たまねぎ氷の効能はダイエットや糖尿病に本当に役立つか?

カレーに欠かせない具材第1位といえばタマネギ。縁の下の力持ちにも脇役にも主役にもなるなるタマネギ、健康によいイメージが強く、血液をサラサラにするって多くの人が聞いたことがあることでしょう。タマネギが日本で栽培されるようになったのは明治時代のコレラ対策がきっかけといわれています。実際にはコレラに効くことはないのですが、タマネギの効能について、特にダイエットや糖尿病に効くのか?について考察します。

たまねぎが体にいいと言われるのはポリフェノールの効果です

「たまねぎって体にいいのよね〜」という主婦の会話、「体にいいから食べなさい!」と言われている子供、こんな風景に出くわしたことってありませんか?タマネギダイエット!タマネギで糖尿病が改善!タマネギで便秘が改善!なんて文字がこれでもかっ!とばかりに並んだ健康雑誌。

先日から民間療法に非常にというか異常に凝りだした私ですが、今回はこのタマネギは果たしてどのようなメカニズムで、そしてどのような裏付けで「体にいいのよね〜」と言えるのかを検証してみました。ズバリ、たまねぎの効果効能はポリフェノールを含むためだったんですね、知らなかった。

ポリフェノールの仲間のケルセチンに特化した記事まで登場

民間療法の凄いところはその追求力、探究心です。医師に批判をされないように、意外な方向から理論武装をしてくるのです。ポリフェノールが健康に良いというのは決まった事項として処理していきます(否定的な意見・論文もありますが)。 

ポリフェノールと言えば赤ワイン!

ポリフェノールと呼ばれるグループの中に、フラボノイド(これも健康系雑誌御用達)があり、さらにフラボノイドの一種類としてケルセチン、又はクェルセチンと呼ばれる物質があります。このquercetin(おっ、今度は英語かい)はタマネギ、リンゴ、お茶などに含まれています。最も重量当たりの含有量が多いのはケッパーです。

普通は医師でもこのケルセチンなんて名前を知らないのですが、当院で使用する抗菌剤で一番頻度が高いニューキノロン系の薬と相性が悪いことが知られています。臨床上において問題となるものではないのですが、凝り性の医師が多い当院では「ケルセチン」とニューキノロンの関係は常識となっていますが、「この薬を飲む時はタマネギは食べないでください」と注意を患者さんにしなければならないような問題ですので、皆さんは忘れてください。

刻むのが面倒な人向けに「たまねぎ氷」登場

たまねぎが体に良いとします。でも、毎日皮を剥き刻む作業が面倒な人向けに健康雑誌では「たまねぎ氷」の作り方が紹介されています。たまねぎを鍋で煮て、それをミキサーにかけて冷蔵庫で凍らせるという非常に簡単な方法です。この作り置きの「たまねぎ氷」を様々な料理に活用しましょう、という事らしいです。ここまで紹介するという健康雑誌は手取り足取り懇切丁寧な解説でファンに受けるはずです。

たまねぎの効果効能で血管を若返りが可能に!?

本題に戻ります。たまねぎに含まれるポリフェノールの仲間のフラボノイドのさらに仲間であるケルセチンが血管の若返りに効果を発揮しているとの論文が健康雑誌に記されていました。このように医学論文まで併記して健康を追求する編集者には素直に頭が下がる思いです(本心です)。

でも、せっかく論文中のグラフを引用しているんですから、論文の雑誌名とナンバーは正確に印刷しましょうね(執筆者か校正者が気づかなかったのが不思議ですけど)。

ここで引用されていた論文は「Chronic Intake of Onion Extract Containing Quercetinn Improved Postprandial Endothelial Dysfunction in Healthy Men」で「Journal of the American College of Nutrition」という聞き慣れない専門誌に掲載されていました。余計なお世話でしょうけど正確なナンバーは『J Am Coll Nutr 2013 32:3, 160-164,』ですよ、健●を出版している主●の友社さん。

Chronic Intake of Onion Extract Containing Quercetinn Improved Postprandial Endothelial Dysfunction in Healthy Men

 

Journal of the American College of Nutrition, Vol. 32, No. 3, 160–164 (2013) より

黒い棒グラフが空腹時の血管内皮機能を判断するFMD (Flow Mediated Dilationの頭文字を取ったもので、日本語だと血流依存性血管拡張反応)の値で、白い棒が食後のFMD。向かって左の二本より右の二本の方が棒グラフが高くなっています。これはケルセチンを摂取した後の方が血管の内皮を修復する力が強くなっていて、血管が若返った!!証拠になっています。

この実験は22人の健康な男性がケルセチン51ミリグラムを含む「たまねぎエキス」を30日間取り続けた後の結果です。たまねぎに換算すると100から200gくらいになりますけど、小さめのたまねぎ一個分くらいですね。血糖値を下げる効果については、文章が長くなりましたので次の機会にさせていただきます。

オッサンはたまねぎに健康を託してはいけないぞ!

たまねぎは健康にいいとしても、刻むとき涙がでるし、さらに臭いが⋯。近年加齢臭に次いで「ミドル脂臭」なんてものまで発見されています。唯でさえ「おやじ臭い」と陰で表でイジメられているオッサンがさらに「血管若返り、糖尿病改善」と称してタマネギ臭プンプンで登場したら何を言われるかと考えただけで怖くなります。リンゴとかラズベリーなんてオシャレっぽい食べ物にもこのケルセチンは含まれていますから、そっちから補った方が世の中の迷惑にならないと思います。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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