週刊現代さま、医療はサービス業なんでしょうか?

伊集院静さんが某大学病院の外来で1時間45分も待たされたことを週刊現代紙上にお書きになって、医療関係者の間でちょっと話題になりました。

医療はサービス業である、と仰る週刊現代さまですけど⋯

私は予約料というシステムがあり、その大学病院がそのシステムを採用していて伊集院静さんがそれを利用したらブチギレすることも無かったんじゃないかなあ、なんてことを考えました。

週刊現代のウェブ版ではこんな感じで

医療機関は「サービス業」の意識ゼロで医療機関をdisっています。この医療機関はサービス業であるか否か論争は以前からありましたが医療機関サイドというか医師の間ではサービス業じゃないぜ的な意見も多いのが実情です。しかし、「サービス業」を国語辞典で調べてみると⋯

  1. 人のために力を尽くすこと
  2. 商売で客をもてなすこと
  3. 商売で値引きしたり、おまけをつけたりすること
  4. 物質的財貨を生産する過程以外で機能する労働

以上がサービス業の定義のようです(大辞泉等による)。1と4は医療行為の説明として妥当なものだと考えられますが、3と4がどうしても医師をはじめとする医療機関関係者には抵抗があるために「医療はサービス業ではない」との考え方は受け入れがたいものになっていると考えられます。

週刊現代がどのように医療はサービス業の意識がゼロと考えているのかは、リンク先をご覧ください。「なぜ日本の病院は、患者をこんなに待たせて平気なのか」

医療はサービス業の良い点は積極的に取り入れるべき、でもサービス業じゃないよね

医療機関、特に医師に対して「偉そう」「上から目線」「ぞんざいな態度」などがよくクチコミサイトで見かけるマイナス評価です。私はできる限り医師及び医療機関のシステムはサービスを心掛ける必要はあると考えていますが医療=サービス業との考え方を全面的に支持するのには納得がいきません。あっ、これが上から目線といわれる原因かねえ(苦笑)。今医師の労働体系、特に勤務医の長時間勤務などが一般の方はあまり関心がないかもしれませんが、論議を呼んでいます。一部の患者さんの「医療はサービス業じゃん」的な対応にこたえるために過度の負担が医師、特に勤務医にかかってしまっています。

以前よく言われていたのが3時間待ちの3分診療伊集院さんの場合は1時間45分待ちの、という具合です。

患者さんの中には自分の症状を上手く伝えられないで、診療に時間を取られてしまうことがあります。お年寄りだと「なになにさーん」とお呼びしても診察室に到着するまでに時間がかかることがあります。医師も患者さんに説明するときに、誤解を招くと将来的に訴訟になってしまうのではないか、とかんがえ必要以上に処方や検査や診断内容をくどくどと説明し、その内容を逐一電子カルテに打ちこむこともあります。診察料は全国どこでも同じことをすれば均一です。

今回は診察が3分だったので診察料おまけしておきますね!!とか長時間お待たせしちゃったので、血液検査おまけしてやっちゃいましょう!!なんて話にはなりません。故に一般の方がサービスをサービス業に求めるのとちょっと違うんじゃないでしょうか?

多くの医療関係者、特に医師の捨て台詞?

あまり大きな声では言えませんけど、医師の間では医療はサービス業である、との言われ方に対してサービス業に徹しますから、全額自費治療としてくれなんてものもあります。

日本の医療費って世界的に見て低価格なんだから、米国のように高額の医療費を払ってくれるならサービス業といわれても受け入れるなんて感じの捨て台詞のようなご意見を見かけたこともあります。これらの考え方をざっくり一言でいうと医師の労働に対する報酬の対価が安過ぎるとの意味合いが強いように思われます。

このような考え方の医師は聖職者的な扱いはされなくても結構だから、うんとサービスするからそれなりの金銭的なメリットをくれ、ってことなんでしょうねえ。この考え方も私は全面的に支持することはできません。

総務省の統計基準「日本標準産業分類」によれば医療はサービス業?

統計を取るうえの便宜として日本標準産業分類 (https://www.soumu.go.jp/toukei_toukatsu/index/seido/sangyo/02toukatsu01_03000044.html) というのがあります。これによると大分類「医療・福祉」中分類「医業」となっていて医療業とは,医師又は歯科医師等が患者に対して医業又は医業類似行為を行う事業所びこれに直接関連するサービスを提供する事業所をいうと定義されています。

国の考え方だと医療はサービスを提供する事業所だけどサービス業には分類されていません

私の医療はサービス業ではないけど、サービス業の良い点はどんどん取り入れるべき、との考え方は間違っていないようです。ちなみに自分の都合の良い点だけチョイスすることを確証バイアスと呼びます(笑)。

患者様と呼ぶ苦肉の策はなんとなく不自然

一時期患者さんのことを「患者様」と呼ぶ医療機関が増えたことがあります。当院は開業以来21年間ずっと「患者さん」と呼んでいます。患者さま、と呼ぶことでサービス業的なサービスができたぜ、と単純な思考回路になってしまった医療機関および経営者および医師はいたってことですね。でもよくよく考えてみたらサービス業にありがちな「お客様は神様で」「とにかくお客様ファースト」「お客様第一主義」で医療を継続できるのでしょうか?医療の本質は「患者さんの健康第一」「患者さんの命が大切」だとかんがえています。

医療機関は取り入れることが可能なサービスはどんどん取り入れることは重要であり、当院としてもユーザビリティを高めるよう努力は継続してきます。しかし、へりくだった態度や卑屈な態度で患者さんと接することはまずありえません。

患者さんと医師の関係ってどっちが偉いとか偉くないとか、どっちが上とか下とかでなくて対等である、との考えで当院は運営していく所存です。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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