NMRパイプテクターの原理を応用した謎の「血液還元装置」を買ったエステサロン・鍼灸院の方、その後のご様子はいかがでしょうか?

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配管のサビを防ぐと称するNMRパイプテクターという商品があります。科学の専門家から、「効果があるはずない」と認定されているものです。非科学的な理論のNMRパイプテクターを今度は医療機器として販売しようとされていました。論文で効果が証明されているとメーカーは必死に述べていますが、そも論文は論文と呼べるような内容でなかったことをお伝えします。

NMRパイプテクターの原理で血液還元ができる???

水中の自由電子(水和電子)を利用して、赤錆を黒錆代えて赤水を解消するNMRパイプテクターという商品があります。マンションの大規模修繕の時に採用されることがあるそうですが、このサビを解消する効果関して専門家から疑義が出ています。

ご興味のある方は「NMRパイプテクター」で検索してみてくださいね。疑義を表明した記事の削除とかサイトが見られないような状況が続いています。

ヘンテコなNMRパイプテクター理論を持ち出して医学に役立てようとの意気込みからこんな商品が販売されている、あるいは販売されていたようです。

それを某ビジネス紙がこんな感じで取り上げています。

画像

https://www.innovations-i.com/focus/56.html

この記事によって具体的な商品を画像で確認できましたので、先日投稿したブログをパワーアップできるかと思います。

NMRパイプテクター騒動、関連医療機器を検証してみました。

NMRパイプテクター騒動、関連医療機器を検証してみました。

大学等の研究機関の研究が非科学的な原理のヘンテコな商材の理論として都合よく使われてしまうことがあります。人間は権威に弱いです、大学で研究されて論文になっていたとしても、効果が実証されたことにはなりません。水道管の錆を防ぐNMRパイプテクターという商品がまさに該当します。

結論的には

こんな血液還元装置が医学的に何らかの効果があるわけないじゃん❗

ってことになります。

記事を参考にしながら、どなたでも私と同じような感想が得られるような検証を行なっていきますね。

トンデモ医療機器をエステや鍼灸院に先行販売した⁉

この記事によるとこのNMRパイプテクターの原理を応用した副作用の無い特殊な電磁波を指に照射して、血液中の酸化を抑制するとのNOMOA(ノモア)。記事中にこんな記載があります。

マウスを使った動物実験や人体での実証試験で、血行改善や睡眠誘導の効果が確認されていることから、エステサロン、鍼灸院などを通じて希望者への先行販売を始めた。

本当に医学的な効果が認められたのであれば、エステでこの装置を使用して病気を治療したら、医師法違反で即アウト❗です。

しかし、買っちまった、あるいは売っちまった方々はご安心くださいませ。

この血液還元装置(何じゃこりゃ)はどう考えても医学的効果は期待できません。

治療効果があるわけないじゃん的医療機器風グッズであるので、多分医師法違反には抵触しないかも(ヤッベー、と思ったエステ方面の方は法律の専門家にご相談くださいね)。

鍼灸院の方も注意が必要です。「あなたはがんです、治療にこれを使ってね」と言ったか、あるいは販売したら当然速攻でアウトですが(診断は医師だけができます)、血液還元作用がある治療機だよ、と言って治療に使用した場合は多分医師法等には抵触しないと思われます(厄介なセールストークをしちゃった方は法律の専門家にご相談くださいね)。

NMRパイプテクターの原理を応用した医療機器っぽいこのグッズは本当に効果があるのか?

ここからそろそろ本題に入ります。排水管の赤錆防止効果があるとされているNMRパイプテクター、この原理を応用した医療機器ってあり得るのでしょうか?記事では

実証試験では、9人の健康な被験者がノモアの穴に人差し指を挿入し、10分間安静に保ち照射した。照射前後の血液を採血し、生体が酸化的障害を起こす原因となる酸化ストレス値を調べた。照射後の9人全員の血液は酸化ストレス値が低下しており、血液中での酸化抑制効果を実証

と書かれています。

さらに

マウスを使った動物実験や人体での実証試験で、血行改善や睡眠誘導の効果が確認されている

とも。

最終的には医療機器認定の取得を目指しているようですが、残念ながら私が調べた限りは医療機器の認定は現時点で取得できていません。

そりゃそうでしょうよ、NMRパイプテクターの原理を応用した治療機器は実証実験になってないもん。

効果があるわけないんだから、当然副作用も無くて良かったね的な医療機器風グッズです。

そもそも血液還元ってどんなことなんでしょうか?

