エステでHIFU・セルフでハイフ、どちらも効果が無いどころかトラブル多発は必至だよ。

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HIFU(ハイフ)というのは超音波による熱を利用して、ボディのたるみを・贅肉を引き締める治療方法にひとつです。

ハイフは医療機器ですから医療機関で受ける必要があります。ですが恐ろしいことにセルフハイフというセルフエステが一部で横行しています。医療機器を取り扱う資格なくても、機器を貸して自己責任で行ってもらうというとんでもない方法なのです。

ハイフが医療機器なのは「危険」を伴うということ。セルフでハイフは、火傷をはじめ、トラブルがあっても自己責任、その代わり安いですという普通では考えられないような無茶苦茶なビジネスなわけです。

こんなご時世ですからセルフエステに興味ある女性は多いはず。でもハイフはきちんとした医療機関で受けましょうねという注意喚起の意味を込めて記事にします。

セルフハイフでトラブルが続出?

2020年は初っ端から新型感染症騒ぎで当院としても対策に追われ、わたしの頭の中も90%以上が新型感染症関連でいっぱいいっぱいでした。

落ち着きを取り戻すことができるような余裕が出たら、某所より「ハイフのトラブルに関して、お話をうかがいたい」とメディアじゃないところから面会希望の電話を頂きました。

ここ数年、ハイフによる医療事故やトラブルは耳にしたことがなかった

ハイフはHigh Intensity Focused Ultrasoundの頭文字「HIFU」をカタカナ読みしたものです。美容医療では顔のたるみやお腹の贅肉対策として使われる医療機器で、当院にはウルトラフォーマーⅢ(ultraformer®Ⅲ)とライポソニックス(liposonix)の2機種があります。

ハイフのトラブルとして、かなり以前に神経損傷を起こしてしまった美容クリニックの話が業界内を駆け巡ったことが記憶にあるだけで、少なくともここ数年はハイフによる医療事故やトラブルは耳にしたことがありませんでした。

ハイフに何があったんだろう、と考えてPCをいじくり回していたら、気が付かないうちに世の中はトンデモないことになっていました。

  • 自分で自分の顔をハイフ治療するセルフハイフがブームになっていた。
  • ハイフによる健康被害事例が最近急増している。

新型コロナ感染症に目と頭を奪われている間に掟破り的なセルフハイフとハイフにまつわるトラブルが頻発していたのです。

国民生活センターの事例にもなっているハイフによる健康被害

医療機関における健康被害やトラブルは下手すりゃ新聞沙汰、新聞で取り上げなくても医師向け情報誌や医師間の噂話として知ることができます。

一般消費者がトラブルになった場合、駆け込む代表は国民生活センターです。早速、国民生活センターのウェブサイトを見てみると⋯出てきました、出てきました、ハイフによるトラブルと健康被害が。

ハイフ治療は医療行為ですから、エステやセルフで行うのは違法な上に危険です

独立行政法人国民生活センター「エステサロン等でのHIFU機器による施術でトラブル発生!」(http://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20170302_1.html)

エステサロンでのトラブルが頻発していたようです。まさかエステサロンでハイフを使用するなんて想像すらしていませんでした。

ハイフって別に美容のためだけの機器ではなく、私が専門とする泌尿器科領域では前立腺の手術に使用されることもあるんですよ。そんな手術に使用されるハイフをエステサロンで使用するなんて常識的には考えられない異常事態だとも言えます。

国民生活センターの事例としてかなり悲惨なものもあります。

【事例1】エステサロンで痩身の施術を受けて熱傷になり、治るまでに半年かかると診断された

たしかにハイフは超音波をレンズでつかってピンポイント的に照射する治療だから、火傷のリスクは無いとは言えません。ですが医療機関ではまずありえないトラブルといえます。ハイフを照射していて、患者さんが「熱い」「痛い」と言えば一旦ハイフ照射を中止しますから。

【事例2】美容クリニック併設のエステサロンの施術で頬の神経の一部を損傷した。リスク説明があれば契約しなかった

うわーっ、これは悲惨なトラブルと言うか健康被害というか、下手すりゃ傷害罪かも(そのあたりは法律の専門家にまかせますけど)。私が15年位前にハイフを当院でも導入しようかと検討したときに、下手すりゃ神経損傷する可能性あるじゃん、と判断して導入を見送ったことがあります。それから1年位経過して「ハイフで顔の神経を切ってしまったクリニックがあるらしい」との話が美容医療業界を駆け巡りました。

