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都市伝説「経皮毒が原因で羊水からシャンプーの臭いがした」⋯ニセ医学です。

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経皮毒と呼ばれるニセ医学があります。経皮毒のエピソードとして「知り合いの看護師から聞いた話なんだけど、羊水からシャンプーのニオイがした」というものがあります。

看護師が助産師がや産婦人科医となっているバージョンもあるようです。そもそも、皮膚から体内に薬剤を入れ込むために、製薬会社の研究者は血のにじむような努力をしています。日用品のシャンプーが体内に吸収されて妊娠時に羊水に溜まる、というトンデモを拡散している一派がいるのです。

まことしやかに拡散する「経皮毒」という擬似科学・ニセ医学

どこがネタ元が不明なのが都市伝説。医療に関する都市伝説も数ある中で「赤ちゃんが生まれた時に、羊水(胎盤といっている人もいる)からシャンプーの臭いがする」という、医学常識では考えられない話があります。

擬似科学・ニセ医学に対して批判をする場合、想定外のツッコミが入るので書く方がなぜか地雷原をソロソロと歩く心境になってしまいます。まずは想定外のトンデモないツッコミが入らないように「経皮毒」の定義というか、一般的な解釈を決めないといけません。

ニセ医学の経皮毒は経皮的に薬剤が吸収される一般の医学とは別物だよ❗

薬の中では気管支拡張作用があるもの(ホクナリンテープ)や心臓に作用するもの(フランドルテープ)など、皮膚を経由して体内に吸収されて、血流に乗って作用するものがあります。

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「出口のない毒 経皮毒 シャンプー・リンス編」監修 真弓定夫 美健ガイド社発行

そもそも皮膚は外から異物が簡単に体内に入り込まないために存在する器官でもあるので、経皮的に薬剤を体内に吸収させることはハードルが高いものです。シャンプーごときが皮膚から体内に吸収されて、それもよりによって毒が子宮に集まる、⋯これが「経皮毒」の定義???らしいです。化粧品類も経皮毒で肌をボロボロにするだけではなく、体調も悪くするそうです(笑)。

ネオキシテープという過活動膀胱の薬は確かに皮膚から有効成分が吸収されて、膀胱に作用します。この技術はサロンパスで有名な久光製薬の技術の積み重ねで開発されたもので、開発には涙なみだの物語があるくらいです。

こんな経皮毒のアレンジ系ニセ医学もありますぜ(笑)

ニセ医学だよね、「冷えとり」のために、なんで靴下だけ重ねばきをするの!?

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ニセ医学だよね、「冷えとり」のために、なんで靴下だけ重ねばきをするの??❗

経皮毒はなんで子宮に集まるの??

経皮毒というインチキな考え方は「なになにを使用すると、経皮毒が溜まるんでこのサプリを飲んでデトックスしましょう」とか「どこどこのシャンプーは経皮毒があるんで、オーガニック成分のこのシャンプーを使いましょう」という感じで、世の中に存在しない「経皮毒」の怖さを訴えつつ、自社製品を販売する、という実に優れた戦略のもとに巻き散らかされているインチキ擬似科学です。

経皮毒とは、皮膚を通じて体内に毒が入ることです。毒というのは、日用品に含まれている有害化学物質のことを指しています。普段使用しているシャンプーやリンス、化粧品、洗剤、入浴剤など、たくさんの日用品には経皮毒の影響を及ぼすといわれる有害化学物質が含まれています。化学物質は目に見えないほど小さいので、皮膚の毛穴などから簡単に体内に入り込みます。お風呂などで体が温まっていると、経皮毒の吸収率は約10倍にもなると言われています。また、問題なのは一度体内に取り込まれた経皮毒性のある化学物質は、簡単に排除することができません。そして、経皮毒性化学物質は人間の体に様々な影響を与えます。

経皮毒ガイド

一瞬ありそうに感じる表現ですが、よーくじっくり検討してみましょう。シャンプーの毒が子宮に溜まるなら、膀胱にも溜まって泡まみれのオッシコが出ても良さそうなものです。

泡立ち尿って病気?泌尿器科医からおシッコの泡が気になる方へのアドバイス

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羊水になんで毒が溜まるのか?羊水が汚染される?

胎児の水分ももともとは母体から配給されたものなので、毒物が一切混入しない訳ではありません。注射を直接静脈にした場合、薬剤によっては羊水に移行する場合もあります。となると、経皮毒を主張する方々の意見も正しいように感じてしまうのも仕方のないことです。しかし、大前提として

経皮毒の毒って何?という問題が残っています。

「シャンプーが羊水を汚染する」というデマにおける毒は「ラウリル硫酸ナトリウム」、簡単に言えば「界面活性剤」が毒であって悪いということになっています。このラウリル硫酸ナトリウムは一時期発がん性があるのでは?と騒がれた物質です。万が一、この毒が体内に入り込み子宮に集まった場合、羊水がシャンプーの匂いになるわけありませんよね、匂いは香料がほとんど元になっているのですから。

ちなみに当時日本の厚生省で詳細に発がん性について検証が行われましたが、がんとの因果関係は認められませんでした。

なぜ経皮毒なんてニセ医学・疑似科学が流布するか?

日常品の電磁波を恐れる、放射能汚染を怖がる、食品添加物を異常に嫌う⋯このどれか一つでも当てはまる人は残りの二つの疑似科学も信仰してしまいますし、もちろんワクチンはゼッタイ反対派に属します。さらに砂糖を病気の根源にする、肉食を否定するというニセ医学も信仰の対象です。

このどれか一つでも信仰している人に小学校・中学校レベルの理科と算数で誤りを指摘しても、まずは納得してくれません。変な新興宗教に入信しているのと同じ状態です。ニセ医学・インチキ代替医学ではなくスタンダードな医療を受けてもらうことはご自分で気づくまで難しいのです。

つい先日もこんな悲惨な事件が起きています。

「悪霊はらう」糖尿病の7歳、治療させず死亡___社会___読売新聞(YOMIURI_ONLINE)

親がニセ医学の信奉者だと子供が犠牲になります。この親だって子供のためならばとの気持ちだったのでしょう。ニセ医学を操る輩は心の隙にうまく入り込みます。

ニセ医学信奉者は仲間を増やしたがるのです。インチキ医学信奉者に毒されないで、あっち方面の仲間入りをしないように一般の方に注意喚起するつもりでブログを書いています。

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著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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