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医学界に震撼が走る❗若い医師が主治医の方が患者さんの死亡率が低い❗

更新日:

数週間前にBMJ(英国医師会雑誌)に掲載されたハーバード大学で医療政策学者として活躍されている津川友介さんらによって書かれた論文が日本中(多分世界中でも)医師が驚愕しています。

日本中あるいは世界中の医師が驚いた医療統計の論文

Physician age and outcomes in elderly patients in hospital in the US: observational study」(BMJ 2017;357:j1797)が原文ですが、医師であってもあんまり論文は読まない、特に英語はね、って人もいるかも知れませんので一応日本語も掲載しておきます。

若い医師の方が担当患者の死亡率が低いことが新しい研究で明らかに」、これは津川さん自身が書かれたものですから誤訳や本意を読み間違えることはありません。

この医学論文を読んだメディア等が「危ない医師の見分け方」なんて感じの衝撃的なタイトルの記事を書くことは、多分間違いないでしょうから論文が伝えていることを自分の経験を踏まえて検討してみますね。

統計学的に処理されたもの⋯でも、これは真実に近い

統計学ってかなり難しい学問であり、専門家でも一般書籍にするときに間違っていることさえあります。さらに疫学に関する統計処理はかなりのバイアスがかかってしまうことがあります。

例えば統計的に5年生存率が30パーセントの病気があったとしても、患者さん当人にとっては5年後は生きているか、死んでいるかの全か無でしかありません(一人の人間が3割生きていて7割死んでいるなんて有り得ませんものね)。医学の統計、特に疫学への誤解は一般の方にかなり多く見受けられます。

今回の衝撃的な論文は

●内科系の病気で入院した65歳以上の人が対象

●医師は入院患者さん専門の医師と一般内科医に限定

●医師の年齢は40歳以下、40~49歳以下、50~59歳以下、60歳以上の4組に分けた

その結果

画像

https://healthpolicyhealthecon.com/2017/05/17/physician-age-study/ より

こんなことになっちゃっています。縦軸は入院30日以内の死亡率、横軸は医師の年齢です。

この結果、若い医師が主治医の場合の方が死なない❗

との非情な結果が出ているのです。逆に言うと

内科において緊急入院した場合、主治医が60歳以上だと死亡率が高くなる

との言い換えもできるのです(このあたり週刊Gとか好きそうなお題かも)。

色々な因子があって、データだけじゃなんにも言えないのでは⋯

ネット上で受動喫煙問題に対する論議が活発に行われています。受動喫煙が健康被害をもたらすのは様々な疫学データによって裏付けられているのですが「うちの母親はオヤジがヘビースモーカーだったけど90歳でピンピンしているぞ」的な統計学に疎い方も多く見受けられます。

今回の津川さんの論文をBMJで読んだときに「こりゃどっかに間違いがあるはず」と目を凝らしたのですが、私の能力では見つけられませんでした(当たり前❗)。いかにも週刊誌が好きそうな医学論文ですから、これをネタにして「危ない医師の見分け方」的な記事を書く予定の記者さんはご注意ください。

●対象は内科医である

●対象となった患者さんは緊急入院している

●年齢の高い患者さんほど高齢の医師の診察を希望するというバイアスは除外されている

●若手は軽症患者さんを重症はベテラン医師が診る、という可能性は限りなく排除されている

少なくとも以上の4点を頭に叩き込んで記事を書いた方がいいですね。

若手医師はガイドラインにそって、ベテランは自己流?

若手医師は経験値不足を補うために各科目・各疾患のガイドラインに沿って治療を行う傾向があります(私も当院若手医師にやんわり「ガイドラインはこうなっていますけど」と諫言されることあり)。逆にベテラン医師は自分の経験を踏まえて自信を持って治療をしている傾向があります(若手がオロオロするような患者さんに対しての接し方はベテラン医師の方が落ち着いていること多し)。

しかし、医師になったらあまり勉強をしない人も居ないわけではないので、新しい知見に乏しく積極的に新しい医学情報を得ることをしない人もいるかもしれません。今回の衝撃的な医学統計論文の存在さえ知らない医師も多いのでは?

ちなみに私は死亡率が急激に上昇する前の年齢ですし、泌尿器中心に保険診療を行っていますので内科ではありませんし(泌尿器は外科に分類される)、当院は入院施設は無いので津川さんの論文の対象外です、と自己弁護(笑)。しかし、多分、彼らのチームは今後この研究は外科の領域にも触れるでしょうし、入院施設がない診療所も対象になる可能性がありますから、自分の経験値に頼らず常に新しい医学知識を得ていかなければならない、と肝に銘じて診療を行っていく所存です。

追記:執筆者の津川さんからご指摘がありました。年齢が高い医師でも多くの患者さんを診察している場合は死亡率の増加はみとめません。
2017/5/30 12:12 追記

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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