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唾液を送るだけで手軽に遺伝子検査、これって本当に信頼できるの??追記あり

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遺伝子検査、遺伝子治療は医学に飛躍的な進歩をもたらせました。1990年に米国が主導して各国が協力することによって、ついに2003年に人間の遺伝子が全て判明したことになっています。人の遺伝子が判明したことにより、がんの治療をするときに抗がん剤の選択することによって、より効果的ながん治療の役に立っているのは事実です。

誰でもカンタンに遺伝子検査ができるようになり、将来かかるかもしれない病気がわかる❗寿命も?と興味津々な方は多いでしょう。果たして、そのデータは信頼できるのでしょうか?

ネット広告だけじゃなくてテレビCMまで始めた遺伝子検査、調べてどうするの?

将来発症するリスクのある病気を遺伝子検査で判定することは本当に利益をもたらすのか?とTVCMを観ながら考え込んでしまいました。

例えば遺伝子検査によって自分が肺がんの発症リスクが高いと判定された場合、肺がんのリスク因子として知られている喫煙を止めることは良いことであっても、もともと喫煙習慣が無い人はどのようにすればいいのでしょうか?

遺伝子検査で「あなたは心臓病を発症する遺伝子があります」と診断されても、心臓関連の病気のリスク因子として知られている喫煙・肥満・高血圧等が無かった場合はどうすればいいの?と感じざる得ません。私が安易な遺伝子検査に関して賛同しないというか、調べてどうすんのよ、とテレビに向かってブツブツ文句を言った理由をお伝えしますね。

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Amazonでも手軽に遺伝子検査キットが手に入ります。

「言われています」を連発する遺伝子検査会社の説明

医学や医療で素人サイトや素人ライターの記事でしばしば見受けられる表現として「言われています」「だそうです」「とされています」などがあります。この「言われています」との言葉を使用するのであれば、誰が言っているのかが信頼度を高めるために重要です。

隣のおばさんが「言っていました」では信頼性が低いのはもちろんのこと、医学専門誌で「医師が論文中で言っていました」でも信頼度が高いとは言い切れません。たった一人の医師が言っていても、それが医学専門誌に掲載されていたとしても、その医師がかなりヤバイ考え方を持っていたとしても、その主張を掲載してくれる医学専門誌も多数存在していることを一般の方はご存知ないと思います。

遺伝子検査会社のウェブサイトでは誰が言っているの?と素朴な疑問がじゃかじゃか湧き出てくる「言われています」が多用されています。試しに私が一番目にする「MY CODE (マイコード)」という遺伝子検査会社のウェブサイトを例とします(https://mycode.jp/whatisdna/testing.html)。

例えば

病気は、遺伝子と生活習慣の双方の影響で、発症の有無やその程度が決まると言われています。

なんで「病気は遺伝子と生活習慣の双方の影響で、発症の有無やその程度が決まります❗」って言い切らないのでしょうか?

さらに

病気によって割合は異なりますが、病気の発症には遺伝要因が約30%、生活習慣などの環境要因が約70%影響していると言われています。

とも書かれています。これも「病気の発症には遺伝要因が約30%、生活習慣などの環境要因が約70%影響しています❗」と言い切らないのでしょうか?参考文献としていくつかの論文が併記されています。例えば「Environmental and heritable factors in the causation of cancer–analyses of cohorts of twins from Sweden, Denmark, and Finland.」( N Engl J Med.2000 Jul 13;343 (2) :78-85.)がここに引用文献として示されています。

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確かにこの論文はがんの発症リスクに関して遺伝的な因子が関連していることを示していますが⋯これって

双子の場合のがんの発症リスクを調べただけじゃん❗

さらにこの論文は2000年に書かれています。

2000年の時点では人間の遺伝子の全てはまだ判明していないぞ❗との素朴な疑問が噴出❗この有様ではこれ以上、この会社の「言われています」連発の遺伝子検査の有効性を説明している能書きを読む気がしなくなってしまいます。

