【エクスパレル麻酔】術後の痛みを抑える画期的な麻酔薬が登場しました❗

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EXPAREL | Non-opioid Analgesic Pain Management

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手術と聞くと、「痛いから嫌だ❗」「術後も痛いのでは?」と考えて治療を躊躇している方も多いかと思われます。

術後の痛みを72時間に渡ってコントロールできる、「エクスパレル」という注射麻酔薬の登場は今後の手術、特に美容外科手術の常識を変える可能性があります。

手術で気になるのは痛み。術後の痛みが怖い!

手術と聞くとほとんどの患者さんは、「痛くないですか」と質問されます。「手術の痛みは麻酔するから心配ないですよ」と答えると次は、「手術後は痛くないですか?」との質問が当然出てきます。

いままでは手術後の痛みに対して医師ができることは消炎鎮痛剤を処方することだけでした。痛みを十分に抑えるためには麻薬系の痛み止めが本来ならば処方されても良いのに、日本では処方しにくい環境にありました。そこで、

エクスパレル(EXPAREL)という72時間に渡って痛みを抑える新しい麻酔剤が注目を集めています。

通常のブピバカインと比較して青い線のエクスパレルは少ない量で72時間血液中に存在していることがわかっています。

https://www.exparel.com/patient/index

エクスパレル麻酔が海外、特に米国で多用されている背景として、今までは手術後の痛み対策としてオピオイド(opioid)が乱用される傾向があり、これが大きな社会問題となったためです。

アメリカでは、術後の疼痛管理を目的としたエクスパレルの使用が2011年10月にFDA(Food and Drug Administration、アメリカ食品医薬品局)で承認されています。一方、我が国においては厚生労働省の承認が出ていないため使用するにあたっては医師が個人輸入の形をとって、厚生労働省、私のクリニックの場合は関東信越厚生局 健康福祉部 薬事監視指導課(略して薬監)で面倒な手続きをする必要があります。

https://www.exparel.com/patient/index

米国ではエクスパレルは「オピオイドじゃないよ❗」と強調して宣伝されています。術後の痛みのコントロールのためにオピオイド系の薬を使用して、その依存性に苦しめられた人が多いという米国の事情が分かるのではないでしょうか?

術後の痛みは社会的な復帰を遅らせる大きな要因であり、誰でも手術後の痛みから開放されたいと思いますよね。当院ではエクスパレルを美容外科治療の痛み止めとして使用してますが、できればもっと早くからエクスパレルを使用開始したかったです。なぜ使用開始が遅れたのかといいますと、十分な知見を重ねてから採用するべきだと判断に慎重になってきた理由がいくつかあるのです。

安全に、確実に痛みを抑える効果を発揮するエクスパレルとはどのような麻酔剤であるかをお伝えします。

エクスパレルの成分と長時間痛みを抑える作用のための工夫

エクスパレルは以前から普通に局所麻酔として使用されてきた注射薬ブピバカイン(bupivacaine、薬の商品名だとマーカインが一般的)が主な成分となっています。

このブピバカインの麻酔効果、つまり痛みを抑える効果をいかに長時間にするかという問題を解決したのがエクスパレルです。ですので徐放性ブピバカイン・リポソーム注射とも呼ばれています。

麻酔薬の徐放性とは薬剤が一気に全身に行き渡るのではなく、徐々に薬の成分を放出させること、例えば癌性の疼痛に使用されるオキシコンチン(oxycontin) が代表的な徐放製剤です。

徐放性を得るためにブピバカインをリポソーム化つまり、微小なカプセルで包み込むことによって、エクスパレルは麻酔効果、つまり痛み止め効果が長時間に渡るように工夫された注射薬となっています。

エクスパレルの臨床応用の道のり

私がエクスパレルのことを初めて知ったのは10年ほど前のこの論文です。

「Safety Evaluation of EXPAREL (DepoFoam Bupivacaine) Administered by Repeated Subcutaneous Injection in Rabbits and Dogs: Species Comparison」(PMID: 22013534)は開発中のエクスパレルの安全性を確認するための動物実験に関する内容です。繰り返しエクスパレルを使用した場合、それまで人間に使った時に仮定されていた量より大量に使用しても安全であることが示唆されています。

