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「水を飲むと認知症が予防できる」とNHKと医学ジャーナリストは言っているけど⋯。

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自称医療ジャーナリストというとある個人を指すことが私達ではお約束になっています。一方、医療ジャーナリストではなく医学ジャーナリストと称する方々もいらっしゃいますが(違いはよくわかんない)認知症は水飲むことで予防できる、とさらりと言ってのけた医学ジャーナリストさんがいます。

この医学ジャーナリストさん、認知症予防には飲水発言をされる前にも内々で話題になった方でした。

水で認知症の予防ができるならもっと知られていいんじゃないの?

認知症を予防するには水を飲むことが事実だったら、世界中の医療関係者が飛びつくはずですし、厚生労働省等の公的機関が大々的にインフォメーションすると思います。そんな重大なことをさらっと言ってのけた方は医学ジャーナリストの植田美津恵さん。この件があまり話題になっていないと考えられる要因として医学ジャーナリストの植田美津恵さんの衝撃的発言がNHKBSプレミアム「偉人たちの健康診断」だったからかも。

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http://www.mitsue-ueda.com/

植田美津恵さんのオフィシャルサイトはこんな感じになっています。かなりいいキャラを醸し出していますね。

NHKさま、健康医療に関する番組は慎重にお願いいたします

私が植田美津恵さんの衝撃的な発言を目にして耳にしたのは、伊達政宗を取り上げたNHKBSプレミアム「偉人たちの健康診断」です。徳川家康より長生きしてやろうと決心した伊達政宗(これが歴史的な事実か等に関しては門外漢なので触れません)の健康法の中で、出羽国・陸奥国の水が非常に美味しく綺麗であるとの話はそれなりに納得。

でも、水を一気に飲まないでちょこちょこ飲みしたことが元気で長生きの秘訣の一つである、と話が出た時「水を飲むことは認知症の予防になります」あるいは「水を飲むことは認知症予防になることが研究でわかっています」的な内容のことを医学ジャーナリストである植田美津恵さんはさらっと仰りました。

最近凝っているサントリー黒烏龍茶(血中中性脂肪を抑えるトクホの効果を期待したわけじゃない)を思いっきり膝に載せていたiPadに吹きかけてしまいました。「パパ、何やってんのよ」と家人に言われて水を飲むことが認知症の予防になるなんて話あるわけないじゃんと私は返しました。これから夏場に向けて脱水や熱中症予防に水をちょこちょこ補給することは大切なことですが⋯

世界的に大問題となっている認知症が水を飲むだけで予防できる⁉との話があれば、勉強不足・情報不足な私であったとしても、聞いたことあるレベルで既知のはずです。認知症予防には飲水、そんな簡単かつ重要な医学知識が無いと明日からの診療に支障が出てはいけないと考え、医学論文検索サイトを駆使して探しに探したのですが⋯そんな論文見つかりません。

そこで「偉人たちの健康診断」のご意見・お問い合わせからNHKにメールでお尋ねしました。

確かに血管性の認知症は水不足が原因の脳梗塞でなる可能性や脱水による認知障害のリスクはあります。現在問題となっている認知症はアルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症であり認知症の大半を占めます。

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認知症ねっとより(https://info.ninchisho.net/mci/k10)。比率はデータにより若干の違いがあります。しかし、一般的に認知症といったらアルツハイマー型を頭に浮かべませんか?

