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ニセ医学信仰?「冷えとり」方面の方へ、今年は猛暑で良かったですね❗温めれば万病が治るんですから。

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あるライターさんに「冷えとり」ってどう思いますか?と尋ねられた時「ああ、あの体を温めれば免疫がってヤツですよね」と答えてしまいました。

体温をあげると免疫力がつき、って感じの本を新聞の広告で見たことがある方も多いと思います。

密かに活動中の「冷えとり」という擬似医学

昔むかし、膀胱がんに対してハイパーサーミアという治療方法があり、私の大学病院勤務時代の恩師がそれで泌尿器学会における坂口賞をという非常に名誉のある賞を1982年にとりました(膀胱癌の温熱(Hyperthermia) 療法の研究(I~III))

しかし、それは局所的に電子レンジ方式に膀胱を温めて(温めてというより熱して)治療する方法だったのですが、今の若い医師に聞いても多分そんな治療法は知らないはずです。

ライターさんによる「冷えとり」はそんな複雑なものではなく、靴下の重ね履きで体のあらゆるところの不調が治っちゃう、というトンデモ系でした。

体を温めれば、特に女性の万病を治しちゃう「冷えとり」を信仰している方にとっては今年の猛暑はそれはそれは体調が整って良かったですね❗でもさあ、靴下を何重にも重ねて履いて、全身の体温が上がることによって万病が治る、ってどう考えてもありえないんじゃないの?

体を温めれば万病が治るのなら、熱帯地域に住んでいる人々はかなり健康レベルが高いことになる

冷えとりが本当に効果があるのなら、熱帯地方に住んでいれば健康であることになるはず。医療レベルやその他の因子の違いもあるでしょうけど、温帯以北の方が健康レベルが高いと一般的には考えられていることと矛盾します。

さあ、始めよう「冷えとり」生活、ほてりも冷えが原因なんだよ⁉

多分、こんなこと書くからやっと増えた女性ファンも激減するんだろうけど、この「冷えとり」ってやっぱりオカシイ(可笑しい?)です。寒いと血管が収縮して体温を一定レベルに保つ自然の働きが人間には備わっています。しかし、末梢の血管は細くなっているために血管内の血液の温度が下がって、瘀血という状態になりそれが万病の元、という理論が「冷えとり」の基本的な考え方です

さらにその瘀血は子宮や卵巣に起こりやすく(なんでそんな下半身ばっかり瘀血が起こるのかは不明)、それが原因となって更年期障害や不妊にもなるんだそうです。

更年期障害の一症状である「ほてり」はてっきりホルモンバランスの崩れが原因と思っていましたが、冷えが更年期障害の原因とは知りませんでした。じゃあ、温めれば更年期障害という女性を悩ませる、決定的な治療法が無いはずの病気が一気に解決するんですね、こんな方法で。更年期外来なんて閉鎖することになっちゃうけどね。

冷えとり上級者は靴下を5枚重ね履きする

http://murmurmagazine.com/booksandmagazines/#sec02

冷えとり上級者ともなると、ソックス5枚履きらしいです。重ねりゃいいってもんでもないでしょう、ヒマラヤ登山用のソックスと靴を履けば十分足もとは温まると思うんですけど。

冷えとり信者さんは「体温が36.5度付近だと免疫力が強くなって」とか「体温が36.5度なら体の中の酵素やたんぱく質の変化に適応する」なんて感じの一見科学的医学的なご意見を述べます。

細菌ってその辺りの温度が一番増殖しやすいんですけどねえ〜。そっか、免疫力がアップしているから細菌もやっつけちゃうんですね、多分(こんな書き方が私が嫌われる原因と判ってはいるんですけど)。

人種間の平均体温の違い、あるいは国別の平均体温はどうなっているのか?

私の欧米人のオッサン友達は4月ころから短パン・半袖で暮らしています。皮下脂肪が厚いから薄着でいいのかもしれませんが、残念ながら熱帯地方出身の友人がいませんので、彼らが日本で春先にどんな服装で暮らしているのか詳細は不明です。

人種間で平均体温の違いがある程度存在していることは予想できますが、こんな基本的な医学論文を見つけることができませんでした。

米国人の平均体温は37度程度なのですが、人種の特定もできませんし、体温を測定する時に日本だと脇の下、欧米人は舌下なので比較することは不可能なのです。手術中に体温を測定する時はお尻の中に温度センサーを入れますが、平均体温のデータ収集のためにその測定方法に協力を求めるのも厳しいですよね。

関連ブログ 左右の体温が違うって病気?異常?正しい体温の計り方

細菌やウイルスに感染した時体温が上がるのは、免疫システムがスイッチオンになってウイルスや細菌と戦っている状態でもあります。安易に解熱剤を使用すると症状が長引く原因の一つになることは間違いありません。

でも、常日頃から体温をあげていると、ウイルスや細菌も熱に対する耐性を獲得することになりますので、冷えとり信者さんが新たな細菌を生み出す可能性があるかもしれません。

冷えとりさん達が好む生活は自然豊かな環境でオーガニックな食物で生活を送ることであり、もちろん化学物質から製造された薬なんか一切服用しません(どんな成分でも分析すれば化学物質なのに)。

冷えとりグッズも興味深々

もちろん興味本位に「冷えとりグッズ」で検索したら、出てくる出てくるお洒落とは真逆の冷えとりグッズが。

おしゃれとは真逆の冷えとり用靴下

冷えとり定期便

一足のソックスで4足分の厚さ(暑さ?)を可能にする技術くらい、いくら製造業が落ち目だといっても、日本の職人さんは作れるでしょうよ。

愛好者は私の知らない間にかなり増殖していたようです。

実は冷えとり対策には靴下、と布教している教祖様がいるのですが、今ブログを書いている手元にその方の著作がないので、近日中に「冷えとりには靴下かさねばき理論」のそれはそれは不思議な世界にご案内しますね。

「冷えとり」というインチキ医学を教えてくれたライターさんに誌上をお借りして感謝の言葉を述べさせていただきます。これでブログ10本は書けるなwww

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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