その後、エクスパレルはFDAに承認されたことによって、米国ではそれまでのオピオイドに代わって普及してきています。

エクスパレル麻酔の効果の裏付けとなった医学論文

私がエクスパレルを当院の美容外科手術で採用しようと決心した論文は「Systematic Review of Liposomal Bupivacaine (Exparel) for Postoperative Analgesia」(PMID: 27673545)です。

この論文は2015年10月までに発表されました。特に形成外科で使用されたエクスパレルの術後の疼痛管理に関する論文を集めて検証したものです。

エクスパレルは形成外科の手術後の疼痛管理の為に安全な方法である

との結論に至っています。

形成外科の手術後に使用して安全であるということは、美容外科手術後の痛みに使用しても安全である、という解釈に間違いは無いと考え、エクスパレルの採用を考慮したのですが⋯遅れに遅れてしまいました。

エクスパレルは非常に高価な薬であり、日本では未承認であったことも大きな理由なのですが、当時当院美容部で行っていた手術は少数例であり大々的採用したことをインフォメーションする必要も無いと考えてしまったのです(まあ、院長である私の判断ミスですね)。

後、言い訳になってしまうのですがエクスパレルの効果に関して懐疑的な意見が無いわけではないことも当院での導入を躊躇させた理由の一つです(「FDA Advisors Skeptical of Liposomal Bupivacaine for Regional Pain Control」(MedPageTodayなどによる)。

美容外科領域でのエクスパレルの必要性を強く感じた理由

2020年当初よりヘンテコな感染症が世界を混乱に陥れ、不要不急の外出を控えるお願いという不思議な要請が日本でも出てきました。

当院の保険診療部門は泌尿器科が中心であり、急性期の病気も対応する必要がありますし、当然、がん患者さんの診療も行っていますので、不要不急の外出には当たりません。

美容皮膚科・美容外科は保険診療の対象外の全額自己負担で行う医療であり、これが不要不急なのか?必要救急なのか?に関して院内で議論をしました。美容皮膚科も美容外科も最終目的は美しくなることであり、その美しさの追求に関して急を要するとは言い難いとの意見も当然出てきました。

当初は数ヶ月で落ち着くと思われたヘンテコな感染症、なぜかズルズルと引っ張る引っ張る。

美容皮膚科として頻回に通院する患者さんの最終目標をお尋ねしたところ、その目標は美容外科手術をしてしまえば一気に到達可能なものが少なくありません。じゃあ、なぜ美容外科手術に踏み切らないのか⋯主な理由は手術の痛みと手術後の痛みに対する心配でした。

そこで再注目したのがエクスパレス、手術後の痛みを72時間に渡って安全確実に抑え込むことができるのですから。

話が長くなりましたが、要するに当院で美容外科手術を行うこと考えている方に

エクスパレル麻酔、はじめました〜❗

と伝えたいだけです(苦笑)。

麻酔って痛みを抑えるっていうけど、その注射自体は痛いじゃん!

術後の痛みはエクスパレルでコントロールできたとしても、「エクスパレルを注射する時は痛くないの?」との素朴な疑問が出ることを予想してお答えしておきますね。

エクスパレルの効果は本当に72時間なの?

こんな質問もでるでしょうね。「痛みを抑える効果が切れたら追加で注射できるの?」⋯72時間、つまり3日経過したらいきなり効果が切れるわけではありませんし、術後の疼痛は3日程度で多くは治まりますし、痛み止めの飲み薬を通常は併用しますし、追加で注射するような例は稀だと考えています(汗)

エクスパレルはそもそも手術した部分に注射して使用します。

手術の時は当然麻酔をしていますよね、その部分に注射するのですから、エクスパレルを注射する痛みを感じることはありえません❗

桑満おさむ(医師)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ(医師)への相談窓口

0120-70-5929

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