熱中症に関して頭に浮かんだこと、諸々。

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通勤途上でナビの音声を聴いていたら、「熱中症は女性の方が多いです❗」って感じの医師の発言が⋯。

あれ、あれっ、私が認識しているものと真逆のご意見が飛び出してきました。まあ、適当な話を垂れ流す某モーニングショーだからねえ、と思いつつ熱中症ってどんな感じになるのかを多くの人に知ってもらいたいと思います。熱中症は下手すりゃ短時間で死に至る病気であることを十分確認してくださいね。

本当かよ、熱中症は女性に多い傾向があります⁉

私が知る限りでは熱中症は疫学的に男性の方が圧倒的に多いはずです。ヘンテコなご意見をお持ちの医師が多数出演している某テレビ朝日のなんちゃらモーニングショーの言うことだから、またもや医学常識に反する逆張りとは認識しつつ、念の為にネットで検索。

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大塚製薬「熱中症になりやすい年齢」より

うわっ、女性のほうが圧倒的に熱中症になって死亡しているじゃん❗

誰だか知らないけど信頼度の低いワイドショーに出ている医師の方が言っていた話が正しいってこと???でも、よくよくグラフを観てみましょう、年齢別の熱中症になった人の内訳をチェックすると、このようになっています。

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高齢者になればなるほど、男性の人口より女性の人口の方が多くなるので、熱中症になるが女性の方が多い、との発言も間違いではないことになりますし、男性の方が多いとの私の認識も間違いでは無いことになります。

熱中症になる条件はこれだよ❗

そもそも人体は皮膚から熱を逃がす機能が備わっています。

ところがどっこい、外の気温が高くなると効率的に熱を逃して体温を下げることが出来なるくなるのです。もうちょっと詳しく説明すると、熱を逃がす手段としては「蒸発」「対流」「熱放射(輻射)」が、あります。蒸発は汗をかく時に生じますし、対流は皮膚の温度と気温の差によって生じますし、熱放射は熱を空気中に放つ状態です。

蒸発して体温を下げる⋯体温が上がると汗が出ますよね、汗が蒸発する時に気化熱が生じて皮膚の温度を下げてくれます。周囲の湿度が高ければ当然の結果として汗は蒸発しにくくなります。つまり多湿の環境だと体温調整機能が上手く働きません。

対流で体温を下げる⋯皮膚の温度が気温より低いと、皮膚から熱が空気中に逃げます。逆に気温が皮膚の温度より高くなると、熱が逃げにくくなります。風があると皮膚から熱が逃げやすくなることは皆さん経験値的に知っていますよね、風が吹いていると寒いのはこれと同じこと。気温が高く風が無ければ当然の結果として皮膚から熱が逃げられなくなります。

熱放射をして体温を下げる⋯実は熱って電磁波でもあるのです。世の中、やたらと電磁波を怖がる人が一定数いるので、熱放射の説明は超簡単にしますね。電磁波が物体にぶち当たることによって熱が生じます。体温より周囲の温度が低れれば身体から熱を放射します(別名冷放射)、以上。

熱中症になる状況としては、気温の上昇・湿度の上昇・強い日差し・締め切った空間・風が弱い、などがあります。個々の状況としては年齢・持病・体調に左右されますし、行動としては過度の運動・労働・十分ではない水分補給などが考えられます。

熱中症になる条件は皆さんは十分把握しているはずなのに、なぜか熱中症になっちゃう人が続出、なんでだろう?

熱中症になる人が続出する原因はこれだ❗

私は個人的には大昔から熱中症が話題にはなっていないと感じています。熱中症が発生する大きな原因の一つとして、単純に気温が上がっているからと考えることもできます。

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https://www.nies.go.jp/kanko/kankyogi/32/04-09.html#kion より

熱中症の発症は明らかに気温と相関関係にあります。

ちなみに1885年の8月の平均気温は24.9度(どうやって記録したのかは、気象庁等に各自お尋ねください)。100年前の1920年は25.7度、30年前の1990年は28.8度、10年前の2010年は29.5度となっています(気象庁 観測開始からの毎月の値「平均気温」より)。

気温が熱中症を招きやすい温度に達しているのだからしかたないじゃん、とも言えるのです(地球温暖化等に関しては触れないよ)。

熱中症の症状、どの段階が危ないか?

診療中、ここ数週間はクリニックの前の通りをしっきりなしに救急車が通過しています。2020年に世界を襲っている感染症の疑いで救急車を利用している人は少ないと思いたいですし、交通事故が急激に増加しているわけでも無さそうなので、多くは熱中症なんじゃないかな、と考えています。

熱中症の場合、死に至ることがメディアで喧伝している為か、気軽に救急車を呼んでしまう傾向が無いわけじゃないようにも、ほんのちょっぴり感じている今日このごろです。

熱中症に関しては以前このようなブログを書いて抗議のメールを頂いた経験があります。

熱中症に注意❗脱水の応急処置で「点滴お願いします」は大間違いです。

熱中症に注意❗脱水の応急処置で「点滴お願いします」は大間違いです。

熱中症による脱水症状で死亡する人が多数出ますが、脱水とヒトコトで片付けるのは危険です。脱水にも種類があるのです。点滴が一番効くと信じている人も多いので、きちんと医学的に正確な情報を解説しておきます。脱水の重症度には見分け方があるのです。

熱中症に関しては重症度の分類があるので、ご参考にしていただけると。

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大阪労働局 「熱中症の症状と重症度の分類」より

でもさあ、重症度Ⅱ度で判断を間違えると重症度Ⅲに進んじゃう可能性もないわけじゃないし⋯。

熱中症はならないに越したことはありません。夏の暑い日は外出を控えて、エアコンが十分効いた環境に身をおいて、冷たいものを補給するのが一番ってことになりそうです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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