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年末年始に多い、「風邪薬を飲んだら、おしっこが出なくなっちゃった」の原因と対策。

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年末になると患者さん、特に前立腺肥大症で治療中の患者さんに必ずお伝えする注意事項があります。

「市販の風邪薬を飲むとおしっこが出なくなるから注意してね。」

前立腺肥大症を治療中の方が、なぜ風邪薬に気をつけなければならないか、泌尿器科医が解説します。

市販の風邪薬を飲むとおしっこが出なくなる

前立腺肥大症を治療中の方は風邪薬にご注意ください。医師が処方する風邪薬(治すのではなく、本当は風邪の症状を抑える薬)であろうと薬剤師さんの指導のもとで購入する風邪薬であろうと、家に備え付けの風邪薬であろうと、おしっこが出なくなってしまう「尿閉」と呼ばれる状態に陥ってしまう可能性があります。

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当院一般診療ページ尿閉

例えばベンザブロックの説明書はこのようになっています。

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「してはいけないこと」、これはいわゆる禁忌事項であって、絶対やらないでね、との意味。

次に「相談すること」として

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医師や薬剤師や登録販売者に相談してね、ひょっとすると問題があるかもしれないから、との意味だと思われます。でも第二類医薬品って、薬を購入する際も服薬指導は義務付けられてはいなかったような気がするなあ。

その次に

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副作用の可能性があるから、医療関係者に相談して❗と注意勧告しているわけです。医療機関が休みだからOTC買ってんだけど、とのご意見は別問題としますね笑。

この注意勧告を間違って解釈してしまう人がいるんだよなあ⋯。

風邪薬と前立腺肥大症の薬を一緒に飲むと副作用が出る、と誤解している人が多いです

ここから本題に入ります。

市販の風邪薬の副作用の注意のところで「排尿困難」と書かれています。前立腺肥大症の主訴のほとんどは排尿困難です。

自分は排尿困難でその治療薬として前立腺肥大症の薬を医師から処方されている⋯

風邪用に買った市販薬の注意書きに副作用として排尿困難と書いてあるぞ→これは薬の飲み合わせによって引き起こされる症状かも→今は風邪だから前立腺肥大の薬は飲まないで風邪薬を優先しよう→おしっこが出なくなりました❗

ってことになって、年末年始に休日診療所や救急病院を受診してしまう患者さんが多くなってしまうのです。

高齢になればなるほど、多くの薬を服用しています。処方する側も飲む側もできれば服薬数は減らしたいと考えて当然です。

今は前立腺肥大症の症状は軽くなっているけど、悩ましいのは風邪の症状。だから前立腺の薬はやめておいて、風邪薬を飲もう→おしっこが出なくなりました、となってしまう方も多いです。

前立腺肥大症の方は市販の風邪薬を飲むときは注意してください⋯これも誤解を招く

「風邪薬 飲み合わせ」等のキーワードで検索すると様々な情報が結果として現れます。多くの場合、風邪薬に含まれる成分と医師から処方された薬の成分との組み合わせで、副作用が出現したり、効果が増強されることを知ることができます。

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http://www.jsmi.jp/book/nomiawase.html

日頃から大量の薬を処方されている患者さん心理としては、一種類でも減らしたいとの思いがあるために、ご自分で服用しなければいけない薬の優先順位を付けてしまう人を時々見かけます。

今、そこにある危機的状況は風邪、じゃあ、前立腺肥大症の症状は今のところ落ち着いているから、今回は飛ばして風邪薬を優先しようと自己判断する方が出てきても当然かもしれません。

ちなみに当院で本年のお正月明けに「尿閉」として来院された患者さんんは5名です。全員が元々の当院の患者さんではなく、尿閉の原因として考えられたのが市販の風邪薬でした。

なぜ風邪薬でおしっこが出なくなるか?。原因はこの成分です

必要以上に市販の風邪薬を恐れる必要はありませんので、そのあたりはご注意ください。風邪薬、特に総合感冒薬と呼ばれる薬は様々な症状に対応できるように、多くの成分が含まれています(本来は必要無いと思われる成分も含まれている可能性もあります)。

鼻水を抑える成分である抗ヒスタミン薬や抗コリン作動薬(泌尿器科では過活動膀胱という頻尿の治療に使われる)の作用として、尿閉を起こしてしまいます。

咳止め薬の主成分のうちエフェドリンは気管支を広げることによって、風邪の一症状であるゼイゼイ感を軽快させますが、交感神経系に影響を与えて尿の出を悪くするために尿閉の原因になってしまいます。

風邪症状に対して副作用が無さそうと考えて漢方薬をチョイスする方も多いでしょうが、これも注意が必要です。例えば「葛根湯」には麻黄という成分が含まれています。この麻黄はエフェドリンに類似しているために、尿閉のリスクがあります。

対策として当院の場合、年末年始以外でも前立腺肥大症で治療している方にはこの様な注意をしています

年末年始は普段の生活パターンと違って、お酒も大量に飲む機会も多いでしょうし、普段より運動量も減るでしょうし、寒さも影響して前立腺肥大症で治療中の患者さんにとっては、右肩上がりに症状が軽快することは少ない時期です。

さらに風邪のシーズンとも重なるのですが、生憎ほとんどの医療機関は休診ですよね。できれば風邪症状ごときで救急に対応している医療機関の手を煩わすことが無い様に救急安心センター事業の「#7119」にまず相談することを患者さんにはおすすめしています。

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https://www.fdma.go.jp/mission/enrichment/appropriate/appropriate007.html

日頃から前立腺肥大症で通院している患者さんには、風邪を引いたら即市販の風邪薬を飲むのは控えてね、もしも飲む場合は必ず前立腺肥大症の薬も飲んでね、と私は伝えています。

医療機関が休診の時に、どうしても市販の風邪薬を飲むときは、必ず前立腺肥大症の薬は飲んでくださいね。

そういえば女性に多い過活動膀胱の薬も市販の風邪薬を飲むときは注意が必要だ⋯別のブログを書こうっと。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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