爆笑❗「C型肝炎のリスクがあります」

前掲の遺伝子検査会社の遺伝子検査はいくつかのプランに別れていて、がんに関して38項目の遺伝子検査ができるコース(33800円)から「その他の病気」(なんだ?その他の病気とは)とか「体質19項目」(なんだ?体質って)とか「祖先」(なんで祖先を知りたがる?)を調べる一番安いプラン(9800円)まで複数用意されています。

本来ならば私が実際にこの遺伝子検査を受けてみれば良いのでしょうけど、年末になりお小遣いにあまり余裕がないので、実際に遺伝子検査(MY CODEであるかは不明)を受けた医師の感想をネット上で見つけたので例として取り上げさせていただきます。

話題の遺伝子検査、これでは何もわからない 医者が受けて感じたこと

中山祐次郎医師が実際にご自分で遺伝子検査を受けて、その感想をお書きになったものがYahoo!ニュースに掲載されています。

結論から言うと遺伝子検査会社によって検査結果が違った❗との検査自体の信頼性を揺るがすことが報告されていますし、感染しないと発症しないC型肝炎のリスクまでご丁寧に遺伝子検査では判明したとの爆笑しざるえないありがたい結果まで遺伝子検査では判明するらしいです(笑)。

中山祐次郎先生の記事では以下のように書かれています。

この「Aがん」は日本人に多い順で上から5番に入るような、とても頻度の高いものです。ですから是非知りたかったのですが、なんと両社で全く反対の結果となってしまいました。

中山医師の記事中では「Aがん」と具体的ながんの名前は書かれていませんが、日本人に多い順で5番目のがんと記載されていますので、多分「すい臓がん」の発症リスクの結果だと予想されます。すい臓がんは見つかりにくいがんであり、発見あるいは発症した時点ではかなり進行していることが多い、医師でも罹りたくない病気の一つとして知られています。

がんの発症リスクが遺伝子検査を行なった会社によって違っていたのです❗

まあ、検査会社によってちょっとくらい違った結果が出ることは毎日の診療で経験していることと大人の解釈もできますけど、発症リスクが0.97と1.51では天と地くらいの差があることをどのように遺伝子検査会社は説明するのでしょうかねえ。

さらに笑言わずにいられない記載として

他にハイリスクの病気の中に「C型肝炎」という、感染しなければ絶対にかからない病気の名前もありました。

C型肝炎は血液を介して感染する病気であり、もともと持っている遺伝子がどんな悪さをしてC型肝炎になるリスクが高いと判断するのでしょうか?医師の場合、C型肝炎に感染している患者さんに使用した注射針を誤まって自分に刺してしまう針先事故でも起こさない限りC型肝炎に罹患することは無いと思うんですけど。ひょっとして遺伝子検査であわてん坊、そそっかしい、不注意なんてことまでわかるのでしょうか?これでは遺伝子検査は血液型占いと大差ないように感じてしまうのは私だけ、あるいは私と中山先生だけ?

遺伝子検査というよりは遺伝子占いと考えた方がいいかも

安易な遺伝子検査の結果によって人生を振り回されるの嫌ですし、若年者が興味本位で遺伝子検査を受けた場合、変な差別やイジメに繋がりそうな気がしないでもありません。遺伝子に関する医学会の公式的見解の一つとして「遺伝学的検査に関するガイドライン」があります。その冒頭では

遺伝学的検査は臨床的および遺伝医学的に有用と考えられる場合に考慮され,総合的な臨床遺伝医療の中で行われるべきである.

これからわかることは安易な興味本位の遺伝子検査は行うべきでは無いですね。近々、某医学雑誌の原稿料が入る予定です。そのお金で、興味本位に自分自身でいくつかの遺伝子検査会社の検査を受けてみて、その結果を報告しますね❗

追記
やったー❗唾液だけで病気のリスクがわかる遺伝子検査キットをゲットしました。

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近いうちにどんな検査結果になったかブログにするかも??

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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