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文春砲「受けてはいけない検診・検査 前立腺がん」編は間違いだよ❗

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週刊文春がメチャクチャな内容の週刊現代の医療批判記事にインスパイアされたのか「受けてはいけない検診・検査」シリーズがあります。タイトルは「受けてはいけない検診・検査」サブタイトルとして「『がん検診』が『がん患者』を作る」(2016年10月13日号)、これは明らかに患者さんに誤解されるように、構成されたダメ記事です。内容的には前立腺がんの診断に用いられるPSA (前立腺特異抗原)と呼ばれる腫瘍マーカーの普及によって「過剰診断」「過剰治療」「過剰手術」が行われている、との内容です。

文春砲って、本当に正確なのか?医学分野はアヤシゲだぞ❗

このグラフを元に話を進めています。

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国立がん研究センター

文春の記事では前立腺がんと診断される人は急上昇しているのに、死亡者数は急上昇していない❗と大騒ぎしています。前立腺がんと診断された人(前立腺がん罹患者数)と死亡者数の差がこんなにできるのは、常識的に考えにくい❗とまで書かれていますけど、常識的に考えると常識なんですけど⋯。

国立がん研究センターがん対策情報センター長の若尾文彦医師は「PSA検診の普及によって前立腺がんの早期発見が増えた」と答えを述べているのに、この常識的な解釈から恣意的な記事が生み出されたのか不思議でなりません。

PSAという検査方法が普及したために、早期に前立腺がんが発見されることによって、死亡者は急上昇していない、マル、終わり、以上

これ以下でもこれ以上でもないんじゃないの?ちなみにこの若尾医師は大学の同級生です(若尾くんもこんな使われ方して、納得していないのではないかな、私と違って温厚だから)。

PSA検査と集団的な前立腺がん検診を同様に扱っては間違えるに決まっているぞ❗

明らかな文春砲の誤爆をわかりやすく説明します。全くがんの心配をしていない、症状と呼べるものがない人を対象に、隠れているがんを見つけ出すのが「がん検診」。症状を訴えているので調べる手段が「検査」です。今回の文春のタイトルは「受けてはいけない検診・検査」となっていますので、PSA検査も受けてはいけない検査と大きな誤解を招きます。

前立腺がんは症状の出にくい、緩慢に進行するがんです。国立がん研究センターのデータは1975年から2012年に渡る前立腺がんに対してのものですが、PSAの精製が成功したのが1979年であり、FDAがPSA検査キットを承認したのが1986年。つまり、それ以前のデータは若尾医師が述べているように、早期発見が増えたから、死亡者数との開きができたのです。

週刊文春の記事では「見つけないでいいがんを見つけてしまうPSA検査は受けてはいけない検査」ってことになっています。過剰診断が問題になるのは「がん検診」であって、通常の診療で使用されるPSA検査によって前立腺がんが早期発見され、急速な進歩を遂げている治療によって死亡者数は急上昇しないですんでいることに間違いはありません。

米国でも過剰診断が問題に⋯そりゃ古い検診のデータだろうよ❗

米国で過剰診断が問題になっているのは事実です。しかし、それは検診(行政が行う対策型検診)によって、死亡原因に結びつかない前立腺がんを発見して、治療した⋯治療しなかった人を治療した人で大差はなかったとネット上に散見する情報があります。でも、これってメチャ古いデータであり、MRIなどの検査方法の普及、改良された治療方法、新しい治療方法が行われている現時点の前立腺がん対策と比較すること自体おかしいのです。だって、米国予防医学作業部会 (USPSTF) が2012年に「前立腺がん検診は意味がないよ」と勧告した時点でのデータは1989年から2002年の間に得られたものなんですから⋯。

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ホワイトハウスのサイトから❗

付け加えますと、USPSTFがPSA検診が有益でないと指摘された、オバマ政権はメディケアでのPSAスクリーニングは補助していますし、今現在もしっかりと前立腺がんに対するキャンペーンを行なっています(笑)。

つまり、PSA検査は有用であり、放射線治療の急速な進歩などによって、前立腺がんは死亡率を減少させることが可能な病気なのです。

前立腺がんと診断されても、積極的な治療をしない「監視療法」の普及

PSAが高値であるから、即前立腺がんと診断されるわけではありません。MRI等の精査を行った後に、怪しげな影があったらそこを前立腺生検という方法で狙い撃ちしてがん細胞を取り出します。さらに病理検査と言ってがんの悪性度を診断します。

がんと診断されても、悪性度が高くない場合は「監視療法」と言って、定期的にPSA を測定して、急上昇するならば再度精査をして前立腺がんが周囲に広がっていないか、遠隔転移をしていないかを調べるのです。がんの進行が認められてから、初めて治療を開始する方法であり、今では多くの泌尿器科医が採用しています。

一親等内の方が前立腺がんであった場合、罹患率は4から10倍高まります。もしも、父親あるいは兄弟が前立腺がんであった場合、40歳代からのPSA検査が推奨されています。ちなみに当院でも40歳から50歳代で進行した前立腺がんをPSAによって発見して、今では通常の生活を送っている方も多数いらっしゃいます。中でも父親が前立腺がんであったので、PSAを調べて見たところ100近い高値であって、精査によって脳転移が発見された方もいます。

PSAの行政によるがん検診が死亡率を下げないなどの記事の書かれていますが、長くなりましたので別の機会にさせていただきます。

そういえば近藤誠先生の記事を多数掲載したのも、月刊文藝春秋でしたね❗文春砲も時々は誤爆することもあるんです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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