ベストセラー「医者に殺されない47の心得」のガイドブック その1 素直に読んではいけません 追記あり

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「医者に殺されない47の心得」という本が31万部を超えるベストセラーになっています。

先日私も書店で平積みで並んでいたこの本を手にして読んでみました。著者の慶応大医学部放射線科講師の近藤誠先生は現代の日本の医療に疑問を提起した反骨の医師というイメージを持っていました。今回の著作は菊池寛賞を受賞後の作品ということで興味をもって初めて先生の本を読んで、がっかりしました。

正しいことを言ってる部分も多いのですが、明らかな間違いが⋯近藤誠センセイの著作

近藤誠がん研究所・セカンドオピニオン外来

近藤誠がん研究所 セカンドオピニオン外来(https://kondo-makoto.com/

最近、定年を迎えてクリニックを開業したようですね。

近藤氏が先日の「金スマ」で独自の理論を展開して、実際にがんと闘っている方がその番組を見たらどのような気持ちがするのか?間違いなく悪影響しか無い、と判断して2014年10月10日に追記しました。

とにかく、近藤センセイのお話は間違いだらけなんです❗

医師が書いたとは思えない間違いが目立つ「医者に殺されない47の心得』

はじめにで「僕も薬害で足を引きずった」という章があります。ご自身がマラリアにかかって医師である父親に注射を打たれ過ぎて足が筋拘縮症になりそうになったという箇所です。マラリアの治療に抗生物質を注射したとのことですが、常識的な医師であればここでひっくり返ります。

マラリアは原虫が原因でありばい菌をやっつける抗生物質が使用されることはあり得ません。

先生も本書でウィルスには抗生物質は効果がないと当たり前のことを述べています。多分善意に解釈してご多忙の先生が述べたことを編集者がいわゆる口述筆記をしたためにこんな間違いが発生したと思います。また先生のお年を考えると治療には「クロロキン」を使用したことが予想されますが、クロロキンは網膜に障害を起こすために現在はマラリアの治療に使われることはありません。

下肢の筋拘縮は医師の不注意によって繰り返し臀部に注射を行うことで引き起こされる可能性が高いです。尚、クロロキンは現在関節リュウマチの治療の可能性が期待されています。
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薬は使用するほど利益が得られる、っていつの時代ですか??

確かに大企業である製薬会社は薬が売れれば莫大な利益を得ると思います。また、大病院や大処方薬局チェーンは大量に仕入れるためにいわゆる薬価差益を得ることは可能でしょう。

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上記は厚生労働省の公表しているデータです

これは大病院等を含んだものです。私たち開業医の薬の仕入れは薬価基準の5%引きが一般的です。しかし薬を仕入れる時は消費税を払いますが、処方するときには消費税をお預かりすることはありません。
例えば100円の薬価の薬の場合
100×0.95×1.05⋯99.75円で仕入れます。0.25円の利益です。

当院ですと院内処方を行っていますが年間仕入れる薬代金は約5000万円です。薬によって得られる利益は年間12万5000円です。びっくりしませんか?さらに薬には使用期限がありますから廃棄しなければならないものもありますし、いわゆるデッドストックも生じてしまいます。近藤先生のお父様が開業医をされていた時代は薬価差益は多いと50%近くあったと先輩医師に聞いたことがあります。

しかし、現在の少なくとも開業医は薬を使えば使うほど利益が得られることはあり得ません。キッパリ!

外科系は手術をしたがるって?そんなことありません

もちろん手術をして完治が目指せるなら、間違いなく手術を行います。しかし、どんながんでも手術が最も優れた治療法と考える外科系医師はまず今はいません。私が日常一番遭遇するのは前立腺がんですが、放射線治療と外科的な治療の結果に特別な差は認めませんので、患者さんの生活背景等を考慮して治療を選択するのが一般的です

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上記は公益財団法人がん研究会の公表しているデータです。

前立腺がんの場合
手術の良い所⋯二週間くらいの入院でOK
放射線の良い所⋯通院で治療OK  でも約一か月半は毎日のように通院が必要
小線源治療⋯短期入院でOK でも治療できる施設が限られている
このような選択肢があり、逆に患者さんに適した治療を提案するのに苦労するくらいです。

さらに監視療法という治療も積極的に行われています。前立腺がんの場合、がんが発見されたからと言って必ず手術や薬物による治療をするわけではありません。定期的に通院をしていただいて全身状態をチェックさせていただき、がんが進行していないかを確認する治療方法も積極的に現在では採用されています。

私は決して近藤先生の著作にケチをつけるつもりはありません。正しい情報を伝えることが必要だと思い今回批判的な視野から述べさせていただきました。非常に良いと思う情報もありますので、次回お伝えします。

ベストセラー「医者に殺されない47の心得」の重箱の隅をつついたら⋯出てきました変なデータ

ベストセラー「医者に殺されない47の心得」の重箱の隅をつついたら⋯出てきました変なデータ

医療の進歩で、私たちは長生きできるようになりました。その結果、ガンで死ぬ、ことが必然的に増えたわけです。ガンは治療すべきではない・放置すべきという近藤理論は信奉者が多く、治療に携わる医療関係者を困らせています。近藤誠医師のベストセラーに対して、いち医師としておかしな記述を指摘させていただきます。

数字で考えるとわかりやすい、近藤誠氏の「がんもどき本」は間違いだらけ❗追記あり

数字で考えるとわかりやすい、近藤誠氏の「がんもどき本」は間違いだらけ❗追記あり

ガンは放置で有名な近藤誠医師。信奉者が多く本屋には近藤先生の著書がずらっと並んでいます。ですが、その著書に示されているデータにおかしな点が多く、同業の医師から批判されているのも事実。近藤本のおかしな点についてやさしく解説しますね。

2014年10月3日 「金スマ」に出演した近藤誠氏をあたかも反骨精神に富んだヒーローの様な扱いに対して、実際に現時点でがんと闘っている方がご覧になったらどのように感じるでしょうか?治療している医師が近藤氏の批判を受けるのは言論の自由・学問に自由の精神としては許せます。でも、実際に治療を行なってがんと闘っている方が近藤氏の極論・勘違い理論に影響されたら、どなたがその責任を負うのでしょうか?マスメディアの無責任さとそれを利用して、異次元の論理を振りかざす近藤氏に強い憤りを感じたので追記しました。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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