美容整形のトラブルが増加❗ネットも含めた医療系広告の落とし穴にご注意を

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現在2021年は医療広告ガイドラインが策定され、ホームページも広告であるとされています。この記事は医療広告ガイドライン策定前の2014年の投稿です。当時と現在では状況が異なっていますので、その点、予めご了承ください。

医療は基本的に広告はできません

医師法によって医療機関が広告できる範囲は極々限られています。でも、美容整形や美容皮膚科の広告って雑誌やネットやテレビで目にしますよね。テレビの場合は美容クリニックの名前が流れるだけか、医師の紹介なのでこれは治療方法などについて広告してはいませんので法律に則った広告手法です。

美容整形のトラブルが増加

https://blindgossip.com/she-changed-her-looks-for-him/

「She Changed Her Looks For Him」とタイトルされていますので、彼のために彼女は美容整形をしたんですね。健気な女性心理を「カモ」にする美容系の広告について考えていきます。

雑誌の場合の美容治療の広告は微妙なのですが、いくつかの法の抜け道を利用していますので、後述します。

今、皆さんが目にしているネットは美容整形・美容皮膚科を含んだ医療系の広告を目にすると思いますが、つい最近まで全くの野放し状態であり、ある意味好き勝手な広告がおこなわれていました。

美容整形の検索結果で表示される広告

ネット広告の規制が厳しくなった今でも、Yahoo!で検索するとこんなにたくさんのリスティング広告と呼ばれるものがでてきます。これをクリックするとそのクリニックのフェイスリフトを紹介案内するページに飛ぶという仕組みです。これはPCの画面ですが、スマホも同様に美容関連のキーワードを入れるとゾロゾロ美容外科・美容皮膚科のリスティング広告が表示されます。

医療のネット広告規制の影響

自院のウェブサイト(古いというか間違った呼び方だとホームページ)は広告ではない、と判断されているのでウェブサイトでは実際の治療風景、医療機器の詳しい紹介、症例写真、そして料金を提示することは違法とはされません。

考え方として以前から院内の掲示物は広告、つまり不特定多数の方にバラまくものではなく、ある一定の目的をもった人対象なので広告でない、と判断されています。ウェブサイトではなるべくあり得ない表現、あり得ない超定額料金での誘い込み、医学的に全く認められていない治療方法は掲載しないように美容系の医師によって構成される協会、学会で指導しています。

問題となるのはリスティング広告といわれるもので、何かを検索した時に上方、或いは右横に表示されるものです。これは名の通り「広告」であり、昨年くらいから自主規制がおこなわれ、更に厚生労働省より大手検索エンジンに対して、厳密にチェックをするように指導された為に今ではほとんど見かけなくなりました。

しかし、広告に頼りがちな美容医療業界ですから、規制を受けないギリギリの手法でなんとか集患するために苦肉の策をとっているところもあるために、未だにリスティング広告が検索結果の画面に表示されるのです。

・上記広告にある表現で5万例ってのがあります⋯10分で5万人こなすと、50万分=8333時間=となり、1日12時間労働で週2日休んだとしたら的に計算した場合、あり得ない数をこなしていることになります。

・認定機関の⋯という表現があります。信頼度も高まります、しかしなんの認定医なんでしょうか?通常おこなわれているのは糸の業者が当社の糸を使ってくれていると「認定」するだけのこともあります。

・日本唯一、実績1500件⋯5万件に比較すればここの数字は切るフェイスリフト手術を行なっているということであり得る数です。しかし、日本唯一と言う言葉は、エイジングケア手術専門にかかっていると通常は解釈しますから、1500例のフェイスリフト手術をしたわけではないことになりますね。

このように表現が規制されていても、審査漏れしているのが実情のようです。ちなみに私はフェイスリフト手術を行なっているクリニックを探したかったのですけど、この中で切るフェイスリフト手術をするだけの腕がある医師が在籍しているのは、私が知る限りでは3クリニックだけです。

美容クリニックに対して集団提訴をおこなった方々の傾向

ネット上で超低価格で患者さんを誘導来院させて、必要のない美容治療を押し売りして、高額になった治療をその場で大幅にプライスダウンすることによって、受診した患者さんにお得感を持たせる、さらに高額な治療費をローンを組むことによって毎月の返済額を少ないものと思い込ませる、という流れが問題のクリニックではおこなわれていたことが提訴された方の証言からわかります。

安さと料金明確が魅力の回転寿司店に入ったら、ネタは並以下で高額な料金を請求された

というようなイメージです(寿司屋でローンは組めませんけど)。ネット上には同業者としてはあり得ない超格安の美容治療が表示されています。さらにイケメンの若手医師が全面に登場して来るリスティング広告もあります。

