【検証】GLP-1は本当に医療ダイエットの特効薬なのか?痩身効果と副作用について

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次から次とダイエット方法が現れてきます。医学的な方法によるダイエット方法、メディカルダイエットの一つとして、GLP-1と呼ばれる薬を使ったものがあります。

GLP-1のダイエット効果について安全面と適応に疑問がありましたが、ここ数年でGLP-1に関する臨床例が増えたことで副作用やダイエット効果に関するデータが蓄積されてきましたので医師の視点で整理してみます。

2020年中にGLP-1の経口薬が販売される予定です。

GLP-1のダイエット効果に対して、安全面と適応に疑問があったんですけど⋯

様々なダイエット方法が出回っています。流行もありますし、昔流行った方法の焼き直しもあります。ファッションと似ています。

いろいろな方法があるということは、決定的なダイエット方法がまだ無い❗とも解釈できます。

グルカゴン様ペプチド-1(英語でGlucagon-like peptide-1、略してGLP-1)は本来は糖尿病治療薬のひとつです。ですが、GLP-1は肥満治療、つまりダイエット薬として処方されています。もちろん自由診療です。

GLP-1受容体作動薬のビクトーザ®(リラグルチド)

「ビクトーザ」との商品名で知られているGLP-1注射薬
ビクトーザの医薬品情報
一般名リラグルチド(遺伝子組換え)
欧文一般名Liraglutide (Genetical Recombination)
製剤名リラグルチド(遺伝子組換え)
薬効分類名ヒトGLP-1アナログ注射液
薬効分類番号2499

本来は糖尿病の治療に使われるピクトーザが、なぜダイエット薬としても自由診療クリニックで処方されているのか?その副作用の面と注射薬であったために、6年ほど前にこんなブログを書きました。

糖尿病の薬が肥満に効果的、でも危ないから名前はナイショ❗

糖尿病の薬が肥満に効果的、でも危ないから名前はナイショ❗

糖尿病の薬が本来の目的とは別に肥満改善に非常に効果的であることが知られています。ですが本来の目的でも副作用で死亡するケースもあるのでダイエット目的での使用は当然もっと危険です。よってダイエット薬として承認されることはないでしょう。肥満治療薬「オブリーン」は未発売のまま2018年開発・販売契約終了してしまいました。

GLP-1注射ダイエットが多くの美容クリニックで導入され、臨床例が増えました。気になる副作用やダイエット効果に関するデータが蓄積されてきましたので、自分の知識をブラッシュアップする意味もこめて、GLP−1はダイエット薬として使えるのか?について整理してみます。

GLP-1が経口薬として今年中に登場する可能性が大

GLP-1「ビクトーザ」は注射薬であることをお伝えしましたが、このダイエット効果があるGLP-1は近いうちに経口薬として日本でも販売される模様です。

一般名は「セマグルチド」、商品名については未定の様子ですが海外では「Rybelsus」(リベルサスと読むのか、ライベルサスと読むのかなあ)とネーミングされているようです。日本だけではなく経口セマグルチドとして米国やEUでも承認の申請を行っています。

経口セマグルチドを2型糖尿病治療薬として製造販売承認申請

ノボノルディスクファーマ 報道資料「経口セマグルチドを2型糖尿病治療薬として製造販売承認申請」

そしてこの世界初の経口GLP-1薬「セマグルチド」が本年2020年中に発売が見込まれています。

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https://answers.ten-navi.com/pharmanews/17556/より

もちろん経口GLP-1の適用疾患は2型糖尿病ですが、ダイエット効果を期待して適用外処方する医療機関が出てくることが大いに予想されます。

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https://www.pharmaceutical-technology.com/news/fda-semaglutide-rybelsus-diabetes/より

海外でも経口のGLP-1は話題になっています(あくまで糖尿病の治療薬として米国ではFDAが承認しています)。

気になる経口GLP-1の「ダイエット」効果について

医学専門誌であるランセットにこのような論文が掲載されています。

Efficacy and safety of semaglutide compared with liraglutide and placebo for weight loss in patients with obesity: a randomised, double-blind, placebo and active controlled, dose-ranging, phase 2 trial

「肥満患者の体重減少に対するリラグルチドおよびプラセボと比較したセマグルチドの有効性と安全性:無作為化、二重盲検、プラセボおよび能動制御、用量範囲、フェーズ2試験」

https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS01406736 (18) 317732/fulltext

論文によれば二重盲検された信頼度が高い研究であり

セマグルチドを肥満に効果があるリラグルチドと偽薬を使用して、肥満に関する効果を検証した

対象はBMI30を18歳以上の減量に失敗した糖尿病ではない957人

5パーセント以上の体重減少が確認されて人は偽薬だと23パーセント、セマグルチドは用量によって違いがあったが54パーセントから83パーセントであり、0.1mg以上のセマグルチドを服用した人は偽薬を服用した人と比較して有意差が明らかだった。

このような結果になっています。

BMIが30以上となるとかなりの肥満であり、体重の減少も1年間服用して5パーセント程度であることは気になるといえば気になります。また、プラセボであってもそれなりに体重減少が認められている点も重要なポイントの1つだと思われます。

セマグルチドの注射薬である「オゼンピック」に関しては、BMIが25以上の糖尿病患者さんに対しての研究では「大きな体重減少効果」があったと、プレスリリースが出ています。