「CiNii」という医学誌や論文や本を検索するサイトがあります(https://ci.nii.ac.jp/)。ここに「血液還元」とのキーワードを入れて検索してみると38本の論文が表示されます。

画像

新しい論文で1969年、半分近くの論文が何と戦前に書かれたものなんです(あっ、若い人向けに 日本は1945年までに外国、それも米国と戦争をしていたんだよ)。

私が「血液還元」という用語を医学専門誌で見た記憶がないのも当然だったようですね。

ヨイショ的な記事に大きなヒントが記載されていました。

酸化ストレスの蓄積は、老化やガン動脈硬化、高血圧、糖尿病などの疾病を引き起こす原因の1つとされている。

血液還元って、酸化した血液をアルカリ性かなんか戻す、還元するって意味なんでしょうね(アルカリ性が体に良いとの盲信故)、と大人の解釈をひとまずここではしておきます。

正確には酸化したものを戻すのは還元剤です(先ほど指摘されて大急ぎで追記)。

実証試験で血液中での酸化抑制効果はぜんぜん確認できていないじゃん❗

実証実験というのは前掲の私のブログでお伝えした「Yubi-MR による特殊電磁波の指への照射と帯電した水からの電子の作用による血中の酸化ストレスの減少効果」だと判断できます。

9人の被験者に指先に装着した医療機器風グッズを使用してもらい使用前後の血液中の酸化ストレスを測定したらしいです。

指先に流れる血液、それもたった10分間で何らかの変化が現れるとは信じがたい結果になっています。

せめて比較試験、できればダブルブラインドでの検証をお願いしたいと思います。

さらにこの論文風記事はマウスを使った実験から、眠気を増幅させ鎮静効果がある、とまで書いています。たった、二匹のマウスに協力してもらった実験ですぜ。

そのマウスたちは実験前から眠かった可能性があるとか思わなかったのでしょうかねえ。

紹介記事にある

マウスを使った動物実験や人体での実証試験で、血行改善や睡眠誘導の効果が確認されている

も、この論文風のものを根拠としていると判断できます。

この血液還元装置(?)は酸化ストレスを解消するんでしょ?しかし、なぜか論文にはわざわざ、血液中の酸化ストレスの蓄積は眠気を生じさせるとの引用文献があることを記載、マウスは酸化ストレスで眠くなるの、酸化ストレスを改善したら当然元気にはしゃぎ回るんじゃないの、と誰がみても矛盾するお話になっています。

こんなの見つけましたけど、論文だとは思えません

以前からこんなことを皆さんにお伝えしてきています。

論文がある、学会誌に掲載された、学会で発表された、と言って効果が証明されたことにならない。

念のためにNMRパイプテクターやその原理を応用したものが論文になっていないかを、再度確認したらこんな結果が得られました。

画像

検索に使用した「J-GLOBAL」は国立研究開発法人科学技術振興機構(JST)が主宰しているプロっぽい検索サービスです。

だからと言って、NMRパイプテクターやその原理を応用した医療機器風のグッズの効果が証明されたことにはなりません。

検索結果を慎重にチェックすると、資料種別分類が「会議録(C)」となっているではないですか❗

この文献の詳細が知りたかったので、G-Searchというそれこそプロしか使わないであろう有料サービスに請求したのですが、残念ながら一次ソースというか、元の文献をゲットすることができませんでした。

さらに調査を進め(私、やることシツコイけど、人柄はさっぱりしているよ)、資料と書かれている「東北止血・血栓研究会会誌 (Tohoku Journal of Thrombosis and Hemostasis) 」がどっかにないか捜索しました。

私の母校である、横浜市立大学と山形大学にこの研究会の会誌があることを突き止めましたが、残念ながら母校の図書館や資料室に発行年の2012年06月のものは蔵書にありません(古いものだからと思います)。

もしも会議録ではなく、しっかりした論文であった場合は陳謝いたします。

私が言いたいことは、この研究者を個人攻撃することではありません。彼らの経歴を晒すような気持ちも一切ありません。研究費が乏しいために企業のバックアップを無防備に利用すると、せっかくの研究であってもヘンテコな利用をされてしまう可能性に気をつけていだだきたいのです。

さらに、学会で発表、論文が学会誌に掲載された、特許取得との魅惑的な文言があったとしても、その効果効能が実証されたことにはならないことを皆さんに知っていただきたいのです。

患者さんやお客さんのために、との善意からヘンテコなグッズ、下手すりゃ医師法等に抵触する可能性も無きにしも非ずを購入・導入あるいは販売してしまったエステ関係者、鍼灸院の方もぜひぜひ気をつけてくださいね。

このNMRパイプテクターの人体による何らかの効果・効能に関しては、論文を読んでも製作会社のサイトを読んでもメカニズム自体が意味不明なので、トンデモ認定しても問題ないといたします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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