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標準治療を真っ向から否定?自分のがんをトンデモ医学で治したと語るお医者さん、よくよく読むとヘンテコな話がてんこ盛りじゃん❗

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医師が「がん」に罹ってしまった場合、なにを思ったか標準治療を拒否することがあるそうな。

メディアがよろこんで記事にする話題なんだろうけど、一般の方が安易にまねるのもリスキーだし、トンデモに毒されたがんサバイバーのお医者さんの適切では無いアドバイスは禍根を残すんじゃないでしょうか?

がんになった医師が標準医療ではなく、トンデモで治療した経験談の問題点

人間の体は科学や医学が発展しても、まだまだわからないことだらけです。一方で、私達医師が医学部で学ぶ医学は先人の叡智の結晶であり、体系化された標準的なものが中心となっています。

つまりまっとうな医学を学んでいる限りは非科学的なトンデモ医学やニセ医学に取り込まれる可能性は稀有なのです。しかし、医師であっても人間です、自分が大病、特にがんと診断された場合は動揺して標準治療以外の体系化されていない、下手すりゃ思いつきレベルのニセ医学に魅了されてしまうことが無いとは言い切れません。

トンデモのオンパレード、お医者さんでトンデモはかなり厄介です。

トンデモのオンパレード、お医者さんでトンデモはかなり厄介です。

テレビや新聞・雑誌に登場する医師を盲目的に、信頼できると思い込みがちですが、中にはトンデモ医師もちらほら紛れ込んでいます。今は簡単にネットで医師や病院の情報を調べることができます。良い医者選びは難しくても、行っている治療法をみるだけで、トンデモ医師・ニセ医学かどうかをカンタンに見極めることができます。

昨日、このようなブログ記事を書きました。ここで取り上げたトンデモ医学のオンパレードクリニックの院長先生はなんと標準治療を受けないでご自分の乳がんを治療したことを「美ST」という情勢向けメディアで語っています(https://be-story.jp/article/51740⋯なぜか今は削除?)。

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美STのトンデモ記事はyahoo!ニュースにも2021年3月9日に転載されてたので目にした方も多いのではないでしょうか?

そもそも標準治療を受けてんじゃん❗

このトンデモ記事は現在では美STでも削除されているようですが、なぜか私は記事を記録してあったので、それをもとにどれだけヘンテコなトンデモ系ニセ医学についてこのお医者さんがどっぷり使っているのかを解説しますね。

標準治療を受けない治療法で再発なし。星子尚美先生の【乳がん】闘病と治療法 2021年3月1日 美ST

タイトルから標準治療を受けていないけど、がんは再発していない、と読み取るのが標準的なリテラシーだと思います。しかし、記事中では

1年後、聖路加病院で手術のみを受けました(ステージⅡB)。術後は、長年取り組んできた代替療法のみを選択し、様々な代替療法を自分のカラダで試し、治療に取り組みました。

おいおい、しっかり乳がんの手術受けてんじゃん❗

乳がんでステージⅡBの場合は、次のように定義されています。

  • 乳がんの大きさが2cmを超えて5cm以下でリンパ節転移はあっても周囲とは癒着していなく可動性がある
  • 乳がんの大きさは5cmを超えるが、遠隔臓器への転移は無い

国立がん研究所センター がん情報サイト
https://ganjoho.jp/public/cancer/breast/treatment.html

乳がんⅡBの標準治療は乳房の切除とリンパ節の生検、あるいは腋窩リンパ節郭清です。多くのがんの場合、手術で病巣が切除できても今後の転移が心配であるために、切除した臓器の病理検査を慎重に行い術後のリスク判定をします。

このお医者さんの場合、がんは綺麗サッパリ手術で取り除けたので、放射線治療や薬物治療の必要性がもともと無かった可能性もあります。

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つまり乳がんの治療は標準治療である外科的手術で完了だったのかもしれません。

しかし、医師もひとの子、標準治療以上の治療方法を模索してトッピングをすることによって、標準治療を上回るプレミア治療(そんなのないけどね)を求めてトンデモ医学に首を突っ込むことになったようですね、もともとその界隈に興味をもっていたのかその界隈志向を持っていたのかは不明だけどね。

