週刊現代「女性医師の手術はいやだ」に対してエビデンスつけて反論します!

週刊現代さま、不肖五本木クリニック院長の桑満おさむが貴誌2018年9月22、29日号にて報じられた「女性医師の手術はいやだ」と題された記事についてお尋ねというか、反論というか、抗議をさせていただきます。

週刊現代の大問題記事にエビデンスをつけて反論いたします

週刊現代は雑誌ジャーナリズムの本道を行くと自称されおりに、大新聞のようにお上に忖度しない記事を書くことに存在価値を見出していることは承知しております。しかし、

今回の「命に関わる女性医師の手術はいやだ」記事は炎上狙いなのでしょうか?

言われなき差別が社会問題化されている平成の御世に時代錯誤も甚だしい事実誤認による炎上狙い記事を掲載されることは言論の自由、出版の自由に守られた行為であることは重々承知しております。

また刺激的な小見出しで「命より男女平等が大事か?」とも記されていますよね。

外科系女性医師が劣っているとの考えは全くエビデンスの無い、たんなる思い込み、あるいは妄想ですと明言します。

これからは女性医師がどんどん増えてきます。外科医を目指す女性医学生が増えることは医療に携わるものとしては大歓迎なのですが、

なぜ手術を女性医師に任せては命に関わるのでしょうか?明確な根拠をぜひご提示ください

私は外科医の場合には手術成績に男女差は認めないとの論文を提示させていただきます。

週刊現代の悪記事を読んで私はとっさにこんなツイートをしてしまいました。

このツイートで宣言したように週刊現代の根拠ない女医の手術はいやだ記事に対してきっちと反論を書かせていただきます。週刊現代は医療批判記事によって部数を伸ばしたかもしれませんけど

こんなポンコツ記事を平気で掲載するということは、編集サイドがかなりポンコツである、と判断してもいい気がします。

ちなみに取材に応じている

小林よしのりさんの女医は身体的特徴により不安をおぼえる発言は論外

ですし、医師としてコメントしている元代議士の方(すっげー昔、飲み屋でお会いした記憶あり)の女性は反射速度や判断速度が遅い説から導き出された

女医さんは外科手術は得意でないでしょう発言は思い込みによるものだと考えます。

今回この週刊現代の時代錯誤的ポンコツ記事に対して、医学的・統計学的・疫学的研究結果を根拠に反論させていただきます。

手術成績に医師の男女差は認められないことの根拠はこの医学論文です

女性医師が担当した場合、治療成績は男性医師より優れているとの有名な論文があの大ベストセラー「世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事」の著者である津川友介医師の手によって論文になっています。

「Comparison of Hospital Mortality and Readmission Rates for Medicare Patients Treated by Male vs Female Physicians」(JAMA Intern Med)によれば

内科医の場合、女性医師が担当した方が男性医師が担当した時より治療成績が良くなっている

ことがわかりました。

理由に関してはいくつかが考察されていますがその件に関しては今回は話題としません。この論文よりは一般的な知名度は低いかと思われる同じ津川友介医師の論文で若い外科医と年をとった外科医との治療成績を調査したものがあります。

その研究論文「Age and sex of surgeons and mortality of older surgical patients: observational study」(BMJ)では結論的に年をとった外科医の方が若い医師より治療成績が優れていることが判明していますが、同時に

外科手術に関しては医師の男女差によって治療成績に違いは無かった

ことが結果として出ています。

悪記事を書かれた記者さん及び編集部の方はお忙しくて論文全部に目を通すお時間は避けないと思われます。そんな時に医学論文の内容をざっくりと把握する手段としてアブストラクトだけ読むのも一つの手です。

外科医の場合、男性医師であろうと女性医師であろうと治療成績に差がなかったことを報告した論文のアブストラクトでは

After stratification by sex of surgeon, patients’ mortality declined with age of surgeon for both male and female surgeons

Age and sex of surgeons and mortality of older surgical patients: observational study