これが認知症予防には飲水のエビデンスです→それ認知症のことは書かれていません❗

私はクレーマーだと思われてもいけませんし、私は医療に携わるものとして新たな医学知識を得たいだけであったので「偉人たちの健康診断の独眼竜政宗で水を飲むことは認知症予防になるとのお話があったと思います。それってどのような研究だったのですか?」的な教えを賜る感じの問い合わせをしました。すると数分でNHKから返信がありました。おお、さすが天下のNHK、受信料をちゃんと払っているお客様の扱いは丁寧だなあ、とニコニコしながらメールを開封すると適度に水を飲むことは、『2013 Edmonds,Crombie and Gardnar』の実験などから、記憶力や集中力の改善に効果があると言われていますとの親切な内容が記されていました。医学関係者じゃないと、この親切なメールから医学論文を見つけることはかなり難易度が高いものだと思われます。

少ない情報から私が見つけた2013年に Edmonds,Crombie and Gardnarらによって行われた水に関する研究はこれです。「Water consumption, not expectancies about water consumption, affects cognitive performance in adults」(Appetite. 2013 Jan;60 (1) :148-153.)。彼らによって他にもいくつか水を飲むこと関連の医学論文を見つけることができました。

もともとこの研究者たちは水の補給が子供や大人の認知能力にプラスになることを証明するために研究を行なっています。

論文中では水を飲むことが認知症の予防になる、とは書かれていません。

もちろん私が見落としている可能性もありますので、その時はこっそり恥をかかないで済む方法でご教示くださいませ。この論文を掲載した「Appetite」という医学専門誌を私は見かけたことがありませんが、インパクトファクターは2.5程度ですからそれなりに信頼度はあるものと判断します。

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この論文は認知機能に対する水の影響を調べたものであり、認知症と水の関係なんか書かれていません❗

NHKの親切なお問い合わせ係の方には迅速な対応を感謝してはおります。でも、教えていただいた研究者たちの他の論文も水がどのように認知機能に影響があるかを研究したものばかりです(私の検索能力に問題あった場合は謝罪いたします)。

植田美津恵さん、そしてNHKさん、認知症は水で予防できるのでしょうか??

少なくとも教えていただいた研究者たちの論文でそのようなことが書かれているものは無いようですし、NHKの係の方の返信でも「適度に水を飲むことは記憶力や集中力の改善に効果があると言われています」ですから、認知機能と認知症をごっちゃにしている可能性が予想され、予防と改善もごっちゃにしているっぽいです。

医学ジャーナリストの植田美津恵さんが話題になったワケはこれ

ひょっとするとトンデモさんの可能性のある医学ジャーナリスト植田美津恵さんが私を取り巻くオッサンたちの間で話題になったのはこの記事です。

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週刊女性PRIME「玄米×野菜、わかめ×ねぎ、ほうれん草×ベーコンはNG 食べ合わせの意外なリスクとは」

しっかりとしたエビデンスによる健康的な食事に関して書かれた津川友介先生の著作「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」が話題になっています。この本は発売日に電子書籍でサクッと購入しましたし、Amazonで予約注文していて届いた本は当院の待合室においてあります。今まで不健康な生活を送っていたと自省した私は津川先生のおっしゃる白米より玄米が健康的を実施していますし(時々白飯食べちゃっていますけど)、大嫌いだった野菜も頑張って積極的に食べています。

それなのに医学ジャーナリストである、植田美津恵さんはこのサイトで「玄米×野菜はNG」との内容に関してコメントしています。

この「食べ合わせ」に関する記事の問題点は正しいことと裏付けがないことが一緒に記載されていて、読者を混乱させてしまうからです。中にはかなりトンデモ的な発言もあり、この記事をネタとしてブログが書けると考えEvernoteに保存していました。

そんなトンデモの疑いがある植田美津恵さんが予想もしなかった私の愛する「偉人たちの健康診断」に登場して、トンデモ発言をされたので驚いたしだいです。

植田美津恵さんですが、頭の片隅にぼんやりと以前聞いたことがあるような⋯そこで認知機能を高めるために (これはエビデンスとなりうる医学論文あり)水を飲んで書棚を捜索したら出てきました、この本❗

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ありゃありゃ「忍者ダイエット」、どう見てもトンデモ本でした(笑)。ご自分のオフィシャルサイトに「『変な本大全』の『ダイエット本』で1位を獲得いたしました」って記載しているし⋯元祖トンデモ愛好家の「と学会」で今はなき日本トンデモ本大賞を贈るべきかもです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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