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院長ブログ

抗生物質と抗菌剤はちょっと違う?でも、抱える問題は同じ。

医師用語の「抗菌剤」と患者さんが言う「抗生物質」は同じもの?違うもの?

日常の診察で医師は「抗菌剤」と言い、患者さんは「抗生物質」と言うことが多いと思います。

抗菌剤も抗生物質もばい菌をやっつける殺菌作用を期待して処方され、服用するものですから効果としては同じはず。


塗り薬のゲンタシンっていまでも効果あるのかなあ?念の為的な使い方されていることが多いと思っているのは私だけ?

しかし、医師が「抗菌剤」と呼び、患者さんは「抗生物質」と呼ぶものは厳密には少々違いがあるのです。

抗菌剤と抗生物質の違いと両者が抱える大問題について少々述べさせていただきます。

抗菌剤と抗生物質の違いはこれです

私は感染症のスペシャリストではありません。泌尿器科を中心とした一般診療もカバーする開業医ですが、泌尿器科を受診する患者さんの30パーセント近くは感染症が原因となっています。

「この抗菌剤を一日2回飲んでくださいね」的にばい菌をやっつける薬を処方するときに自然の流れとしてお伝えしています。一方の患者さんは「この抗生物質を他のクリニックで処方されたんだけど、効果無いんだよなあ」などとおなじばい菌をやっつける薬のことを表現します。

抗菌剤と抗生物質、たんに呼び方の違いじゃん、と思っている人が医療関係者でも少なくないと思うのですが、実は抗菌剤と抗生物質はちょっと違うものなんです。

抗生物質と言われて頭に浮かぶのは「ペニシリン」ではないでしょうか?ペニシリンは1900年代初頭にフレミングという研究者がカビの中からたまたま発見したと言われている、人類初のばい菌をやっつける薬です。

ペニシリンはカビという自然界にもともと存在している物質の中から発見されたもので、「抗生物質」と呼ばれました。

一方の抗菌剤はさまざまな物質を組み合わせる、合成させることによって作られたばい菌をやっつける薬なので、自然界から生み出されたものじゃないよ、との意味合いで「抗菌剤」と医療関係者は呼ぶようになりました。

生まれ成り立ちに違いがあっても抗菌剤も抗生物質も働きとしては「細菌を殺す」です。となると、殺菌剤とか殺菌物質とかの名称でも良さそうですが、患者さんはもちろんのこと医師でも殺菌剤とは呼ばないのはなんでだろう・・・。

抗生物質(抗菌剤)は細菌には効果があっても、ウイルスには効果無いよ

抗生物質(抗菌剤)は細菌を殺す作用があっても、ウイルスに効果がないことは当然ですが、なぜかほとんどの原因がウイルスである風邪に対して抗生物質(抗菌剤)が処方されています。


朝日新聞(https://www.asahi.com/articles/ASMDM6HKLMDMULBJ00S.html)より

やはり一般の方が使う傾向のある「抗生物質」をばい菌をやっつける薬としてメディアは使用していますね。

海外では風邪に抗生物質(抗菌剤)が処方されることなどありえない、とお怒りの医師や患者さんのご意見を多く目にしますので、ウイルスには抗生物質(抗菌剤)は効果がないことが少しづつ知られるようになりました。

でも、やたらと抗生物質を処方するのは日本の医師のレベルが低くて、日本の患者さんが常識知らずだからなんでしょうか?

こんな調査結果があります。


「Special Eurobarometer 478」Antimicrobial Resistance, September 2018

抗菌薬・抗生物質はウイルスをやっつけますか?との質問に対する日本とEUの一般の方の回答です。日本の正解率が低いことは間違いなけど、EUの人だってけっこう間違ってんじゃん。

個人的な経験として、私は米国で風邪を引いた時にタミフルと抗菌剤を同時に処方されたことがあります。

抗菌剤でも抗生物質でも乱用傾向があることが大問題

抗生物質がウイルスに効果がないことを多くの人が知っても、医師側が抗生物質をやたらめったらに処方する傾向が絶対ないとは言い切れません。

当院の場合も。「近くのクリニックで抗生物質を処方されたんですけど、ぜんぜん効果無いです」とやってくる膀胱炎の患者さんが少なくありません。

私達のような泌尿器科のプロは膀胱炎のような軽度の感染症であっても、抗菌剤を処方する前にかならず「薬剤感受性試験」をします。

薬剤感受性試験は原因となっている細菌がどの抗生物質が有効であるのかを調べる検査であり、受診前に抗生物質を服用してると検査結果が得られない点にご注意ください。


大腸菌(E・Coli)が3+、かなりの抗菌剤に抵抗を示す「R」と書かれています。泌尿器の感染症で多用されるニューキノロン系の薬剤は感受性+、効果があることがこの薬剤感受性試験でわかります。

もちろん薬剤感受性試験と同時に細菌培養検査も行って、感染症の原因となっている細菌を同定します。残念ながら培養検査も薬剤感受性試験もその場では判定できませんが、処方した薬が確実に有効である、あるいは無効であった場合は次はどのような抗生物質を処方すれば良いかがわかりますので、経験則だけに頼った抗生物質の処方を防ぐことができます。

感受性を調べないで実際は細菌をやっつけていなく、おとなしくさせているだけの抗生物質を服用していると、薬剤耐性菌という難儀な敵を生み出すことになってしまうのです。

いたちごっこの抗生物質と耐性菌

ある抗生物質が、ある細菌に対して非常に有効だったとします。その抗生物質を連用したり、不要に長期間服用すると次のような問題が発生してきます。

耐性を獲得しようとする細菌は、自分が持っている本来の能力を一部変化させることにエネルギーを費やすため、細々と生きていることが多いのです。

しかし、漫然と抗生物質の投与をしていると

抗菌薬投与により大多数の細菌がやられてしまうと、抗菌薬に対する耐性を得ていた少数派の細菌は、のびのびとどんどん増えることができるようになります。


http://amr.ncgm.go.jp/general/1-2-1.htmlより

細菌の中には抗生物質に抵抗しようと意識してか、しないでか、は不明ですが、遺伝子を変えて抗生物質の攻撃を受けても生き延びるものが出現してくるのです。これが耐性菌の誕生です。

いままで特効薬として使用されていた抗生物質が耐性菌を生み出すことになってしまうのです。その耐性菌に効果がある抗生物質が開発されたとしても、その新薬が適正に使用されないと再び耐性菌を生み出してしまいます。

つまり、耐性菌と抗生物質はいたちごっこ状態に。

いかにいたちごっこ状態を避けるか、どのようにすれば耐性菌の出現を無くす、あるいは出現を遅らすことができるのか?


京都私立病院協会「抗菌薬適正使用マニュアル」(https://www.khosp.or.jp/files/pdf/document/koukinyaku-manual.pdf)より

効果的な抗生物質をできるだけ短い期間処方するのが耐性菌を生み出さない方法の一つでもあります。そのためには

「幅広い菌に効く抗菌薬」を「不十分な量や期間」服用すること

を避けることが重要です。

医師も患者さんも抗生物質(抗菌剤)の処方と服用は意識して行く必要があります。

感染症を専門としている医師のご意見は私達町医者とはちょっと違うかもしれませんが、大きな流れとして大間違いは述べていないと思います。もし、ご意見がありましたらこっそりご教示下さいませ。