ヒトは一時間に23回顔を触るから、マスクはウイルス感染を防ぐ場合もあるかも?

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感染予防のためにマスク着用が常識というかマナーになっています。

そもそも医師が考える通常のマスク着用の意義は自分が感染している時に他人に感染させない効果です。

マスクをしているとついつい無意識に顔に手が行くことを防ぐ可能性もないわけではありません。人は無意識に顔を一時間あたり23回も触れている、との研究論文が存在します。

新型コロナ感染予防対策法として、「顔をいじらない」効果はマスクに期待できるのですけど、マスク自体を触ってしまうと逆に感染リスクが高まるような気もします。マスクの効果について、考えてみました。

ウイルス感染はマスクでは防げない、が医学的常識だけど、ひょっとして防げるかも?

ウイルスの感染予防にマスクを着用することが有効であるか、無効であるかの議論があります。私はマスクはウイルスに感染した人が第三者に感染を拡大させない予防効果はある、と考えています。

多くの人がマスクを着用するのは、自分がウイルスに感染しない効果を求めていると思われます。しかし、残念ながらマスクをしている人への感染を防ぐ効果はあまり期待できない、との判断が医師の間では一般的です。

「イオンの接客時マスク着用禁止」騒動⋯そもそもマスクは風邪やインフルエンザに効果あるの?

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非難轟々のイオンですが、医学的にはイオンを擁護できます。そもそもマスクは風邪やインフルエンザの予防効果は医学論文上では明確になっていません。もちろん体調が悪ければ休める職場環境作りが優先されます。

このブログで引用した「Use of surgical face masks to reduce the incidence of the common cold among health care workers in Japan: a randomized controlled trial.」(PMID:19216002)によれば、マスク着用をすることによって、風邪の予防効果は認められないことが判明しています。

でもねえ、違った考え方ができる論文を見つけてしまいました。

人は無意識のうちに、一時間に23回も顔に触れてしまいます。

「Face touching: a frequent habit that has implications for hand hygiene.」(PMID: 25637115)によれば、平均して一時間に23回も、人は自分の顔に触れていることがわかりました。

ウイルスの多くが病気を引き起こす経路は飛沫感染であり、接触感染です。この論文の結果から、マスクをすればひょっとして、ウイルスが手指についても口や鼻の粘膜からの感染を防げる可能性も出て来ちゃいました。

この論文によると

  • 26人の医学生を対象とした。
  • 28人は1時間に23回、顔に触れていた。
  • 顔に触れたうち、44パーセントは粘膜だった。
  • 粘膜のうち、口が38パーセント、鼻が31パーセント、目が6パーセントだった。

となると、万が一、ウイルスが手に付着してても、マスクをしていれば口と鼻からの感染を防げる可能性が無いわけじゃないかもしれません。

やっぱりダメかも、マスクのウイルス感染予防効果

今、ヘンテコな感染症が日本中で話題になっています。中国から日本に旅行に来た人がドラッグストアでてんこ盛りにマスクを購入する姿もメディアは取り上げています。

一般で使用されるマスクの場合、マスクの素材や顔との隙間を通して、ウイルスは侵入可能である点にご注意ください。

人間は無意識に一時間に23回も顔に触れてしまうことが確実なことであるなら、身の回りに飛び散っているウイルスが手指に付着して、その手や指を口は鼻に触れることを防ぐ効果はそれなりに期待できます。

しかし、マスクは顔全体を覆うわけでは無いですよね。顔に触れた総計は2346回、そのうちマスクで鼻と口からの感染を防げたとしても、目からの273回は防げません。まあ、目からウイルスに感染したとしても、ウイルスが風邪等を引き起こす率に関しては調査が必要でしょうけど。

ちなみにアデノウイルスは扁桃腺の腫れが有名ですが、目に感染した場合は流行性角結膜炎を引き起こしますし、膀胱に入ると出血を伴った膀胱炎になりますし、尿道で増殖すると尿道炎になります。

ヘンテコな感染症で北大推計

産経「武漢の患者5000人超か ヘンテコな感染症で北大推計」(https://www.sankeibiz.jp/econome/news/200125/ecb2001251809001-n1.htm)

