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狂犬病ワクチンって本当に必要なんだろうか⋯人間じゃなくて犬に対してですけど。

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ブログでインフルエンザワクチンの予防接種の必要性を書くと、猛烈な反論がきます。あっち側にいっちゃった医師もワクチン不要論、ワクチン有害説を強く主張しています。

米国のディズニーランドから発生したはしかの大流行も、ある一定方向の考えを持った人の風説に惑わされて結果です。先日から犬に対する狂犬病ワクチンの是非を巡ってTwitter上で炎上が起こっているので、医療関係者として愛犬に狂犬病ワクチンを接種することは意味があるのか?という件に関して考察してみます。

人間のワクチンに反対する声は多いけど狂犬病ワクチンは?

まず、狂犬病ワクチン騒動はこんな流れで発生したようです。

愛犬に義務づけられる狂犬病ワクチンについてのいろいろ

https://www.landerblue.co.jp/19630/

「狂犬病は日本では60年くらい発生していない」という発言から発火したようです。このロジックから狂犬病は日本では発生していないのに、なんで愛犬に対する狂犬病の予防接種は義務付けられているのか?罰則規定まである法律自体が昭和25年に制定され、その時代は野犬がウロウロしているような状況だったのが、野犬自体死語化している現在で果たして、犬に対する狂犬病ワクチンは必要なのかということに対して喧々諤々のツイートがあった状況です。

狂犬病だけじゃなくて、狂猫病もあるんだけど

狂犬病ウイルス自体は感染力が弱くて、万が一手についても石鹸で綺麗に洗えば感染しないものですし、空気中を彷徨うようなウイルスでもありませんので、動物に噛まれなければ感染・発症のリスクは低いものです。しかし、噛まれた部位からウイルスが神経を侵し始めると、脳にまで達して致命傷となる恐ろしい感染症であることは間違いありません。また、人間が感染して発症した場合、致死率は100パーセントなんで(一部奇跡的に生命を維持した症例がいくつかあります)、狂犬病は恐ろしい感染症であることは間違いありません。しかし、愛犬家・行政の努力によって日本国内では1957年以来感染例はありません。海外で衛生管理が行き届いていないネパール・フィリピンで感染して、日本に帰国後死亡した計3症例のみが、近年の日本人の被害です。狂犬病のウイルスは犬だけではなく、猫、コウモリなどにも感染しますので、海外渡航時に注意が必要です(関連エントリー 犬に噛まれた時と猫に噛まれた時に危険なのはどっち、狂犬病と狂猫病?)。

狂犬病を完璧に防ぐには犬・猫だけではなく、コウモリにまで狂犬病ワクチンを接種する必要があります

狂犬病ワクチンが義務付けられているから狂犬病が日本には存在しない、は錯覚じゃないかな?

今回の狂犬病ワクチン不要説を唱えた人に対して「狂犬病ワクチンが義務付けられているんで、日本では狂犬病が60年近く発生していないんだよ❗」という反論があります。でも、この論理って変じゃありませんか?海外から密航してきた犬・猫あるいはコウモリ?がいたとして、その動物たちが狂犬病に感染していたら、当然日本でも狂犬病に感染する人間が出てきてもおかしくありませんよね。

隣国では狂犬病が発生しているんだから、それらが日本に侵入してきたら大変なことになる可能性はありますけど、空を自由に飛び回るコウモリが日本海をはるばる超えて日本にやってくる可能性は限りなく低いんじゃないでしょうか。

万が一、狂犬病の疑いのある動物に噛まれた場合の対処法

狂犬病ワクチンを犬に接種することだけでは、万が一の狂犬病日本上陸は防げません。検疫をすり抜けた犬以外の動物が狂犬病に感染している可能性が否定できないのなら、致死率100パーセントと考えらている狂犬病ワクチン感染から人間を守るには、哺乳類全部にワクチン接種をしなければなりません。

今回の炎上事件は、なんで犬だけ義務付けられているんだ、というごくごく全うな考えをツイートしたことによって、発生して様々な見当違いの意見が殺到するところが、ネットの怖さでもあります。

万が一、狂犬病を疑われる動物に噛まれた場合の人間サイドの対処法はシステム化されています。WHOが定めた狂犬病と思われる動物に噛まれた場合の対策は
◎噛まれた日⋯傷口を綺麗に洗ったあとに、狂犬病ワクチン(もちろん人間用)を打ち、ガンマグロブリンも注射する
◎噛まれた三日後⋯二回目の狂犬病ワクチンを接種
◎一週間後⋯三回目の狂犬病ワクチンを接種する
◎二週間後⋯4回目の狂犬病ワクチンを接種する
◎四週間後⋯5回目の狂犬病ワクチンを接種する
となっています。できれば破傷風トキソイドも噛まれた日に接種することも推奨されています。しかし、狂犬病自体日本では発生していないために、狂犬病用のガンマグロブリンを常備している医療機関は稀ですし、症例の経験もないので狂犬病に感染しないための注意、あるいは事前の予防策が必要となります。

狂犬病流行地帯に行く場合も、3回狂犬病ワクチンを打つことによって感染のリスクを減らすことが可能になっています。

愛犬家が狂犬病ワクチンを嫌う理由

犬に対する狂犬病ワクチンはもちろん薬ですから、副作用が気になります。狂犬病ワクチンに関する報告イヌにおける副作用について海外のレポートがあります。

2008 REPORT ON RABIES VACCINE ADVERSE REACTIONS IN DOGS

結構いい調子で副作用が発現していますから、研究熱心な愛犬家の方が狂犬病ワクチンって本当にこんなリスクを犯してまで、必要なんだろうか、本気で狂犬病を天然痘のように地球上から無くしたいなら、野犬がウロウロしていた時代ならいざ知らず、ほとんど室内で飼われていることが多い、犬だけにワクチンを義務つけるのは意味ないんじゃないの、という意見は全うなものだと考えます。

余計な話かもしれませんけど、私は愛犬家でも愛猫家でもありませんし、もちろん愛コウモリ家でもありません。

犬に噛まれた時と猫に噛まれた時に危険なのはどっち、狂犬病と狂猫病?

犬に噛まれた時と猫に噛まれた時に危険なのはどっち、狂犬病と狂猫病?

医学が進歩しても、狂犬病は致死率100%の恐ろしい病気です。日本国内においては犬に噛まれたことで狂犬病は発生していませんが、狂犬病ではなくても、犬に噛まれたらどんなリスクがあるのか知っておく必要があります。また猫に噛まれ際のリスクも把握しておきましょう。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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