と書かれています。もし英語が苦手な場合はGoogle翻訳等のサービスがありますので、それを使用すれば「男性と女性の外科医で治療された患者の間では、手術死亡率が異なっているという証拠はなかった」と翻訳されるはずです(細かい数字は当方にて省略)。これでも

女性外科医の手術を受けるのは命に関わる問題なのんでしょうか?もしも女性外科医の手術を受けた場合に命に関わるとの医学論文がありましたらぜひご提示ください。

私はエビデンス至上主義者ではありません。エビデンスといっても症例報告レベルからランダム化比較試験のメタアナリシスまで信頼度に大きな違いがあります。しかし、ご自分の意見を思いつきでは無く、妄想でも無いことを伝えるためにはある程度の質が担保された研究論文を根拠とすることは医学では必要だと考えています。

女性外科医の方が男性外科医より治療成績が優れている、との論文もあります

週刊現代の編集者の方は、もしよろしければこの論文もお読みください。

「Comparison of postoperative outcomes among patients treated by male and female surgeons: a population based matched cohort study」(BMJ)では

女性外科医が手術した方が死亡率が下がるとの結果になっています。

故に週刊現代の外科系女医さん拒否記事は根拠無き全くの思い込み、あるいは妄想と断言してよろしいかと思われます。

私が根拠とした論文は全部海外のものです、すると「お前の提示したのは外国じゃん、日本の女性外科医に命を託してはいけないことを否定する論文を提示せよ」と反論をされる可能性があります。でもねえ、日本における女性外科医は数が少なくて統計学的手法で男女別による治療成績は検証できないかも、ってお返しいたしますね。

世界的に見ると日本では女性医師は圧倒的に少数です(https://labcoat.jp/doctor-men-women-ratio/)、さらに外科系の女性医師となると

女性医師の割合は外科は7.1パーセント、整形外科は4.4パーセント、そして我が泌尿器科は5.0パーセント、という結果になっています(厚生労働省 女性医師の年次推移より)。

まあ、このようにサンプルサイズが小さくても統計的検証はすることは可能かもしれませんけど、その件に関しては統計学の専門家にお任せします。

たかが週刊誌というなかれ、週刊現代のポンコツ記事に医療現場は振り回されています

夕刊フジや東スポに反論することは誰が見てもおとなげ無い行為ですよね。エッチな記事や写真が掲載されている中年以降の男性を主な読者としている週刊現代もそれらの娯楽紙と同様に扱えばいいのでは?なんてお考えの方もいらっしゃると思いますが

週刊現代「がんでも受けてはいけない手術」は間違いだらけ!!?

週刊現代さま、血圧の薬は危ない薬で「一度飲んだらやめられません」って本当ですか?

などなど今まで多数の週刊現代の記事に対する疑問をブログにしてきました。

あの週刊現代が「がんの免疫療法はインチキだ!!」で医師から大絶賛!!

で巷の限りなくインチキ臭い自費でのがん治療に対して、かなり突っ込んだ記事があり

やれば出来るじゃん、週刊現代!!「受けてはいけない、がん免疫療法第二弾」!!

などで一時期はまともというか良記事を掲載して改心したと思われた週刊現代ですが、シリーズが継続しなかったことを鑑みると、まともな記事だと販売部数が伸びなかったのかもしれません。

世の中の常識に反する意見を述べて注目を集める医師あるいは大学教授は、週刊誌的には非常に有用な存在だと思われます(ex:近藤誠医師、武田邦彦教授)。ネットでは炎上商法と呼ばれる手法もあるようで、これらの手法を週刊誌業界に取り入れたかのような今回の週刊現代の記事は私が愛用する「トンデモ」なんて可愛い表現が適さないくらい悪質な記事と判断します。

女性医師の団体である日本女医会は正式に抗議を週刊現代にするべきだと思いますし、この問題は医療に従事している男女を問わず関係者全員に対する侮辱だとも考えるしだいです。

追記:小林よしのり氏は女性医師差別の背景として医療システムについてBLOGOSで述べられています、でも誤解があるようです。

2018年9月18日00:57

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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