「飲んではいけない薬」はウソだらけ⁉医師でも医療ジャーナリストでもトンデモさんが多発❗

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オッサン向けの週刊誌はいつのまにやら、健康関連記事が満載になっています。特に週刊現代は以前もご紹介したように「盛り過ぎ」「言葉の一部だけ抜粋」が目立ちます・・現役医師に聞いた「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」ってウソだよね、冗談だよね⁉でも触れましたが・・

突拍子も無い主張はとかく目立ちますので、雑誌の販売数増を狙うならトンデモさんのニセ医学が有力な武器となるんですね。今回は昨日の週刊ポストのトンデモ記事に続き、オッサン御用達の週刊現代(2016年6月11日号)の「ダマされるな!医者に出されても飲み続けてはいけない薬」に登場する医療ビジランスセンターの医師浜六郎氏がどれだけトンデモ系の間違いを述べているかを検討します

◯◯が危ない、××するな、△△に騙されるな、はトンデモ系の香ばしい臭いがプンプン

この浜六郎氏は「下げたら、あかん!コレステロールと血圧 」(日本評論社発行)というニセ医学のオンパレード本を上梓しているので、以前からかなーり気になる存在でした。

ウィキでは関連項目として「近藤誠」「内海聡」というそうそうたるトンデモニセ医学方面の重鎮が記載されていますので「類は友を呼ぶ」ということわざの重みを噛みしめてしまいました(笑)。

アボルブは悪性度の高い前立腺がんを誘発する???

運の悪いことに浜六郎さんは私の専門分野である泌尿器科関連の薬について、へんてこなニセ医学情報を伝えています。

前立腺肥大症治療薬である「アボルブ」は服用すると悪性度の高い前立腺がんを誘発すると前述の週刊現代で述べています。どこにそれを示した医学論文が存在するんでしょうか?確かにアボルブは前立腺がんの腫瘍マーカーであるPSA の値を下げるので、前立腺がんの発見を遅らせる可能性は常識です。

アボルブを使用する場合は事前にPSAを測定して、前立腺がんのリスクを検討して処方します。また、アボルブはPSAの値を半分に減少させることも周知の事実ですから、万が一治療中に前立腺がんが発症したとしてもPSAを定期的に検査していれば全く心配のないものです。

今ではアボルブ自体に前立腺がんを抑制する効果があるのでは?との論文も出だしています・・「Effect of Dutasteride on the Risk of Prostate Cancer」(N Engl J Med 2010; 362:1192-1202)。

Effect_of_Dutasteride_on_the_Risk_of_Prostate_Cancer_—_NEJM

N Engl J Med 2010; 362:1192-1202

アボルブと同じ成分の男性脱毛治療薬「ザガーロ」が本年6月18日に販売開始されるのに合わせて「アボルブやザガーロは悪性のがんを誘発する」なんていい加減な話を撒き散らすのは「機を見るに敏」な浜六郎氏の傾向をおおいに表していますね。

コレステロール治療薬を貶した浜六郎さんの理論的裏付けは疑問だらけです

1999年に「買ってはいけない」とそれこそセンセーショナルなタイトルの本が週刊金曜日編集部によって出版されて、世間を賑わせました。その影響を受けるかのように、医療機関で使用されている処方薬を「飲んではいけない」的にとりあげたのが浜六郎氏です。

医療不信という追い風にのって、機を見るに敏な行動はそれなりにデタラメであっても世の中に広がってしまいました。代表的著作でコレステロールを下げてはいけないと主張されていますが、2010年9月に日本脂質栄養学会が「長寿のためのコレステロールガイドライン」を発表して「コレステロールは高めが長生き」とメディア等に報道されたために、浜六郎氏は脚光を浴びだしたように思えます。

この「コレステロールが高いほうが長生きできる」との結果は明らかに疫学データの解析間違いであることが医学的には常識となっています。

「コレステロール値が低い → がんになる」ではなく、「がんになる → 栄養が足りなくてコレステロール値が低い」と考えるべきなのです。もちろんコレステロール値を改善する薬にも副作用はあります。だからこそ処方薬なので、どんな薬もリスクとベネフィットを考えながら処方する、あるいは服用することは正しいことです。

