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週刊現代さま、血圧の薬は危ない薬で「一度飲んだらやめられません」って本当ですか?

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週刊現代が飛ばしています。「医者に出されても飲み続けてはいけない薬」「有名な薬でも飲み続けるのは危険」そして「一度飲んだらやめられない、危ない薬」などなど。一度飲んだらやめられない薬として降圧剤「アジルバ」が例に挙げられてます。しかし、実際は生活習慣を工夫することで、中止可能な薬も数々あります。

週刊現代さま

一度飲んだらやめられない危ない薬❗

なんて表現は覚醒剤じゃないんだから、控えたほうがいいんじゃないでしょうか?

医療現場に混乱を起こす週刊現代問題

例えば私の経験として実際に一時期高血圧治療薬の「アジルバ」を服用していましたが、今では血圧の薬なんて飲んでいませんもの。そういえば週刊現代はこんなことも言っていましたので、もちろん反論しましたけど⋯。現役医師に聞いた「患者には出すけど、医者が飲まないクスリ」ってウソだよね、冗談だよね⁉

サイアザイド系の血圧の薬がなぜ使われないのか?

週刊現代の薬批判記事では、高血圧治療薬であるACE阻害薬やARB系の薬は「危ない薬」とされています。その代わりにサイアザイド系利尿薬を使おう(理由は安いから)との話が書かれています。

週刊現代6月25日号では高血圧治療薬としてラシックスという利尿薬を推奨しています(安いから)。この記事を見て吹き出した医療関係者も多いのではないでしょうか?だって

ラシックスってサイアザイド系ではなくて、普通はループ利尿薬と分類されるんですけど

これだけで記事の信用性が下がるのですが、一般読者は気がつかないことと思われます。

利尿薬が高血圧に効果が有ることは十分知られていますが、単純な薬であるだけに副作用も多いのです。例えば降圧作用のあるサイアザイド系利尿薬の副作用として

・高血糖・高カルシウム血症・肺水腫・再生不良貧血・脱水・低血圧

などなどが挙げられます(サイアザイド系降圧剤は週刊現代風に言えば「危ない薬」)。サイアザイド系の降圧剤は高血圧の原因は塩分の取りすぎであり、体内に取り込まれた余計な塩分が水分を保持して高血圧になる、との考え方によって使用されています(ザックリですけど)。

でも食塩感受性って問題もあります。食塩の取りすぎを改善しても高血圧が改善されない人って日本人にはかなり多いことが知られているんですよ。ってことはサイアザイト系降圧剤は副作用もあるし、効果が現れない人もかなりの数に上るのです。また、人種によっても降圧剤の種類によって効果に違いが出てきます。例えば「Systematic review: antihypertensive drug therapy in black patients.」(Ann Intern Med. 2004 Oct 19;141 (8) :614-27.)⋯お時間がある方はどうぞ。

そうなるとより効果が有る薬を選択するのは行動は医師として当たり前であり、医薬品メーカーもより安全で効果のある薬を開発するのだって当たり前です。サイアザイト系の利尿剤じゃないループ利尿剤のラシックスだって以前は30円以上していましたので、時間の経過とともに高額な薬の代表として書かれている「アジルバ」(141円)だって安くなるはずです。

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東京大学薬学系研究科・薬学部サイト

15円は無理でも今から40年経てばかなり安くなるはずです(2年ごとの薬価改正で薬の値段はどんどん下がっていきますから)。

血圧の薬だって、やめようと思えば止められる可能性も大

なぜか脳卒中恐怖症の私はある時血圧を測って「こりゃ薬を飲まなきゃ」といきなり高血圧治療薬を飲みだしました。様々な薬を試してたどり着いたのが、週刊現代に言わせれば「一生飲み続ける覚悟とカネがありますか」の「アジルバ」でした。ある日、大量の飲酒をしていたところ、立ちくらみをおこしてしまい、血圧を測るとなんと超低血圧❗そういえば薬を飲み始めた時点でポッコリお腹が気になって、減量をしていたのです。肥満傾向も高血圧の大きな原因ですから、高血圧と診断されたからと言って即、薬を飲みだしてはいけないのです。

高血圧と診断されてもまずは生活習慣の改善、適正体重への減量、アルコール摂取の制限、禁煙と適度な運動を3か月程度行って、それでも高血圧なら服薬を開始する、ガイドラインには書かれてあります。

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高血圧治療ガイドライン 日本高血圧学会

生活習慣の改善により薬を一生飲み続ける必要がなくなることもあるんです。「一生飲み続ける覚悟とカネがありますか」(週刊現代6月25日号)なんて大騒ぎしないで、まずは自分の生活習慣を見直そうね、週刊現代ファンのオッサンたち❗

なんでも「カネ」に換算してしまう週刊現代ですが、後ろの方の袋とじのH写真につられて

週刊現代を毎週買うと1年で約2万2千円、アジルバ40mgを毎日飲んで約1万5千円

となります。どっちを取るか、自己責任で選択しましょうね❗

医療費って価格で選択するものなんでしょうか?

医薬品メーカーは金儲け主義であり、それに便乗して医療機関も高い薬を処方する、との基本的な考えが週刊現代にはあるようです。しかし、いくら高額な薬を処方しても医療機関には直接的なメリット、利益はありません。医師だって患者さんを騙して高額な薬を処方しているワケではないのです。

安いジェネリックを処方した方がスズメの涙程度の加算がされることを多くの方はご存じないのでしょうか?さらに一定数以上の薬を処方すると減点の対象にもなります。製薬メーカーも新薬の開発費には莫大なお金がかかります。週刊現代の記事を見て正式に抗議を出す勇気ある医薬品メーカーの登場を待ちたいです⋯新聞で言えば東京スポーツなんで相手にしないか(笑)。

こんな記事も書きましたのでお時間があればお読みくださいませ。

「飲んではいけない薬」はウソだらけ⁉医師でも医療ジャーナリストでもトンデモさんが多発❗

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浜六郎という医師が広めた「飲んではいけない薬」というキャッチーなタイトルの特集記事があります。おっさん御用達の雑誌で定期的に取り上げられる人気?シリーズです。読んだことはなくても電話の中吊り広告などでご覧になった方も多いのではないでしょうか?たかが雑誌、されど雑誌、患者さんと接する医師にとっては大変迷惑な記事なのです。

「ロキソニン」は飲み続けてはいけないの❓薬は作用があれば副作用があるのは当たり前❗

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売れているものが必ずしも良いものとは限りません。人気のある音楽・映画が好みかどうかは別です。一方で売れているから良いものに思えてしまうこともあります。クスリの場合はどうでしょう?週刊現代に掲載された売り上げ上位でも飲まない方がいいクスリという記事について医師の視点で見解を述べさせていただきます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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