下垂症を治療すれば肩こりや頭痛が解消することもありますし、気になっていた生活の質の劣化も改善することが可能です。しかし、まぶたの微妙な形などをリクエストすることを保険診療で求めることは健康保険制度の目的からは逸脱してしまうのです(もちろんそのような要望に答えてくれる眼科医も形成外科医も皆無ではないでしょうけどね)。見た目重視で上まぶたのたるみ改善を目指すのであれば、細かいリクエストにも対応してくれる美容外科医を受診することをオススメいたします。

当院の美容外科医が手術した上眼瞼皮膚弛緩症の症例です。実はこの手術は眉の下を切って余分な皮膚を削除しています。

症例写真に協力いただける方を募集中です。ご協力お願いします。詳細は問い合わせフォームから「院長のブログ読んだけど、眉下切開手術に協力してあげるよ」と書き添えてください。

じゃあ、明らかに眼瞼下垂症なんだけど見た目も良くしたいし傷跡も極限まで目立たせたくないという人はどうすればいいのでしょうか?眼瞼下垂症の手術は眼科医か形成外科医に保険診療でお願いして、その後の見た目に関しては自費で美容外科医に依頼するの?という複雑な問題も発生してくる可能性については少々考えさせてくださいませ(苦笑)。

桑満おさむ(医師)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ(医師)への相談窓口

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