国民生活センターの表現は「損傷」となっていますが、ハイフのメカニズム上、神経が切れてしまうことも考えられます。特に注意を要する神経部位もあり、当院ではそこへのハイフ照射は禁忌としています。切れてしまった神経が自然につながることは無いし、損傷であっても神経の損傷は回復には年単位の時間が必要です。

あと数例、エステサロンにおけるハイフのトラブル例が国民生活センターのサイトには掲載されています。

ところで、やけどになるほどハイフを照射したり、神経が損傷するほどハイフを照射したのか謎でした。でもひょっとしたらセルフハイフが原因の可能性もあるのかと考えセルフハイフについて調べてみました。

セルフハイフはエステティックの業界団体は禁じ手としているようですが⋯

一般社団法人エステティック振興協議会やエステティック業協会では「ハイフ施術(含むセルフハイフ)」「セルフエステ」禁止の周知徹底を勧告する文書を会社・店舗に送っているようです。

ハイフ施術(含むセルフハイフ)」「セルフエステ」禁止の周知徹底を勧告する文書

ここに出ている院長のブログは当然私のブログではありません。だって、セルフハイフなるもの自体を知らなかったんだからね。

セルフハイフとはどのようなものか調べてみたら、こんなサイトにぶち当たりました。

わたしのハイフという悪質極まりないエステ

https://xn--68jp0cyhmeplpb.com/

モザイク掛けた部分がセルフ式のエステサロンの店名です。

治療料金で比較されたら、エステに医療機関は勝ち目は無いです。

安さを追求した結果、このエステサロンにたどりつく純朴な方々が多いのですね。このエステサロンがどのようなハイフの機器(当然医療機器では無いなず)を使用しているのか、スペック等をサイトから知ることは出来ませんでした。

動画を見る限りでは卓上式のハイフマシーンです。ちなみに当院にあるハイフは卓上式は絶対ムリなくらいデカイです。

五本木クリニックのハイフマシーン

であったり、

五本木クリニックのハイフ

こんなであったり。

ハイフはヘッドから照射されるのですが、制御をする本体はかなりデカくなってしまいます。ヘッドの価格はめちゃくちゃ高く、本体の価格もめちゃくちゃ高いです。さらにヘッドは有効回数がありますので、セルフハイフと治療費あるは施術費を比較されたら医療機関としてはたまったものではありません。

一回2,000円〜❗一回2,980円〜❗医療機関では絶対に無理な料金設定にセルフハイフを調べだして10回目くらい腰が抜けるほど驚きました。

世の中、不景気だしデフレの時代とはいえ、がんがん価格競争が激しくなっています。エルメスやシャネルのTシャツとしまむらのTシャツだと100倍程度の価格差があることは十分承知しています。

しかし、セルフ方式のハイフとは言え、この価格で全うなハイフの機器が購入できるとは思えません。本体価格だけで数千人にハイフを行わないと回収できないですし、消耗品であるヘッド(ハンドピースとも呼ぶ)の費用を回収するとしたら、数発くらいしか照射できない計算になり、当然効果は全く期待できません。

つまり、セルフ式ハイフで使用されている機器は、医療用のものとは違う、例えばエステ用に出力を弱めた廉価版ハイフ、効果は期待できないけど安価なもの(通販で大量に売られている家庭用の美顔器)、型落ちの古いタイプといったものなのではないかと思われます。

医療機関のハイフ治療なら1回で十分効果あり

国民生活センターの相談事例に

1回で効果が実感できるという広告をみてHIFU施術を受けたが、何も効果がなかった

というのがありました。

医療機関でしっかりハイフを行えばこんな感じで効果は1回で感じられます。

院長が実際にハイフ治療を受けてみた結果

右の写真、ガングロなのはハイフの副作用じゃないよ、たんに日焼けしただけ(笑)

なんでもかんでも安かろう悪かろう、とは言いません。でもご自分のからだのことですから、相談をするなら医療機関にするべきなんじゃないでしょうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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