美容整形などは手術数に基づいた経験値がものをいう分野ですから、診療実績何十万件というあり得ない症例数を提示しているクリニックも見かけます。ウェブ上の広告が以前よりかなり規制されているために、安易にインチキ臭いクリニックに誘導されることは少なくなったと思われていましたところに、正しい医学知識をもった医師がおこなう上では安全性が高い糸を使ったフェイスリフト手術で集団提訴ですから、私たちには何がおこっているのか予想もできませんでした。

しかし、サイトに院長名が記されていないクリニックが多数見受けられるのもいかがなものでしょうか?責任者の名前が表示されていないということは責任の所在自体が不明確になってしまいます。(看板広告全盛時代の大昔は院長名を表記すると、売名行為と思われた時代が確かにあったことはありますけどね)

雑誌広告と取材記事の問題点、そして折り込み広告

雑誌に院名、院長名、設備等の最低限の情報を掲載する広告は違法ではありません。でも、中には詳しく患者さんの感想や治療方法があたかも取材をした雑誌内の記事として誤認する様な広告手法があります、これを記事広告とよび、常識ある雑誌であれが片隅に「PR」あるいは「広告」と明記されていません。

しかし、世の中には美容クリニックを専門に取材をして女性雑誌に記事を掲載している人もいます。私が知っているジャーナリストは実際に自分で治療費を払い、治療を受けてそれを記事にしていますから、美容ジャーナリストの鑑といえます。その一方で治療費は払わないだけでなく、裏で金銭の授受がおこなわれてヨイショ記事を書いて美容雑誌に投稿掲載している美容ジャーナリストもいるとの強い噂もありますので見分けには十分な注意が必要です。

ちなみに当院の場合はテレビでも雑誌でも取材を受けた場合は一定の取材料を頂いています。というのも取材をさせてくださいと言いながら最終的には広告費を払ってくださいとのたまう輩が後を絶たないからなのです。電話やメールで取材を申し出た方の中には当院の「取材料はいただけるんですか?」という質問に「守銭奴❗」と思われた方もいるかもしれませんが、そのようなインチキ取材が実際に行なわれている為にお互いに無駄な時間を使わないように、ハードルを高くしているのです(マイナーな雑誌社の取材な場合、取材料の予算も限られているでしょうから、発行された雑誌を多めに送っていただいてそれを取材費としている場合もあります)。

大問題は折り込み広告です

新聞に挟み込まれていたり、ポスティングされている広告は100%違法です。保険診療を行なうクリニックが開院時に折り込み広告をするのは地域住民に「お近くに医療機関ができましたよ」という広告ではなく、インフォメーションの役割があると判断され、実際は管轄の保健所の指導にしたがうのですが、開院時に限り許される広告手法です。

でも、毎週のようにポストに美容クリニックのビラあるいは折り込み広告が入っているのが現状ではないでしょうか?ネット上広告より内容的には直球勝負のものが多く期間限定でキャンペーンを行なって、それも常識的にはあり得ない超ディスカウント料金になっています。一時期フリーペーパーで美容クリニックの広告が多く見られていました、今も掲載されていますが、そこには微妙な細工がなされていて、本当なら真っ黒な違法広告なのに、グレイゾーンに逃げ込んだ広告手法もあります。この折り込み広告・フリーペーパー商法に引っかかった方も今回の提訴組の中にはいらしたようです。フリーペーパー、折り込み広告の限りなく黒に近いグレイな広告方法については、後日改めてブログでその手の内を曝露する予定です。だって違法なんだもの。

今回の集団提訴をした方は情報収集力がたりないから、という批判的意見もありますけど

今まで述べてきたように美容医療は広告が事実上出来ない職種なのです。ということは良いクリニックでも多くの患者さんに自分のクリニックの実績を知ってもらうことはウェブサイト上でしか、或いは自院を訪れた人にしか広告というかインフォメーションできないのです。

逆にいえばエゲつないクリニックは抜け道的リスティング広告を大量に出稿して、有料取材風記事広告を雑誌に載せ、さらにフリーペーパーや折り込み広告と幅広く広告活動を行なっているので、どうしても経費に占める広告費の割合が膨大になってきてしまいますから、治療費もボッタクリとしか思えない値段になってしまうことが予想されます。

では、何を信じればいいいのでしょうか?お隣近所の方が「あそこのクリニック二重まぶたの治療とっも上手だったよ」とか「あのクリニック医師に受けたヒアルロン酸治療って全く痛くなかったし、腫れることもなかったよ」なんて会話普通はしませんよね。でも、実際に治療を受けた方にお尋ねになるのが間違いなく正しい情報により近いものであるのです。

もし、周囲に急にキレイになった人がいたら「あのう、チョッと相談があるんだけど」的にお伺いしてみたらいかがでしょうか?中には親切な方がいて懇切丁寧に推薦できる美容医療機関を紹介してくれるかもしれません。ご注意 相手を間違えると絶交を宣言される可能性もありますのでくれぐれもご注意ください。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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