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半永久的にもつという非吸収性物質を注射する整形は大変危険です!絶対に注入しないでください!

半永久という言葉はとても魅力的です。「ダイヤモンドは永遠の輝き」というデビアスのキャッチコピーが多くの人の記憶に強烈に残っているのも永遠という言葉の力が大きいと思うのです。

ですが、私たちのからだは永遠ではありません。体の中に、半永久的なものを入れる、これは不自然といえます。今回は、体内に吸収されないから安全と思われがちですが実は極めて危険なんですよ、というお話です。

 非吸収性物質を注入後にトラブルが発生したDさんの場合

50歳Dさんは約10年前に鼻を高くする目的で、ある美容外科にて半永久的に効果が持続するというダーマライブを注入しました。

注入後、4~5年たったころから、注入した部分が赤くなり、少し腫れてきました。近所の皮膚科で化膿止めの薬を出してもらい、いったんは治まりましたが、数ヶ月後にまた同じ症状が出て、その後も何度も繰り返すようになりました。

そのうちに赤みは落ち着きましたが、硬いしこりが残ってしまい、さらに一部分が不自然に膨らんできたため心配になって、当院を受診されました。

診察してみると、鼻根部より少し下の鼻背部が少し盛り上がり、その部分に小指の先くらいの硬いしこりが触れました。

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ダーマライブ(Dermalive)とは、ヒアルロン酸にハイドロキシメチルメタクリレートと呼ばれる非吸収性の物質を混ぜた医療用注入材ですが、かねてよりその危険性が指摘されているいわくつきの注入物です。

というのも、ハイドロキシメチルメタクリレー (「hydroxyethyl methacrylate 」ヒドロキシエチルメタクリレートとも言う)はソフトコンタクトレンズなどに使用される物質であり、人体にとってはあくまで異物ですから。

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ダーマライブ

(写真出典:http://www.gulfgeneric.com/healderm_prod_gulf.htm)

 

このような非吸収性の物質は注入後に異物反応を起こして赤く腫れてきたり、異物性肉芽腫と呼ばれる硬いしこりができる事があるのです。

 

非吸収性注入材「ダーマライブ」の危険性

Dさんは、ダーマライブがそんな危険な物とは全く認識しておらず、担当医師からも後遺症や成分についての説明は一切なく、「吸収されないので半永久的にもちます」「何度も注入する必要がないので経済的ですよ」などと言われ、軽い気持ちで注入したそうです。

非吸収性物質が混入されていない純粋なヒアルロン酸は、通常数ヶ月から数年ほどで100%分解吸収されてなくなってしまうので、安全なのですが、非吸収性物質が混入されたヒアルロン酸は非常に危険です。

ヒアルロン酸やコラーゲンなどの吸収性の物質に非吸収性物質を混ぜた注入剤は、ダーマライブ以外に、DermaDeep(ダーマディープ)、Artecoll(アーテコル)Artefill(アーテフィル)などがあります。

また、非吸収性物質と水分でできたAquamid(アクアミド)という注入製剤もあります。

 

アクアミドとは?

アクアミドはほうれい線や鼻や唇の形を整えるために開発された注入剤(フィラーと呼ばれる)です。いわゆる切らない美容治療でヒアルロン酸になりかわるものとして大々的にプロモーションがなされました。

アクアミドの構成成分は水が97.5パーセントで、ポリアクリルアミド (polyacrylamide) が2.5パーセントと取扱会社のサイトでは説明されています(https://aquamid.jp/what-is-aquamid-2/)。

アクアミドの効果を発揮する成分であるポリアクリルアミドは水溶性合成樹脂に分類されており、工業用として原油の回収や排水処理に使用されているものであり、そもそも人体用に開発されたものではありません。工業用として開発された素材が人体用に安全に使用されている例は少なくはありませんが、アクアミドがあまり医学界で歓迎されていないことを示唆することとして美容先進国である米国では販売の許可がされていないことが挙げられます。

これらの非吸収性物質を注入した後、数年~数十年経って、腫れたり、赤くなったり、膿がたまったり、皮膚がただれたり、皮膚が盛り上がったり、皮膚が壊死を起こしたりといった合併症の報告が数多く出ています。

 

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上の写真は非吸収性物質をほうれい線に入れた後、肉芽腫が生じた例です。

(出典:http://archderm.jamanetwork.com/article.aspx?articleid=412112)

 

また、下に挙げた論文はすべてダーマライブを注入後に発生した肉芽腫について述べたものですが、ほんの一部です。他にもたくさん報告がありますがきりがないので割愛します。

「Two cases of delayed granulomatous reactions to the cosmetic filler Dermalive (R) , a hyaluronic acid and acrylic hydrogel」(PMID: 17034549)ではダーマライブを使用して遅延性の肉芽腫反応が出てしまった症例が2例報告されています。

「Possible causes and treatment options of dermal filler granulomas」(plasticsurgerykey.com/)ではフィラー注入後の肉芽腫は稀な副作用であると記載されていますが、ダーマライブやアクアミド系のフィラーの合併症の率は他のフィラーと比較して高い出現率が表記されています。

