ジャパンライフ問題、そもそも磁気治療器って効果あるの???

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日本人に愛されている磁気治療器、家庭で気軽に使用できるものが特に好まれています。悪質な商法の商材として使われることも多い磁気治療器に関する医学論文は存在します。

しかし、身体に対する良い効果を実証したと称するその論文の内容はかなり雑であり、その論文が元となって磁気治療器の効果が厚生労働省のお墨付きを頂いていることはかなり問題なのではないでしょうか?

ジャパンライフ問題で磁気治療器について考えてみた⋯効果はかなり疑問だよ

磁気治療器の「オーナー商法」が世間を騒がせているジャパンライフ。

桜を見る会への参加で問題になったジャパンライフ

https://www.yomiuri.co.jp/national/20191218-OYT1T50244/

商法や政治家や官僚の関与についてはジャーナリストの方々にお任せするとして

ジャパンライフの磁気治療器に効果があるはずないじゃん❗を強く医師としてお伝えしたいと思います。

磁気治療は全部が全部治療効果無し、ではないと思いますが少なくともジャパンライフが取り扱っていた磁気治療器と称するものは、科学的見地・医学的見地から、どう見ても身体になんらかの効果があるとは思えません。

ジャパンライフの商品・磁気治療器に効果があるのかどうか検証します

https://aucview.aucfan.com/yahoo/h198910359/

うわっ、お洒落ですねえ、ちょっとしたパーティーにもアクセントを添えることができますね(棒)。金属アレルギーとか、首が凝るとかの効果はあるかもしれないけどね(笑)。

そもそも磁気治療器ネックレスの効果・効能自体がこんな状況ではねえ⋯

薬機法では「家庭用永久磁石磁気治療器審査ガイドライン」が定めらており、家庭用永久磁石磁気治療器は使用目的又は効果として「装着部位のこり及び血行の改善。一般家庭で使用すること。」となっています。

家庭用永久磁石磁気治療器審査ガイドライン

独立行政法人医薬品医療機器総合機構 「家庭用永久磁石磁気治療器審査ガイドライン」

今回、ジャパンライフの事件の被害者の方々も「お役所が認めた磁気治療器だ❗」と判断して当然です(特許庁の長官が顧問だとなおさら)。磁気治療器の効果・効能を疑いもしなかったでしょうね(オーナー商法については素人なんで口を挟みません)。

ところがどっこい、

磁気治療器とか永久磁石を皮膚に貼り付けても、こりの改善も血行の改善などの効果はかなり怪しいぞと私は判断しています。

磁気治療器(ジャパンライフが取り扱っていたような物ね)が医療機器として認められた経緯に非常に問題があり、怪しいのです。

磁気治療器の効果を判定したのはたった1人の論文が根拠

医学に絶対はありませんし、どんな治療方法であろうと多くの医師によって「それって本当かよ?」と追試・検証が行われています。

この磁気ネックレスの医学的効果に関する論文はいすゞ病院の中川恭一氏によって書かれたものがほとんどです。

メディカルオンライン

まだまだ続くけどね(メディカルオンラインのサイトより)。いすゞ病院は車を作っているあのいすゞ自動車が運営する病院ですね。

こんな論文があります。

磁気欠乏 (不足) 症候群と磁気治療について

磁気と生体シンポジウム (2) : 126-140, 1980.「磁気欠乏 (不足) 症候群と磁気治療について」

この論文を660円 (税込) を払ってダウンロードして、全文を読ませていただいたのですが⋯どう見てもこれはトンデモ。

そもそも磁気治療器が薬機法以前の法律である薬事法で「管理医療機器」として認められたのが、1961年ですし、ちょうど国民皆保険の実現した混乱期でもありました。

なぜか磁気にこだわった中川恭一氏はその後もバンバン磁気についての論文を投稿しています⋯ガー、そもそも磁気欠乏症候群なんて病名あるんでしょうかねえ⋯。

私たちが日常の診療報酬を頂くためには病名を記載しなければなりません。そこで診療報酬情報サービスというサイトを利用させてもらって「磁気欠乏症候群」を調べてみると、以下ような結果になっていましたです

磁気欠乏症候群を調べてみた

当然の結果かも。

磁気治療器の効果はこのような仕組みになっているらしいけど⋯

永久磁石ではない方式で磁気を発生させる磁気治療器についての効果は認められているようですし、磁気を使った診断機器「MRI」は今回取り上げたジャパンライフの磁気治療器とは全くの別物とお考えくださいね。

こんな医学論文があります。「No effect of 85 mT permanent magnets on laser-Doppler measured blood flow response to inspiratory gasps.」(PMID:15832329)、これによれば85mT(ミリテスラ 磁力の強さを表しています)の永久磁石を皮膚に貼り付けても、血流に何も変化は無いし、皮膚の温度変化も無かった、との研究結果になっています。

家庭用の永久磁石を利用したと考えられる磁気治療器ごときが、プラセボ以上の効果を出すわけがありません。

そういえばかなり以前にこんなブログを書いたっけ。

コリに効くとされている磁気って本当に血行を良くするの?そのメカニズムについて考察

コリに効くとされている磁気って本当に血行を良くするの?そのメカニズムについて考察

磁石をつかった磁気による健康法、ピップエレキバンやマグネループ、スポーツ選手が首つけているグッズなどによって広く知られています。磁気が人体にどんな影響を及ぼすかはさておき、少なくとも血液は磁力に影響を受けないし、磁気健康治療器の効果もプラセボの域を超えないことが明らかです。磁気で血行が良くなることはありません。

どう考えても効果は期待できなそうだけどね。磁気治療器の再検証、マストなんじゃないかなあ。

例えばこんな感じで。

【武田薬品】「ダーゼン」の有効性検証を断念‐自主回収へ

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薬事日報(https://www.yakuji.co.jp/entry22060.htmlより)

磁気出まくりのMRI検査を無茶苦茶受けている私はどうなるんだよ!

私は20年以上前からひどい肩こり、首痛、頭痛に悩まされていました。標準医療から民間治療・代替療法まで様々な治療を試みましたが、一向に症状は軽快しません(つい先日、原因がわかってかなり調子良いです。この件は別途ブログにする予定です)。

首から肩にかけて今でで多分10回以上、めちゃくちゃ高い磁場を発生させるMRI検査を受けてきました。磁力によって、凝りや血行が改善するのであれば、家庭用ネックレス型のちゃっちい磁気治療器なんかより、遥かに効果があるはずです。

ちなみに「先生のお悩みは筋肉を鍛えれば改善しますよ」との言葉に励ませれて日夜筋トレを行っていたところ、こんな結果になりました。

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まいったよなあ⋯。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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