【カテキン】昔から「お茶で薬を飲んじゃダメ‼」と言われていますが、ある薬の場合は効果を弱めることが明らかになっています。

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緑茶に含まれているカラダに良い成分の代表格「カテキン」、このカテキンがある病気の薬の効果を弱めてしまう可能性があります。

そうなると、以前「ヘルシア緑茶」の副作用を必要以上に取り上げたトンデモさんたちがいましたが、トンデモさんたちの主張が正しかったのでしょうか?

そもそもカテキンとは?

カテキン (catechin) とはフラボノイド(flavonoid)の一種類であり、フラボノイドはポリフェノール(polyphenol)の一種類。一般的には植物性の「カラダに良さそう」な成分として知られていますよね。

自然派さんは植物性が大好き、自然派さんは化学物質が大嫌い、でもポリフェノールの仲間であるフラボノイドの健康に良さそうな成分の代表であるカテキンもしっかり化学式「C15H14O6 」で表すことができる化学物質であることを付け加えておきます。

緑茶のカラダにいい成分であるカテキンに関しては、トンデモさんたちが一時期ワイワイと騒いでいたことがありました。

ヘルシアで肝機能障害??カテキンに深刻な副作用は本当にあるの?

ヘルシアで肝機能障害??カテキンに深刻な副作用は本当にあるの?

トクホという不思議な分類に、医師としてはあまり好意を抱いてはいません。トクホの代表とも言える花王の「ヘルシア」によって肝機能障害が引き起こされて、さらにはヘルシア4本でマウスの75パーセントが死亡した!!という記事を見つけて「いくらなんでもそこまでは⋯」と考え、この記事が掲載されたサイトについて検証してみます

自然派系トンデモさんは花王が科学的・化学的にカテキンを抽出して「ヘルシア緑茶」として販売していたことが気に食わなかったのかも知れませんね。

このカテキンはそもそもは緑茶を好む人は緑茶をあまり飲まない人より死亡リスクが低いとの研究結果から注目を集め出し、カテキンを主成分としたサプリメントさえ販売されるような現状において、実はカテキンはある薬の効果を減弱させてしまうのでは、との最新の研究結果が登場しました。

健康に良いと思って緑茶をガブガブ飲むと・・・

昔からおばあちゃんの知恵袋的に、「薬はお茶で飲んじゃダメ」と言われていましたよね。本当に薬はお茶で服用してはいけないのかと素朴な疑問を私は以前から持っていました。

日本人研究者の手による「Effects of single green tea ingestion on pharmacokinetics of nadolol in healthy volunteers」(PMID: 32320490)と「Exposure of fexofenadine, but not pseudoephedrine, is markedly decreased by green tea extract in healthy volunteers」(PMID: 35678032)という医学論文があります。

両論文の筆頭著者であるShingen Misaka氏はこれまでも数々のカテキン絡みの論文を発表してきた若手研究者であり信頼度は高い研究結果であると判断して良いと思います。

前者の論文は、

緑茶のカラダに良いとされてきたカテキンは、降圧剤の効果を弱める!!

であり、後者の論文は

アレルギーの薬は緑茶によって効果が弱まる!!

との結論に至っています。後者の論文の英文のタイトルを日本語に直訳すれば「効果を著しく弱める!!」です。

カテキンで降圧剤の効果が弱まる

前掲「Effects of single green tea ingestion on pharmacokinetics of nadolol in healthy volunteers」より

血圧の薬はお茶で飲んではダメ

Misaka氏の論文のあらましは、血圧関連の研究では

  • 降圧剤「ナドロール」を健康人に水または緑茶で服用してもらった
  • 血中のナドロールの濃度を調べた
  • 緑茶でナドロールを服用すると、ナドロールの濃度が水で服用した場合より大幅に低下していた

とのこと。アレルギー関連の論文のあらましは、

アレルギー薬であるフェキソフェナジン(アレグラの名称で有名)とプソイドエフェドリン(ディレグラ、鼻詰まり薬としてはアレグラより効果的)をお茶で服用した場合の影響を調べた。

結果としては、フェキソフェナジンはお茶で血中濃度が低下した(効果が弱くなる)一方で、プソイドエフェドリンの方は影響が無かった、とのことです。

よくある質問、「お茶で薬を飲んでいいですか?」

日常の診療で薬を処方した時に、よく患者さんに聞かれる質問の一つとして、「お茶で薬を飲んでいいですか?」があります。私は服薬コンプライアンスを重視するために、「ある特殊な薬以外はお茶で服用しても問題ないですよ」と伝えていました。

近年は服薬コンプライアンスとの用語は医者の上から目線的な用語であるために、服薬「アドヒアランス」を使うようになっています。

ところがどっこい、緑茶で薬を服薬すると効果が減弱するとのことが明確になっているじゃないですか・・・かなり冷や汗もので反省しきりです。

さらにところがどっこい、ナドロールという降圧剤は記憶にある限りでは処方した経験が無いし、アレグラに至っては「市販薬で売っているよ」とかわしているのがほとんどであった開業医歴25年の老獪な自分でした。ガンガンとカテキンと薬の関係を研究して論文をお書きになっているMisaka氏、今後は「お茶で飲んでも大丈夫だよ」と言って処方していた薬も何らかの弊害が出る恐れがないわけじゃないです。そうなるとおばあちゃんの知恵袋的に「薬はお茶で飲まないようにしてね」とお伝えした方が良さそうな雲行きです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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