「Facial Granulomas Secondary to Dermalive Microimplants: Report of a Case with Histopathologic Differential Diagnosis Among the Granulomas Secondary to Different Injectable Permanent Filler Materials」(PMID: 16625084)は効果の永続性を求めたダーマライブの非吸収性フィラーという性質が肉芽腫を引き起こすことを組織学的に研究したもので文中では「続発するダーマライブによる肉芽腫の症例」とまで書かれています。

ダーマライブで発生した異物性肉芽腫の症例写真

Facial Granulomas Secondary to Injection of Semi-Permanent
Cosmetic Dermal Filler Containing Acrylic Hydrogel Particles

「Dermalive Granuloma:A Lesion With Distinctive Histological Features」(PMID:21430829)はヒドロキシエチルメタクリレートによる肉芽種の発生はフィラー注入後数年で現れるものであり、治療としては外科的切除が必要であることを警告しています。

「Facial Granulomas Secondary to Injection of Semi-Permanent Cosmetic Dermal Filler Containing Acrylic Hydrogel Particles」(PMID: 16625084)ではダーマライブの他に「Bioplastique」や「Artecoll」などの商品名を挙げて長期間分解されない成分で構成されるフィラーの危険性を述べています。

これらの論文も参考にして、Dさんのしこりの原因を探ってみると、やはり、非吸収性物質によって引き起こされた異物性肉芽腫の可能性が一番高いと思われます。

 

一度注入してしまった非吸収性物質はすべて完全に除去することができません

では、硬い肉芽腫ができてしまったらどうすればよいのでしょうか?

治療法としては、手術により可能な限り肉芽腫を取り除くしかありません。しかし、注入された非吸収物質は、組織浸潤といって、周囲の組織に複雑にしみ込むように入り込んでいるため、すべてを完全に取り除くことができません。

特に皮膚の真皮にしみ込んだ異物を無理して取り過ぎてしまうと血流障害を起こして皮膚が壊死を起こしてしまうことがあるので、あえて一部分残すことになってしまいます。そして、異物が残っている限りは、将来また炎症を起こして赤く腫れたり、再び硬いしこりが発生する可能性が一生つきまとうことになってしまうのです。

異物性肉芽腫を摘出する場合には、皮膚を切開しなければならないので、傷跡が残ってしまいます。また、肉芽腫が大きい場合は、それを取り除いた後、その部分がえぐられたようにへこんでしまい、変形してしまうことがあり、その場合には自己組織を移植して形を整える必要もあります。

 

「永久」「半永久」の言葉に惑わされないで!

Dさんはしこりが生じてから、注入したクリニックに相談に行きましたが、その際の担当医師のコメントがあまりにも無責任で驚いたそうです。

「注入して10年も経過すれば、注入したダーマライブはすべて吸収されてなくなっている。したがって、しこりの原因はダーマライブではない。」と言われたそうです。

注入するときには半永久の効果を謳いながら、10年後にトラブルが生じて相談に行くと、もうとっくに吸収されているはずだから注入物が原因ではないと説明する矛盾した言動には聞いてあきれます。

「半永久」と聞くと、通常ならほぼ一生もつと解釈しますよね。10年しか持たないなら最初に10年で吸収されると具体的に説明すべきです。10年やそこらで半永久と言えるのなら、世の中半永久のものだらけになります。

話がそれますが、「日立が実用化をめざす半永久的デジタルデータアーカイブ技術」という記事が目に留まりました。

http://www.hitachi.co.jp/products/innovation/rd/rd_silica_glass.html

現代の記録メディアは高々100年程度の寿命しかないが、日立は半永久的にデータの保存を可能とする技術の研究開発に取り組んでいるという内容のもので、ここでいう半永久とは、なんと3億年以上といいますからたいしたものです。

同じ土俵で単純に比較できるものではありませんが、それでも一方では10年を半永久といい、責任逃れをする。他方では3000億年以上でも謙虚に半永久といい、研究開発に努力する。この歴然たる意識の違いについては考えさせられます。

 

非吸収性物質を注入して数年~数十年経っていろいろなトラブルが発生したという報告は以前からたくさんあるわけですから、美容医療の専門家としてそれを知らないというのはありえませんし、知っていても知らぬふりをしているとしたらさらに悪質です。

ダーマライブやアクアミドといった単語をネット検索すると、いろいろなトラブル例がたくさん出てきます。そこでモラルのないクリニックは、ダーマライブやアクアミドといった悪いイメージのついた名称を使わず、「スーパーヒアルロン酸」といったいかにも聞こえの良い独自のネーミングに変えて、いまだにやり続けている施設があるのです。

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上の写真は非吸収性物質によって発生したくちびるの肉芽腫です。

(出典:http://www.saylanmd.com/#!facial-filler-complications/c1r1x)

 

気になる部位に注射をするだけでお手軽な整形が流行していますが、注入材料には十分に注意してください。永久的あるいは半永久的にもつといった甘い言葉に惑わされないでください。非吸収性の製剤を注入される危険性があります。

 

執筆者情報

松下洋二医師

このブログ記事の筆者:松下洋二
Yoji Matsushita, M.D.

鳥取大学医学部卒業後に京都大学医学部形成外科に入局。大学附属病院などで形成外科・美容外科で働いた後、2007年より五本木クリニックの美容診療部の部長に就任。

医師としてこれまで患者さんと向き合ってきた経験が、読者の皆さんにとって少しでも有益な情報になるよう情報発信に努めてまいります。

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