ウイルスに感染した可能性のある患者さんを診察する医師は全身を防護服を着て、ゴーグルとマスクを着用しています。

医師が使用しているマスクは特殊な構造のものであり、かなり呼吸がしにくく、一般の方が病院以外で長時間使用することは難しいと思います。

防護服を着用して、ゴーグルもかけて目の周辺をガードして、医療用の特殊なマスクを着用すれば、ウイルスから自分を守ることもそれなりに可能です。

中国習指導部、封じ込めへ決意 ヘンテコな感染症拡大

時事通信社「中国習指導部、封じ込めへ決意 ヘンテコな感染症拡大、首相武漢入り―ネットには不満渦巻く』(https://www.jiji.com/jc/article?k=2020012700984&g=int)

この中途半端な装備では自分が感染することは防げませんね。

しかし、普通はこれらの重装備を脱ぐ時に防護服にも、ゴーグルにも、マスクにも手を触れないことは可能でしょうか?

感染拡大を防ぐためにマスク着用は有効、自分を守る効果は微妙

せっかくマスクをしていても、第三者の飛沫で汚染されたマスクに手がいってしまったら、当然その手や指にウイルスは付着します。

人は無意識に顔を一時間に23回も触れてしまいます。これらを考えるとマスクをした場合、手袋をすれば、ウイルスに感染することを防げる可能性が出てきます。

しかし、医療関係者が使用している手袋(最近はラテックスを使用したものは様々な理由で忌避されていますけど)をして外出していたら、変な人だと思われてしまいますよね。

まあ、防護服を着用して外をウロウロした時点でアウト、コンビニに入ったら通報ですね。

着用した手袋を直接に手を触れないで脱ぐ技を医師なら身についているけど、一般の方は汚染された手袋の外側を手指で触っちゃうと思います。

そもそも予防できるウイルスを予防しているの?

必要以上にヘンテコな感染症の恐怖に慄いている人がいるようです。

メディアの報道(できれば医学を学んだ記者が書いた方が良い)、米国のCDC (Centers for Disease Control and Prevention 疾病管理予防センター、今回も的確な判断を独自に公表しています)のような組織の無い日本の公的機関のインフォメーション、そして中国という情報に対して特殊な考え方をしている国の発表内容などが不安を加速している原因かもしれません。

ところで、「ヘンテコな感染症怖い〜❗」と言っている方のうち、何割がインフルエンザの予防接種を受けているのでしょうか?

インフルエンザワクチンの感染予防効果と重症化を防ぐ効果は科学的根拠によって検証済みです。ヘンテコな感染症が今後、どの程度日本で拡散するか、また感染した場合の死亡率も冷静に見守る必要はあります。

でも、インフルエンザで死亡している人は今シーズンでもこれだけいるんですよ。

国立感染症研究所「2019/20シーズン21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告」

国立感染症研究所「2019/20シーズン21大都市インフルエンザ・肺炎死亡報告」(https://www.niid.go.jp/niid/ja/flu-m/2112-idsc/jinsoku/1852-flu-jinsoku-7.html)の「東京」のデータより

「新型コロナ感染症ウイルス、怖ーい」という前に、まずは防げるインフルエンザを予防した方が良いと思うのですけど⋯。

追記 2020年1月30日
「空間除菌」と称しているグッズ(医薬品でも医薬部外品でも無い)に関して書きました。あわせてお読みいただけるとうれしいです。

クレベリンにはエビデンスがあっても、その信頼度には問題あり❗

クレベリンにはエビデンスがあっても、その信頼度には問題あり❗

消費者庁は空間除菌の製品の広告に対して景品表示法違反(優良誤認)に当たると再発防止命令を出しています。空間除菌製品の代表であるクレベリン、ウイルス対策としての使用は、安心感は得られても実際の効果は期待できません。クレベリンは製薬会社が販売していますが雑貨なのです。空間除菌のウソ・本当について医師が解説します。

効果あるわけないのでご注意を。

マスク記事をまとめました

【マスクのまとめ】今でも勘違いされている目的と効果

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新型コロナウイルスの世界的流行によって、マスク着用が社会的義務・マナーになりましたが、マスクの効果に関して勘違いをしている人が多いです。マスクに関する情報をお伝えするために医師として使命感をもって記事を書いてきました。過去のマスクに関するブログを振り返りながら、マスクの効果や注意点を整理するのにお役立てください。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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