医療従事者が使用していると称する分子マスクがN95マスクより効果があるとは思えない。

私は昔々「花粉を水に変えるマスク」と称するヘンテコな商材関連で激しいバトルを繰り広げました。

昨年2020年後半から気になっていた微粒子を99%以上キャッチすると称する「分子マスク」なるものがあります。分子マスクとはどのようなものなんでしょうか?かなり効果を疑いつつ検証してみます。

微粒子を99%以上キャッチする分子マスク1万枚、総額5,000万円分を無料配布されても困っちゃう

2020年末ころに「分子マスク」という商品を知りました。その分子マスクがなんと2021年10月に東京都内の学校に1万枚総額5000万円分を無料配布したそうです。

「分子マスク」1万枚を都内の学校に無料配布

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000011.000082121.html

1万枚で5000万円ってことは1枚5000円!!精確には1枚あたり5,478円(税込)とN95マスクの10倍以上、通常のサージカルマスクの数十倍、一般向け不織布マスクの数百倍以上と非常に高額な分子マスクです。

基本中の基本としてマスクには感染から自分の身を守るための目的と、もしも自分が感染していた時に他の人達に感染させないための2つの目的があります。

果たして「分子マスク」なる絶妙なネーミングの1枚5000円のマスクの効果は大丈夫なんでしょうか?

分子マスクを医療従事者が使用?

https://twitter.com/yasushi_no_mori/status/1431581112694804486

分子マスクが、かなりヘンテコなものであることを再確認したのは、このツイートだったかも。

医療従事者の15-20%が使用しているとは思えないんだよねえ。たぶん分子マスクを使っている人のうち、15-20%の医療従事者ってことかもね。例えば従業員20人の医療機関に分子マスクを配って3人から4人が一回でも分子マスクを使った場合は15−20%って言えることは言えるしね。

N95マスクを分子マスクと比較してもそもそも目的が違います

分子マスクの公式サイトにはこんなことが書かれています。

呼吸が楽な分子マスク

https://shop.bunshi-lab.com/

「マスクの性能を語る上で欠かせない、呼吸のしやすさ」だそうですけど。

分子マスクの性能としてN95マスクと比べて息苦しさが無いことを強調しています。

私達医師が使用する医療用N95マスクはみなさんには大変申し訳無いのですが、第三者に感染させないことが目的ではなくN95を装着した私達の身を守ることが求められて設計されたマスクなのです。

呼吸がしやすいのがウリの分子マスク、ウイルスが行ったり来たりの可能性が考えられます。

N95を装着して行動すると確かに息苦しくなった気分になり、私は30分ほどでギブアップ気味になってしまったこともあります。そこで排気弁がついたこのような形状のN95があります。

3m排気弁付きN95マスク

息苦しさを解消したこんな感じのN95もあったけど、万が一N95を装着している医療関係者がウイルス感染していたら周囲の人々に感染させてしまう可能性があるためなのか、最近は見かけないね。

確かに息苦しさを解消してくれて、第三者にも感染させるリスクのないマスクが存在すればいいのですが、それに分子マスクは可能にしてくれたのでしょうか?

分子マスクの感染から身を守るための検証は見当たらない

分子マスクのサイトはさらにこのようなことを述べています。

医療用のN95マスクよりも目が細かく、しっかりと守ってくれるので、安心してお使いいただくことができます

https://shop.bunshi-lab.com/

と書かれています。医療用N95マスクと分子マスクの性能をどのように比較検証したのか、このサイトでは全く知ることができません。

医療用N95はそもそも網目が細かいから効果があるだけではなく、静電気の作用によってウイルスを捕まえる仕組みになっているんだけど分子マスクもそのような微粒子を99%以上キャッチしたとしても、ウイルスを防御する仕組みはどうなっているの???と多くの医療関係者は首をかしげたはずです。

分子マスクはなんども洗って使えそうですけど、N95は使い捨て、なぜなら洗っちゃうと静電気でウイルスを捉える効果が減少するからなんだよ。

国民生活センターによればN95マスクの規格はこのように定められています。

Ñ95マスクの定義と規格

http://www.vat.co.jp/images/influenza/mask01.pdf

2009年の新型インフルエンザ流行時にも怪しげなマスクが販売されいたのです。国民生活センターのPDFにあるように当時販売されていたマスクの多くが捕集効率に関して99%以上と表記してあっても試験方法や試験機関が明記されていませんでした。

微粒子をいくらキャッチしても鼻出しマスクじゃまったく意味ないでしょ(笑)

