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宿便ってなんだろう、本当に万病のもとなんだろうか?医学用語だって混乱

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ネット上の広告で宿便に関する怪しげなものが目に付きます。

宿便は医学用語ではありませんは本当なのか?実はダイエット・健康雑誌的解釈による宿便と医学的解釈による宿便とで違いがあります。腸の壁に長年こびりついた便はそもそも本当に存在するのか?実体験を元に医師が解説します。

宿便は医学用語ではありませんは、間違い?

「どっさりしたい方、スルスルっと出したい方」なんて表現のサプリが氾濫しているようですが、果たして宿便とはなんでしょうか?web上では医師が質問に答える形で「まず、宿便は医学用語ではありません」と始めることが多いのですが、本当でしょうか?

実は「宿便」という言葉を使用した医学論文があります

「宿便性上行結腸穿孔の 1 例」というチャンとした医学誌(日本消化器外科の専門誌)に掲載されているのです。この論文、私と大学の同期生も執筆者に含まれています。こんなことが起きるので一般の方は宿便と便秘の違いとか、残便感・すっきり排便できないとか、宿便をスッキリだしてデトックスなんてものに惑わされてしまうのは当然のことです。

宿便が貯まる腸の位置

まずは宿便とは果たしてどのような状態を示し、一般的にはどのような使い方をされ、さらに故意に誤解を招くような広告手法が取られているのかを整理してみます。

便秘は美容の大敵⁉毒素を出してデトックスのウソとホント

「宿便」というと「デトックス」「毒素」って言葉を連想する人も多いんじゃありませんか?

宿便・便秘・停滞便の違い

「宿便が万病のもと」「宿便をスッキリさせてお肌がツルツル」「宿便を解決して楽にダイエット」なんて感じの表現の広告や健康雑誌を目にしない日は無いくらいです。少しでも気になって調べたことがある人は以下のような情報は持っていると思います。

  1. 宿便が腸のヒダにくっ付いているのは医学的に間違い
  2. 宿便なんて言葉は医学用語にない
  3. 宿便と便秘は異なるもの

まずは宿便とはどのような状態を一般的にはイメージとして持ち、さらにそれを利用してサプリや健康法を売り込んで(?)いるのかを考えていきます。多くの方が参考にするウィキペディアでは宿便を滞留便とも呼ばれる、との表現をしています。さらにダイエット・健康食品関連で呼ぶところの宿便は腸の壁のひだの凹んだところにたまり込んでいる便のことで疑似科学的であり医学的には証明されていない、としています。そうなると日本消化器外科学会の論文はどうなってしまうのでしょうか?

  • 医学的解釈⋯腸にとどまった大便
  • ダイエット・健康雑誌的解釈⋯腸の壁に長年こびりついた大便

と大きく別けて考えると良いです。医学的に腸に留まった大便を停滞便と呼び、一部の医療関係者の間で「宿便」と呼ぶこともある為、医学専門誌にもこの言葉が使われてしまったのです。

一方、ダイエット系で使われる宿便という用語を上記に解釈をした場合は、明らかに間違いです。というかそんな状態はどんな検査方法をとっても確認できませんし、それを診たという医療関係者もありません。

「宿便」という用語が一人歩きをしだしている

ダイエット本や読みやすく興味を引きやすい健康本などの中には「宿便は腸壁にこびりついた便ではなく」とここまでは正しい見解なのですが「体内の毒素が排出されるデトックス効果」の一つである、となんだかわかったようなわかっていないような表現の記述を見受けます。

体内の毒素が排出されるデトックス効果??

これこそ大間違いなんです。腸の壁は新陳代謝によってはがれ落ちてきますし、胆のうを中心とした消化系の粘液が分泌されてきますので、いくら腸を洗浄しようが、絶食しようが大便のようなものは排出されてきます。

「何でお前、そんな見てきたようなこと強気で言えるんだ!」と熱く反論される方、「待ってました、実際に見ました、私」なんです。昨年末人間ドックを受けた際にズルをして、十分に空腹にしない上に下剤も正しく使用しないで大腸内視鏡の検査時に残留した便が発見され大恥を掻いた私が、ポリープ切除に際しては長期間の絶食状態+過量な下剤の使用を行なって自信満々で診察台に横たわったのですが⋯あったのです、腸の中に何かが。担当してくれた医師は「あっ、絶食しても胆汁系がでますからね!」とあっさり、私に告げました。

つまり私の場合、便のように見えたのは胆汁系の排泄物であり、食事関係からのものでは無かったのです。

じゃあ、それがデトックスの効果じゃん、と言われてしまいそうですが⋯

それは絶食によって体内の毒素が排出されたのですよ、今まで体を蝕んでいた毒素が宿便となってでてきたんじゃないですか、なんて言われると「なるほど」と納得してしまいそうです。こうなるとこの絶食状態で出てきた便様のものが、毒素なんだか単純に腸の細胞が新陳代謝によって剥離してきたものや胆汁であるかを見分けないといけません。

多分、疑似科学系、オカルト系、エセ健康医学系の方は私におっしゃるでしょうね「それは現代の科学では解明できないあなたのカルマが出てきたのです」。毒素もカルマも定義がハッキリしないので証明できないし、当然反証もできないのです。

反証することが可能なものを「科学」と呼びますが、証明はもちろんのこと反証もできないものは、科学でもありませんし、医学でもありません。くれぐれもご用心ください。

多分、この話題は今後も続けます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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