医師の労働時間 労働基準法を順守することはほとんど無理です

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私が医師になった26年前は研修医と呼ばれる制度がありました。

医師免許を取って二年間は研修医という身分で、法律上は医師であっても実際に一人で患者さんを診ることはなく、数年先輩医師の後を付いて回って主に入院患者さんを担当していました。

メチャクチャ長い医師の労働時間

私たちより古い世代はインターンと呼ばれる制度のもとで無給で数年間修業を積まなければいけなかった時代もあったそうです。それはあまりに酷いということで今の若い方は知らないでしょうが1960年代の学生運動のきっかけになったのも医学部によるインターン制度の改善要求だったのです。

私の時代でも朝の7時には病院に出勤して、食事前の患者さんの採血を看護師任せでなく自分たちで行うように指導する厳しい教授もいました。日中は入院患者さんの回診、手術、に追われ午後はカンファレンスと呼ばれる症例検討会、その後夕方の回診を済ませそれから自分の勉強をするような日々を送っていました。

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https://www.huffingtonpost.jp/koichiro-yuji/post_4867_b_3363253.html

今でも医師は殆ど労働基準法を超えています

また、薄給の為アルバイトとして一般病院の当直をすることもあれば当然自分が勤務している病院の当直もこなさなければなりませんでした。私の友人は多忙のため、自宅に帰れない日々が続いたのですが、留守の間に泥棒が入られました。しかし、数週間帰宅していなかったため被害にあった日が特定できなかったために警察にそれじゃ捜査はできないよ、と言われた出来事もありました。

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TVのようにこんなに恰好良くないです。研修医時代はボロボロでした。

私自身は研修医の時に14日連続当直ということがありました。また、研修医が終了して一人前の医局員として勤務したとき重症患者さんが連続したことがあり、21日間病院に泊まり込んだこともあります。その当時病院にタイムカードは無かったと思いますが、同年代の医師は多分みんなタイムカードなど見たこともないと思います。

公立の病院に勤務した時はタイムカードはありませんでしたが、出勤簿と呼ばれる勤務時間を記入する台帳があり、各自勤務状況を記入する方式でした。9時から5時を標準の勤務時間として考えると、どんなに短めに勤務時間申告しても月の残業が150時間前後になった記憶があります。その当時、病院勤務は土曜日は休みでは無かったので平均して月250ー300時間程度は働いていました。

別に私だけが特別ではなく同年代の医師にとっては当たり前のことだったと思います。もちろん当直明けでも通常に勤務をしていました。

今ではブラック病院という言葉が出てきました

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http://www.mynewsjapan.com/reports/1839

疲労が事故を呼ぶという考えもあるが⋯

余りに疲労した医師は医療事故を起こしやすいことは今では常識とされていますが、その当時はあまり意識して考えてはいませんでした。

その後、過労死という言葉が世の中に出回りだし、医師の過労死も発生して勤務時間の見直しがされて今日に至っています。関西医科大学研修医過労死事件というのが有名です。しかし、勉強ができるだけでなく、医師に要求される最低条件として肉体的にも精神的にも強じんであることも必要とおもわれます。

自分の修業の意味もあり長時間勤務になってしまうのはしょうがないこと、と思ってしまうのは私の考えが古いのかも知れません。しかし、一人前の医師になれば、一般のサラリーマンよりは給与は多いのですから、これくらいは働いてもいいのではないでしょうか?

患者さんのQOLより自分のQOL優先

新人医師の人気を集めることが、大病院の評価につながる傾向がありあまりにも新人医師を大切にしすぎる病院もあるようです。中にはキッチリ六時になると帰ってしまう若い医師がいたり、当直がマスト事項になっていない病院があったり驚きます。

その為か、患者さんの生活の質(QOLと言います)より医師本人のQOLを優先する若い医師が増えているのも事実です。

求められる医師像

勉強ができるだけで医師を選択するのは間違いです。少なくとも国家から免許証をいただいて業務を行い、また選ばれたものである自覚として体力が無い人・精神的に強くない人は医学部は受験しない方がいいです。

少しくらい勉強ができなくても情熱をもって医療現場で活躍できる医師が必要なのではないでしょうか?

医師に天才は必要ありません。努力と情熱が必要条件です。

ノーベル賞を取った山中教授も別に医師免許を取らないで、初めから研究者の道を選んでいたらもっと早くiPS細胞が完成していたかもしれません。また、医学部は定員がありますから、頭でっかちの人が入ってくると少し試験の成績が悪くても情熱を持った医師希望者は医師になれないのですから。

当院はセルフブラッククリニック

私は日常の診察のほかに本年からHPの管理なども全て自分で行うようにしました。最初のころはネットにも詳しくないし、自分で原稿を作成してHPにアップする作業も慣れていなかったので、なんと一日18時間労働が90日間続きました。

実質労働ですし、祝日休日もなしでぶっ通しです。月540時間労働です。完璧に労働基準局の指導を受ける状態ですが、残念ながら自営業でありますので「セルフブラック状態」で自分を自分で訴えるしかないです。

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今はちゃんとベッドで寝ています。

最近になってやっとHP管理等は専門用語にも慣れてきて、自分に自分で労働時間改善命令をだすことができています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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