分子マスク関連記事でこんな画像がありました。そういえば、私がはじめて分子マスクなるものを知ったのはこの記事です。

鼻だし分子マスク

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000069042.html

左の男性が着用しているのが「オープンノーズ マスク」とのこと。この鼻だしマスク男性は自分を感染から守ることは当然できませんね。この記事が書かれたのは2020年11月26日ですから当然ワクチンもまだ日本では接種は開始になっていません。

くしゃみや咳をしたときは鼻水がでたりしますので、当たり前ですが第三者への感染拡大を防ぐ効果も期待できません。そこで

何も事情がない方が、安易な気持ちで「こっちでいいか」とオープンノーズを選ぶことを私たち分子マスク側は望んでおりません

とエクスキューズが入っていたとしても、大多数の支持を得ることは当時は厳しい状況であったことは多くの方の記憶に新しいのではないでしょうか?

お守りかよ、分子マスク(笑)

鼻出し姿の分子マスクを着用しても、感染することにも感染させることにもまったく効果が無いことは誰でもご理解いただけると思います。

詳細が不明な雑なウェブサイトなんだよね

分子マスクの公式サイトを覗いてみると、販売に特化されているようで分子マスクの効果に関しての一次ソースを得ることは長年ブログを書いているために、ある程度の調査能力のあるはずの私でさえたどり着くことができない状況です。

分子マスクは東京工業大学の谷岡名誉教授が発明した繊維であることがサイトの記述で知ることができます。

確かに東京工業大学の谷岡明彦名誉教授は高分子構造や繊維の研究をされていた方で、「エレクトロスプレーデポジション法によるナノファイバーの構造と物性」などの研究実績があります(東京工業大学STARサーチなどによる)。

東工大の谷岡名誉教授が発明した「分子マスク」

https://www.work-master.net/2020203833

谷岡名誉教授がなんらかの繊維を発明したことは東京工業大学のサイトでは不明、特殊な繊維を発明(?)したのなら他の医療機器とか衛生良品に使われていそうだけど、特許とかで複雑な事情があるのかな?

この説明文が気になります。

オープンノーズは長時間マスクを着けて働く接客業の人々の毎日を応援するため、呼吸の快適さを追求しつつ、蒸れによる肌荒れを防ぐ目的で生まれたマスクとなっており

https://www.work-master.net/2020203833

すっかすかのマスクで接客したら従業員もお客さんも仲良くクラスター発生!!

なんて事態が発生しないかとまともな神経の持ち主なら心配してしまいますぜ。

もう一つ素朴な疑問があります。ファンデルワールス力ってすべての分子間で働く力であることは高校で化学を選択した人は憶えていると思います。具体的にファンデルワールス力によってウイルスはくっつくかもしれないけど、それって理論上のことなんじゃないでしょうか?

※豆知識:ヤモリが家の壁にくっついているのはファンデルワールス力らしいですね。ヤモリはひとが嫌う虫を食べてくれるついでにウイルスも捕まえてくれればいいいのに。

さすがに飛沫対策として分子マスクがN95より優れていることを比較対象とするのは控えたのでしょうね。

ナノファイバーのマスクとほかの素材のマスクとの比較表

https://shop.bunshi-lab.com/

結論としてはウイルスの防御も拡散も防ぐことはできないのに、イメージ的に効果がありそうだと匂わせる分子マスクです。

本当にウイルスに対して効果があるのであればとっくに真っ当な本気で感染症と闘っている医療機関で採用されていますって。

花粉を水に変えるマスクの顛末

前掲ブログ記事で「花粉を水に変えるマスク」を批判したところ、このマスクビジネスに関わっていると称する某国立大学医学部教授にこんなことを言われました。

「桑満先生。未だに検討して頂いたはずのブログの方の修正を頂いておりませんが、すでにツイッターやネットニュースを通じて、多くの人に先生を震源とする風評が拡散されてしまいました。弁護士との協議の結果、DR.C医薬およびコラボ企業40社より、五本木クリニックに対する集団訴訟を行わせて頂く様に進行中です。よろしくお願い致します」

「花粉を水に変えるマスク」を批判したところ恫喝された。

WELQ、ヘルスケア大学などとバトルを経験していたとしても、当時このトンデモマスクとコラボしていた企業は大企業ばっかり。本当に集団訴訟なんてされたら、とんでもないレベルの弁護士費用が必要となってきます。

その後の顛末は

消費者庁、「花粉を水に変えるマスク」販売企業に課徴金857万円

との見出しが多数のメティアをにぎわせました。ジャンジャン!

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執筆した医師

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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