標準治療による乳がんの治療成績は驚くほど優れている❗

乳がんの場合、ステージⅡと診断された場合の5年生存率は85%程度とされているウェブ情報が多いですが、さらに詳細に調べることができるサイトをご紹介します。

全がん協生存率 https://kapweb.chiba-cancer-registry.org/full

この先生の場合病期つまりステージはⅡB、乳がんと診断されたのが50才、そして少なくとも標準治療としての手術を行っています。それをこのサイトの計算式に入れ込むと

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あれ、あれ〜っ、かなり高い5年生存率が提示されてしまいました。

標準治療の手術を受けていれば、かなりの好成績の生存率を乳がんでは期待できるのです。

詳細な組織や症例数の関係で分かる範囲で数字を当て込んだことをご了承くださいませ。

標準治療を受けて、その後放射線治療や抗がん剤治療を受ける必要があるかは、乳がん細胞の性格に大きく左右されるのです。

サイマティクス療法ってなーに?

乳がんサバイバーのお医者さんはトンデモ系ニセ医学の代表である高濃度ビタミンC点滴療法とこれまたトンデモのオゾン療法を標準治療を受けた後にセルフで行っているとのこと。さらに、サイマティクス療法というあまり聞き慣れない、でも限りなくトンデモの香りが漂う治療も併用しているそーです。

そもそも高濃度ビタミンC点滴療法は酸化した細胞が悪との判断のもと酸化を防ぐために行うというのが基本的な理論。一方でオゾン療法で使用するオゾンはオゾンはそもそも酸素原子が3つで構成されるものであり、協力な酸化作用があります。

一方で酸化を防ぎ、一方で酸化させる、この治療方法を併用することに疑問を持たなかったのでしょうか?

サイマティクス療法は朔日のブログ記事で紹介したトンデモ系ニセ医学と判断して間違いないものなんです。例えば「サイマティクス療法」でググってみてください。芳ばしいトンデモの香りを撒き散らすサイトがズラッと検索結果に現れるはずです。

サイマティクス療法の説明で

全ての細胞の乱れを音と振動で共鳴を起こし、自然治癒力を活性化させる波動治療。

と、トンデモ系ニセ医学のお約束のワードがズラッとならんでいますからね。

無添加や自然農法など食材でがん治療は可能とのエビデンスのご提示をお願いします

お約束の自然治癒力を高める工夫として無添加や自然農法など食材をつかった食生活ががん治療やがんの再発を防ぐことができたかのような文章構成になっています。

ところが残念なことに、がんになりやすい食材はあっても、がんになった場合の治療効果が明らかになった食材や特殊な食事方法は現時点では存在しません。

さらにこの方はトンデモさんのお約束として

健康にいいといわれている牛乳が、実は健康に悪影響を及ぼす可能性があることはあまり知られていません。多くの乳牛は狭い牛舎に繋がれています。そのような環境ですから病気になることも多く、その度に抗生物質を投与されています。また、度重なる妊娠や何度も搾乳されることなどが原因で、多くの乳牛は乳房炎を発症します。この時の治療にも抗生物質が使われているのです。

https://tvhospital.jp/2020/04/10/article143/

と、語っています。牛乳を敵視するのがトンデモさんの傾向の一つであることは以前ご紹介しています。

牛乳はモー毒?蘇る「牛乳有害説」⋯でもこれって医学的には否定されているんですけど⋯?

牛乳はモー毒?蘇る「牛乳有害説」⋯でもこれって医学的には否定されているんですけど⋯?

牛乳は体に悪いのに日本で普及した理由は、牛乳をたくさん飲ませて企業を儲けさせたいアメリカの陰謀というトンデモ話があります。全て「組織」のせいにすれば面白くなる陰謀論の典型ですが、真に受けてしまう人が結構いるのです。牛乳害悪説は昔から根強く信奉者も多いので、微力ながらトンデモ説だよという情報発信をさせていただきます。

このお医者さん、かなり厄介な界隈に絡め取られてしまった可能性が大であり、これらのトンデモ治療方法を患者さんに自信を持って推奨されても困ってしまいます。なんらかの気配を感じて記事を削除処理した美STはそれなりに賢明な判断をしたようですね。

でも、はしごを外されちゃったこのお医者さん、今後はどの方面に手を伸ばすのかトンデモウォッチャーを自認する私としては定点観察地点とさせていただきます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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