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プレスリリース(https://www.novonordisk.co.jp/content/Japan/AFFILIATE/www-novonordisk-co-jp/Extweb/news/2018/06/28/18-17.pdf)より

これも注意が必要です。対象となった患者さんは2型糖尿病ですし、日本でも効果・効能の対象になるのは2型糖尿病です。

結論として経口GLP-1セマグルチドは糖尿病ではない人に対しても安全に体重減少効果を示したが、論文ベースとして信頼度の高い資料ではBMIが30以上という条件がついていて、注射薬であるオゼンピックのように軽度肥満と考えられるBMI25以上の人に対する効果は私が探した限りでは見つかりませんでした。

書籍「今日の治療薬2020」におけるオゼンピックのページ

2020年「今日の治療薬」でも承認はされていても薬価の記載がないオゼンピックです。

注意

セマグルチの商品名は「オゼンピック」であり、リラグルチドの商品名は「ビクトーザ」です。なお、不思議なことに「オゼンピック」は複雑な事情があって保険薬として薬価が決まらないために薬価申請取り下げをノボノルディスクファーマ社はしています。

副作用で注意が特に必要なのは「ケトアシドーシス」糖質制限と組み合わせると危険

厚生労働省が承認したと言っても適応外使用に関しては健康保険は使えませんし、万が一の副作用が出た場合の医薬品副作用被害救済制度による給付はあくまで「医薬品等を適正に使用したにも かかわらず発生した副作用」ですから注意が必要です。

セマグルチドの気になる副作用

気になる副作用としてはセマグルチドは以下のようなものが考えられます(注射薬であるビクトーザの副作用を参考にしました)。

便秘と悪心

便秘の副作用が出てしまうと、お腹スッキリダイエットサプリ等のお世話になりがちですが、サプリメントとの相互作用は不明ですから注意してくださいね。悪心とは腹部がムカムカすることですから食欲が落ちるのでダイエット効果を期待する場合は有利かも。

食欲減退

1から5パーセント以下で現れる副作用です。ダイエット目的で使用した場合、この副作用はかなりの効果を発揮することは間違いありません。

低血糖

作用機序というか、そもそもの効果・効能ですから。

ケトアシドーシス

厳重に注意するべき副作用は「ケトアシドーシス」です。ケトアシドーシスは脂肪の分解によって生じたケトン体が異常に増加することによって起こる、生命を左右する重篤な症状です。糖尿病の方がGLP-1であるビクトーザを使用中に糖尿病性ケトアシドーシスを発症して、残念ながら死亡してしまった症例が日本でも報告されています。

薬事日報の2010年10月14日によれば

6月11日から今月7日までに、同剤投与症例全体で、ケトアシドーシスが4例(うち2例死亡)、高血糖が16例発現していたことが判明。

https://www.yakuji.co.jp/entry20845.html

とのことです。

これはあくまでインスリン注射によって糖尿病を治療していた人がGLP-1に薬を変更したことによって起きたものと解釈されていますが、糖質制限によるダイエット、ケトジェニックダイエットなどを併用している人にセマグルチドなどのGLP-1を投与することは避けるべきだと思います。

今後、経口という抵抗感の少ない糖尿病治療薬としてセマグルチドが日本でも使用されるようになります。

ただしダイエット効果の増強を狙って他のサプリを併用したり、食事制限をしてしまっている人への安易な処方、それも適用外処方にはくれぐれも注意が必要です。

2020年中にGLP-1の経口薬が販売される予定です

当院では全身のダイエットに関しては力をいれていませんでした。どちらかというと部分痩せを狙った治療をHIFUや体外衝撃やRFといった医療機器を使用して行ってきました(もちろん一般診療ではなく、全額自由診療の美容部門でね)。

以前からGLP-1によるダイエット効果を希望される患者さんが多数いらっしゃいましたが、私の判断で採用してきませんでした。

今後、五本木クリニックでGLP-1の取り扱いは?

2020年中にGLP-1が経口薬として日本でも承認されることを前提として、さらなる資料・論文を収集しながら、美容担当医とそれらを検証して、経口GLP-1を使ったダイエットの採用を決定しようと慎重です。

すでに注射薬であるGLP-1を使ったダイエットを大体的に広告しているクリニックも多数見受けらえますが、当院は本年も有料広告は一切致しませんので、経口GLP-1を使用したダイエットを開始しても残念ながらお知らせできるのは既存の患者さんのみとなります。

まあ、わざわざレッドオーシャンであるGLP-1を使った医療ダイエットに飛び込む必要性も無いけどね。

GLP-1を試した私の体験レポートです。

【メディカルダイエット】痩せやすい体質に変える+HIFUを使った部分痩せの効果は?

【メディカルダイエット】痩せやすい体質に変える+HIFUを使った部分痩せの効果は?

メディカルダイエットを医師が自ら実践した体験レポート。痩せやすい体質に変える+HIFUを使った部分痩せの効果を検証します。本当に痩せやすい体質になるのか怪しいGLP-1メディカルダイエットについても解説します。※GLP-1は糖尿病の薬でダイエットの薬ではありません。ダイエット目的での服用は大変危険です。

効果ありました(※個人の感想だけどね)。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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