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薬の正しい飲み方、食後に飲む・食前に飲む・食間に飲む、という本当の理由は?

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「この薬は毎食後に飲んでくださいね」

風邪を引いて病院で診てもらった後に、クスリを処方される際にこのように言われて、ふと疑問に思ったことありませんか?

薬を飲む時間に疑問を持っていませんか?

特に冬に流行するノロウイルス、運悪くかかってしまうと強い吐き気と下痢に悩まされます。

食事・水分補給したいけどできないツラい状況で「食事なんかできないから薬なんて飲めないじゃん❗」と憤りを感じることでしょう。

話を、クスリを毎食後に飲んでください、に戻します。

毎食後ということは、朝食・昼食・夕食の後、つまり1日3回です。これは「1日3回飲む薬は効果が8時間なんですよ。だから食事に関係なく、8時間毎に飲むのが本当の飲み方なんです。でもそれじゃ混乱するから三度の食事の後って言っているんですよ。」というわけなのです。

当院では、特別な薬を除いてこのように説明しています。

1日にきっちり3回食事を摂るのが普通とはいえません。食事は1日2回、極端な人は1日1回(あの粗食派の人たちとか。笑)って場合もあります。ですから毎食後という薬の飲み方に疑問を感じる人は少なからずいらっしゃるはずです、そしていざ医師に説明を求めても⋯的確な答えが返ってこない場合が多いでしょう。

ただ、空腹でないと効果がでない薬があります。空腹時に服用という指示があったら守っていただきたいのですけど、食後に薬を飲む場合「食事をしていると胃が荒れない」という解釈をしている医師・患者さんも多いはず。

でも、それって本当でしょうか?

医療の基本中の基本である服薬のタイミングについて検討してみます。

食前もしくは食後に服薬しないといけないクスリには、きちんとした理由がある

食前に飲まないといけない薬はそれなりの理由があります。まず、食前とは食事の前30分程度を指します。食前に飲むクスリは、例えば胃を積極的に動かす薬が挙げられます。これは食事をする時点でその薬の効果を発揮させるためです。ノロウイルスなどの吐き気を抑える薬も食前に服用することが必要です。

次に、食後に飲むように指示された薬ですが、これは大きな誤解を招いています。

服薬指導のところに「食後30分」と明記されているお薬手帳を見かけますが、この解釈として食後30分以内なのか?それとも食後30分経過してから服薬するのか?は具体的に書かれていないものが殆んどです。処方箋をもらう機会があったら是非、医師あるいは処方箋薬局の薬剤師さんにお尋ねください。「この食後30分とは30分以内ですか?30分経過後ですか?」多分、医師や薬剤師さんはおもむろに嫌な顔をして答えに窮することが予想されます。正しい答えは「食事終了後30分以内に飲む」です。

その理由ですが、食べ物と一緒の方が吸収性が高まる、空腹だと胃が荒らされるためです。これは多くの人が服薬は食後と考えている理由でしょう。ですから殆どの薬が食後30分以内の服薬が指示されているはずです。例えば消化を助ける薬は食前に飲んで胃を積極的に動かすものと、食直後に飲む薬は消化機能を推進する働きをするものがあります。ご多忙な主婦の方々は食後30分以内といっても、食事の後片付けをしているうちに飲み忘れることが予想されます。多くの薬は食事直後に飲んでも問題を引き起こしませんから安心してください。

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例えば降圧剤として最もポピュラーなカルシウム拮抗剤のノルバスクの場合、食前とか食後って指示は全く添付文書には書かれていません。でもほとんどのお薬手帳には朝食後って書いてあるんじゃないでしょうか?

食間に飲まないといけない薬の理由

食間に飲むように指示される薬もあります。つまり、空腹時に飲みなさい、という意味です。これは漢方薬の多くが「食間に服薬」とされているのですが、その理由を知っている医師・薬剤師さんはかなり少数派です。この漢方食間服用の理由は漢方薬の有効成分が効果が出やすくするために、空腹時に飲むことが薦められています。もう一つ重要な理由があります。

漢方薬の副作用をなくすため食間に飲むのです

漢方薬って副作用がない、といまだに信じている方もいるようですが薬ならば何がしかの副作用が伴います。特に漢方薬は「アルカロイド」を成分として含むものが多数ありますので、アルカロイドの毒性を消すために空腹時に飲むことが推奨されているのです。

この「アルカロイド」というのは天然由来なら安心・安全と信じきっている方にとってはショックかもしれませんけど、例えば最悪の麻薬とされている「モルヒネ」(正しく使用すればガンなどの痛みを抑えることが可能で、今では積極的に使用されていますけど)は植物由来のアルカロイドを生成したものです。漢方薬は生薬ですから、当然植物由来のアルカロイドを含んでいるので、この毒性を消すために空腹時に飲む必要があるのです。

空腹時の胃の環境は酸性になっているので、漢方の毒性であるアルカロイドの吸収を悪くします。となると西洋薬より漢方薬の方が飲むタイミングに気をつけないといけない、ということになります。

食間っていっても食事中に飲むのは⋯

医療関係者あるあるの話があります。

ある患者さんに「食間に服用」を指示したところ、その患者さんは食間と食事の間中と解釈して「先生、この薬って食事中に飲まないといけないですか?ご飯と一緒に食べると不味くて不味くて」という話です。

食間なんて言葉、普通に生活していて使うことはほぼないでしょうし、字面だけみて、食事の間=食事中と勘違いしてしまうのはおかしなことではありません。

このように、医師は当然と思って処方しても、患者さんには当然ではないことって意外に多いことを医療機関関係者は心しておくべきです。例えば超音波で前立腺の大きさを測定する場合「一時間くらい尿を貯めてから来院してくださいね」ということがあります(私の専門は泌尿器科です)。患者さんはいっぱい尿を貯めた方がいいと解釈して、朝起きて排尿するのを我慢して、今にも漏れそうな状態で来院してしまうことを経験したことがあります。その方は朝6時に起床して、当院の診療開始時間である9:30に来院して30分くらいお待ちになったんで、トータルで4時間は尿を我慢したことになります。当院を受診したきっかけが「頻尿」だったので、結果的に我慢すれば我慢できることが確認できて、めでたしめでたしだったの良かったです。万が一、過活動膀胱であった場合、米国だったら「不要な我慢を強制させられ、さらに失禁して精神的に苦痛を味わった」的な理由で訴えらてしまうところでした。

私は聖人君子ではありませんけど、当院の医師に常々「患者さんの理解不足は医師の説明不足」と言っています。患者さんもわからない点はドンドン医療関係者に質問してくださいね。その医師達が横文字の専門用語を言い出したら、多分その医師は患者さんの質問を十分に理解していないし、質問の答えを理解していないという証です(こんなことを書くから同業者に私は嫌われるのですが⋯苦笑)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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