スタチン系の薬でコレステロールを下げることが有用であることを示した論文は腐るほど出ています。

例えばこれ、「Long-Term Safety and Efficacy of Lowering Low-Density Lipoprotein Cholesterol With Statin Therapy」(Circulation. 2016;133:1049-1050,)。スタチンを服用していると心血管系の疾患の発症を抑え、長期にわたる死亡率を改善することを明らかにしています。

浜さんなどの「危険、危険」「飲んではいけない、ダメ」「買うな❗」などの一派は特異な副作用の事例に極端なスポットを当てて、有効性全てを否定してしいます。

フッ素でダウン症の子供が生まれる??

医師でもあり、評論家でもあり、組織の長でもある浜六郎さんは「なんでも反対トンデモ系疑似科学一派」のなかでも異色です。厚生労働省が承認した薬の取り消し、という派手なアクションを行うのです。こりゃ、マスメディアが食いつきますよね。副作用をクローズアップして注目を集め、さらに承認取り消しを求めて根絶させようとするのですから。

「Biglobe何でも相談室」にこんな相談がありました。

飲んではいけない薬(浜六郎著)の本を母が読み糖尿病患者の父にもう薬は飲ませないといっています。母から突然電話があり「子供にフッ素塗ったりしてない?」といきなり言われました。私の子供二人(5歳、3歳)には歯磨きの際にフッ素ジェルを塗っています。すると、将来副作用でダウン症の子が出来やすいと言い出しました。よくよく聞いてみると、浜六郎という人の本に書いていたということでした。

http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa5963345.html

浜さん、こんな罪作りなことを書いた書籍を出しているんですね。障害児の問題を全て母親のせいにする手法、関連項目の某医師と全く同じ手法ですね。

フッ素については村上純一(医療ジャーナリスト)という方が、「フッ素入り歯磨き粉は危険!がんや骨肉腫、ダウン症の原因との指摘も」をあのニセ医学情報満載のビジネスジャーナルに投稿しています(http://biz-journal.jp/2015/06/post_10380.html)。

この話がトンデモないデマであることは「ニセ科学・トンデモ系ニセ医学を主張する人の特徴は統計と数字に弱い、ということです❗」をご参考ください。この方もひょっとして浜さんの影響を強く受けたのでしょう。

フッ素との関連が示唆されているものとしては、発育期の少年に見られる骨肉腫、若い母親からのダウン症児の出生といった危険性が指摘されています。

http://biz-journal.jp/2015/06/post_10380.html

オイ、オイ❗危険性が指摘されています、って誰が誰に指摘したんだよ❗

ニセ医学情報の多くは一般図書や読み物(内容はガセネタやうわさ話レベル)を孫引きしていてトンデモ化する場合が多いのです(例 UFOで有名になった矢追さんの著作に多し)。

浜さん信者さんの中には「高血圧は薬で下げるな!」に影響された信者さんのブログがありました。医療をビジネスにしている方ではないので詳細は避けますが「降圧剤で癌になるのはユダヤの戦略です」という意味が記されています。ニセ医学・擬似科学方面とユダヤやフリーメイソンの陰謀論はとても親和性が高いようですね。

追記 週刊現代さんにはまいります、こんなのも書きました❗

「ロキソニン」は飲み続けてはいけないの❓薬は作用があれば副作用があるのは当たり前❗

「ロキソニン」は飲み続けてはいけないの❓薬は作用があれば副作用があるのは当たり前❗

売れているものが必ずしも良いものとは限りません。人気のある音楽・映画が好みかどうかは別です。一方で売れているから良いものに思えてしまうこともあります。クスリの場合はどうでしょう?週刊現代に掲載された売り上げ上位でも飲まない方がいいクスリという記事について医師の視点で見解を述べさせていただきます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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