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院長ブログ

ユリナール「夜間頻尿にしっかり効きます」は大袈裟なんじゃないの〜。

泌尿器関係の紛らわしい薬「ユリナール」ネーミングは絶妙だけど、その効果は?

「内科でもらったユリナール 、効果いまいちなんですけど」と語る患者さんを泌尿器科医なら診察したことあるはず(ここは決めつけます)。初めて泌尿器科を受診した患者さんが「薬局で買ったハルナールを飲んでいたけど、夜におしっこに起きちゃうんですよ」と言われたことも泌尿器科医ならあるはず(これも決めつけます)。さらに「テレビの広告でやってたユリーフ飲んだんだけどダメなんで」とおっしゃる患者さんも少なくとも私は経験しています。

ユリナールは泌尿器科系の症状に効果あるとされている市販薬であり、ハルナールとユリーフは医師によって処方される薬です。

こんな紛らわしい名前をつけた会社はどこだ!!(怒)と調べてみたら、やっぱりネーミングセンス抜群の小林製薬さんでした(わざとらしいかな)。

処方薬のハルナールの「ハル」は尿を意味するドイツ語「Harn」をカタカナ読みしたもの。市販薬のユリナールと処方薬のユリーフの「ユリ」は尿を意味する英語「Urine」をカタカナ読みしたユリンが由来だと考えられます。

尿に関連する「ユリ」と既存の処方薬「ハルナール」と「ユリーフ」を足して2で割ったようなネーミングの「ユリナール 」、さすが小林製薬さんのセンスがさえ渡っています。

今回は私たち泌尿器科医を混乱に陥れる(少なくとも私を)小林製薬さんの「ユリナール」の効果・効能とその宣伝の上手さをお伝えいたします。


http://danseinohainyo.jp/prostate/taningoto_005.htmlより

夜間頻尿などを主訴とする前立腺肥大症の患者さんは400万人以上いると推計されています。

ユリナールの主成分は清心蓮子飲(セイシンレンシイン)という漢方薬です

今までもネーミング上手の小林製薬さんの市販薬についてはいくつかブログを書いてきました。

例えば認知症かあたかも治ってしまうかのような宣伝文句のある「ワスノン」。

批判します!!小林製薬さま、「物忘れ改善薬 ワスノン」の作用機序をお教えください。

どう見ても膀胱炎の中で一番多い急性細菌性膀胱炎に効果があるかのような表現をしている「ボーコレン」。

小林製薬「ボーコレン」で膀胱炎は治るのか?細菌性の膀胱炎には効果が無いような気がするけど・・・。

前記2つとも主成分は従来から存在している漢方薬でした。今回取り上げた「ユリナール」もなんのことはない、「清心蓮子飲(セイシンレンシイン)」という中国4000年の歴史を誇る漢方薬なんです(清心蓮子飲が4000年前からあったかは不明)。

漢方薬大手「ツムラ」の医療用清心蓮子飲エキス顆粒の効果・効能として「残尿感、頻尿、排尿痛」が記載されています。

この清心蓮子飲(セイシンレンシイン)を適切に処方するためには厳しい条件があって、その条件を満たしてから初めて「残尿感、頻尿、排尿痛」という症状が伴った人に効果があるのです。その厳しい条件とは「全身倦怠感があり、口や舌が乾き、尿が出しぶるものの」です。

尿が出ししぶるもの、とは思ったように排尿できな状態のことだと思いますので、ユリナールを服用しても問題無し。

でもさぁ、全身が倦怠していないといけないし、口や舌が乾いていなといけないし、この条件に当てはまる患者さんってどれだけいるんでしょうか?

しかし、ユリナールの謳い文句はカジュアルです。


https://www.kobayashi.co.jp/brand/ynr/mechanism/index.htmlより

夜間頻尿にしっかり効きます!ですからね(苦笑)。

ユリナールの場合、ツムラの清心蓮子飲より使用条件が厳しいようで「体力中程度以下で、胃腸が弱く」もプラスされないと適正な効果は得られない様子です・・・この複雑かつ厳しい条件を満たして夜間頻尿を主訴とする患者さんって日本で何人いるんでしょうかねえ。

さらにこんな問診票的なものさえ、小林製薬さんは用意してくれています。


https://www.kobayashi.co.jp/brand/ynr/check/index.htmlより

これって国際前立腺症状スコア(International Prostate Symptom Score略してIPSS)とほとんど同じじゃん。

つまり、小林製薬の「ユリナール」は前立腺肥大症の薬として、患者さんが受け止めるのも当然だったのです。

効果効能を示すために盛りすぎのグラフを使用している「ユリナール」

薬の効果を示すために用いられる手法としてグラフで表すことが多いです。ユリナールの効果・効能の説明にこんなグラフが使用されています。

小林製薬「清心蓮子飲 研究結果」(https://www.kobayashi-kampo.jp/kampo14/research.html)より

このグラフ、グラフを見慣れた人だったら、一瞬で怪しいと思うはず。縦軸がゼロから始まらない棒グラフは特に怪しいデータであり、誤解を与える統計グラフとして有名なものです。


