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気になる「副作用と有害事象」。これって違うの?

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どんな注射でも薬であっても、本来の目的以外の作用が出てしまうことがあります。それを一般的には副作用と呼んでいるけど、似たような言葉で「有害事象」というのがあります。

薬や注射によって期待していない作用でる副作用と有害事象を混同してしまうと、薬を正しく服用できなかったり、必要以上に注射を恐れてしまう可能性があるので、両者の違いを解説してみます。

副作用は一般的だけど、有害事象って何?

薬や注射の副作用、これは処方する医師も十分に気をつけなければいけませんし、患者さん側も処方時に手渡されるはずの服薬の注意書きを読む必要があります。

以前は有害事象なんて一般の方は知ることが少なかったと思うのですが、ネットが普及することによって、どなたでも簡単に薬や注射の有害事象を知ることができます。

ある高血圧の薬があったとします。血圧が下がりすぎて低血圧になってしまった。これは血圧の薬の本来の効果が発揮されはしたけど、効果がですぎた、と考えられます。ある血圧の薬の添付文書には「血圧低下」と副作用として、しっかり記載されています。

高血圧の薬によって低血圧になった、これは薬の機序から考えて当然因果関係があると説明できますので、「副作用」として認識されます。ところが高血圧の薬の添付文書には、「有害事象」との文字は見つけられません。有害事象とはなんでしょうか?

有害事象と副作用は別物です

有害、これはまんま害が有ることを意味しますよね。有害図書なんて言葉もありました。副作用のことを英語では、「side effect」と表記します。でも先程の血圧の薬の話であれば、主たる作用「main effect」に対する副次的な作用が副作用。

乱暴な表現になりまけど、良い作用が主作用、悪い作用が副作用、とも考えられます。

有害事象は英語だと、「adverse drug reaction」と表記し略してADRを使うことが多いです。私自身、有害事象という表現の面倒というか扱いにくさを実感したのは薬の治験を複数当院で請け負ったときです。どう考えても治験薬の作用とは関係ないと判断されても、有害事象として報告する義務があります。

前立腺肥大症の薬の治験を行った時に、転倒して腕を骨折した治験参加者がいました。どこをどう考えても前立腺肥大症の薬の作用によって、骨折したとは考えられません。でも、この件はしっかり有害事象に組み込まれ、因果関係を問われるコメントに「たぶん関係なし」と記載しました。そもそも、治験はダブルブラインドで行われたので、その方が服用した薬がプラセボである可能性さえありましたしね。

前立腺肥大症の薬を服用したら風邪を引いた、これも厳密には有害事象

過活動膀胱の薬の治験を行ったことがあります。治験協力者が集めやすい時期ということで、治験を行ったのは冬。その治験の時に一番多かった有害事象が「風邪」でした。冬だから風邪にかかってしまう人は当然多いはずなのですが、風邪を引いた方に対してどのような対処をしたのか、例えば薬を服用していたら、治験の条件に上げられている併用禁止薬は含まれていないかなどのチェックが必要とされます。

薬と因果関係があれば、それは副作用。薬との因果関係は明確ではないけど、全く関係ないと言い切れない(ある意味でゼロリスク)場合に「たぶん関係なし」とチェックしようものなら、それは副作用に分類されてしまいます。

有害事象も厳密には2種類あります

有害事象、面倒だけど重要なことです。例えばがんの治療を研究しているJOCG ( of the Japan Clinical Oncology Group の略)では有害事象と薬物有害反応との言葉を使い分けています(http://www.jcog.jp/doctor/todo/researcher/A_020_0010_16_old.pdf)。

有害事象(adverse event ) は

医薬品の投与、放射線治療、または手術を受けた患者に生じた好ましくない医療上のあらゆる出来事であり、必ずしも当該治療との因果関係があるもののみを指すわけではない。

と定義され、薬物有害反応(adverse drug reaction )は

投与量にかかわらず、医薬品に対する有害で意図しない反応、すなわち、有害事象のうち医薬品との因果関係が否定できないものをいう。

と定義しています。

有害事象は薬や注射を投与され、良くないことがあればそれは有害事象。有害事象のうちで因果関係が否定できないものが副作用。

これでちょっとすっきりしましたか?副作用と有害事象の違い。

好ましい副作用もあるから話はさらに複雑に?

ある泌尿器科で処方される薬があります。この薬の副作用として、増毛効果があります。薄毛の人にとっては好ましい副作用であり、薬の作用機序的には有害事象ではありません。つまり、泌尿器科領域の薬と増毛効果は因果関係が明確なのです。

ある心臓の薬の治験が米国で行われました。心臓に対する効果はいまいちで治験は中断されました。しかし、治験協力者はなんやかんやと理由をつけて治験薬の回収を拒んだそうです。本来の目的である心臓疾患に対する効果は無くても、高齢の男性が他人には言えない悩みをスッキリ解決してくれたからなんです。それが今ではED治療薬の代名詞ともなっているバイアグラです。

これまたある泌尿器関連の薬がありました。もともとは肺関係の循環器系の特殊な疾患のための薬でした。この薬、厄介な有害事象と思われる事態が発生しました。呼吸困難が症状の1つであるのに、処方された患者さんは呼吸が苦しくなるような状況を自ら生み出してしまったのです。それは薬理作用の機序として説明がつく現象であるために副作用として組み込まれるはずなのですが、副作用として今現在も記載はされていません。この薬はその後はある悩みを解決する男性に限って別名で処方が可能となりました。その悩みはどう考えても病気と判断できても、なぜか健康保険を使っての処方は不可です。

その薬、はその後他の作用も治験でしっかりと確認されて、これまた別名である泌尿器系の疾患に対しては健康保険を使っての処方が認められることになったとさ。

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院長「痛くなくて良かった」…医療従事者へのワクチン先行接種、目黒の医療機関でスタート (https://www.yomiuri.co.jp/medical/20210217-OYT1T50066/)

おまけ:ある感染症に対する予防接種が2021年2月に話題になって、テレビも新聞もネットも関連記事でてんこ盛り。注射をするのですから、「痛み」は当然副作用に含まれるでしょうし、さらに免疫システムへの反応の一つとして腫れたり、熱がでることもあるでしょう。因果関係は明らかなのですから、当然副作用に入れ込まれるはずです。しかし、予防接種の場合は副作用とは呼ばないで、なぜか副反応と呼びます。

ところで注射する白衣のお医者さんは手袋しないとダメなんだろうか?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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