Wikiから(寄付しているから多めに見てね)。

ユリナールの主成分である清心蓮子飲の「尿をためる機能を高める」のグラフはゼロからではなく、80から始まっていますよね。100だったものが、154になったので「尿を溜める機能が154%にUP」と書かれています。

この154%にアップとの表現もこれまた誤解を招きます。

「あなたの給与を来月から154%アップするね」と言われたら、月給10万円の人だったら154%プラスされた25万4000円になる、と思っちゃうじゃん。

100%のものが154%になった、100のものが154になったら普通54%アップって言うんじゃないかなあ。確かに154%とUPの間に「に」とは書かれているけど、誤解を招く表現だと思います。

別の見方をするとこのユリナールの主成分である清心蓮子飲は前立腺肥大症にとってはマイナスの働きをする可能性さえあります。

一定以上の尿を無理してため込むと、膀胱の収縮がうまくいかないで排尿することができない尿閉という厄介なトラブルを引き起こしてしまいます。必要以上に「尿をためる機能を高める」をアップしちゃうのも考えものです。

ユリナール、この説明では効果・効能が逆になっちゃうのでは?

小林製薬「清心蓮子飲 研究結果」の次のグラフがこれまたヘンテコ。

膀胱の収縮を抑えちゃったら、オシッコが出なくなっちゃうじゃん!!これは排尿困難と呼ぶ状態の一つなんだけどなあ。そもれより、何がどうなって87%なのか、元々の数字がわからないし・・・。

ユリナールが自信を持って「夜間頻尿にしっかり効きます」と断言している夜間頻尿ってこのように複雑なメカニズムによって起きているんだよ。

メディカルトリビューン「加齢による夜間頻尿の発生メカニズム」(https://medical-tribune.co.jp/news/2019/0605520349/)の中の北上中央病院泌尿器科菅谷公男先生が作成した図を引用させていただきました(引用、問題がありましたらご指摘ください)。

尿をためる機能を高めたり、膀胱の収縮を抑えるくらいでは夜間頻尿が簡単に治るとは思えません。

研究結果を示しても、ユリナールの効果を証明したことにはならないような気が・・・

そもそも、ユリナールの主成分である清心蓮子飲の泌尿器関連症状に対する効果は「残尿感、頻尿、排尿痛」でしたよね。ところがいつの間にやらユリナールの効果は「頻尿、残尿感、排尿痛」に続いて「排尿困難、尿のにごり、こしけ(おりもの)」にまで守備範囲が広がっています。

清心蓮子飲に(以下長いです)無水ケイ酸,ケイ酸アルミニウム,カルメロースカルシウム(CMC-Ca),セルロース,クロスカルメロースナトリウム(クロスCMC-Na),ステアリン酸マグネシウム,プロピレングリコール,バニリン,エチルバニリン,香料がトッピングされているのが、ユリナールです(あーっ、長かった)」。

主成分である清心蓮子飲以外の成分が「排尿困難、尿のにごり、こしけ(おりもの)」に効果があるのか、さらに調査が必要なようです。

ちなみにユリナールに関する研究は前掲2つともラットに関するものであり、清心蓮子飲の副作用に関しては「本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である」とツムラの添付文書には書かれていました。

つまり、ユリナールってヒトに対する効果・効能の検証はもちろんのこと副作用の調査も行われていない様子なんです。

だからなんだね、厚生労働省は清心蓮子飲のためにわざわざ「安全に使うための 清心蓮子飲の確認票」なんてものを作成します。

厚生労働省 一般用漢方製剤の安全性確保に関する研究「清心蓮子飲」(http://www.nihs.go.jp/dpp/kampo-anzen/list_pdf/021_seishinrenshiin.pdf)より 

ユリナールは第二類医薬品です。薬局・ドラッグストアで購入する時は薬剤師さんに必ずご相談くださいね。

以下の点で誤解なきように。
私は何でもかんでも漢方薬の効果を否定する立ち位置ではありません。ただ、漢方薬の場合、効果は緩やかだけど副作用は無い、と思われている患者さんに注意喚起をしたいのです。

漢方薬の効果も実感しているし

漢方薬「大建中湯」を試してみたら・・・効果あるじゃん!!

市販薬の効果だってレポートしていますからね。

太田胃散「いい薬です」は本当か?市販薬に処方薬が惨敗の体験レポートです。

エビデンスが確立されている漢方薬もありますので、漢方薬を取り扱っている製薬会社の方に臨床試験等によってその効果・効能を再確認していただきたいと、お願いしているわけです。