2020年度インフルエンザワクチン接種は前売り券を買わないといけないの?

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2020年、本年も例年通り10月からインフルエンザの予防接種が始まります。新型コロナ感染症の流行とインフルエンザの流行が重なることが危惧されている状況では、インフルエンザワクチンの予防接種の需要が高まることが予想されます。

「インフルエンザワクチンの前売り券販売開始しました!」と告知しているクリニックがあります。ワクチン接種を予約することは理解できても、ワクチン接種の前売り券(予約券購入)に関してはちょっと違和感が。ワクチン接種の前売り券制度の良い点と疑問点について考えてみました。

前売り券販売はワクチン接種を予約してバックレる人防止対策?

当院では高齢者を中心としてインフルエンザワクチン接種を毎シーズン患者さんに推奨しています。私はワクチン接種の時期は早ければ早いほど良い、と考えているために「冬の終わりには効果が無くなっちゃうのでは?」との質問を受けることがあります。

インフルエンザワクチンはいつ打てばいいの?効果の持続期間はどれくらい?

インフルエンザワクチンはいつ打てばいいの?効果の持続期間はどれくらい?

インフルエンザにはワクチンがあり、感染予防や重症化を防ぐ効果があります。早めに病院で予防接種を打ってしまうと流行するシーズン中にワクチンの効果が切れてしまう?何ヶ月持続するのか?いつまでに受けるべき?といった予防接種を受ける最適なタイミング・かかる費用について医師として責任をもって丁寧にお伝えします。

2019ー2020年のシーズンは前半の出だしは好調だったのですが、後半になると他の感染症が話題となったために、これだけデッドストックが出てしまいました。

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限られた医療資源の無駄使いを少なくするための努力はなされるべきだとは考えているのですが、「予約したのにワクチン無いの〜、キーっ」って感じの苦情は避けたいので予約してあった分に関しては期限切れまでは抱え込んでしまいました。

薬問屋さんに毎年ワクチンをオーダーしても供給を調整する目的で実際に入荷するのは小分けであり、昨シーズンも最終的に当院に納入されたのが1月中旬過ぎだったと記憶しています。

恒例行事的にワクチン接種をしている方以外に受験前に念の為2回接種を予定している方、ワクチン接種を突如思い立った方への対応をできるだけ可能にするために、ある程度のデッドストックはしかた無いと考えていたのですが、たんなる予約ではなく、予約券を販売はバックレ防止効果は期待できてもなんとなーく違和感が無いわけじゃないでのです。

以前は余ったワクチンに関しては返品が可能だったと記憶しているのですが、時々ワクチン不足に便乗して買い占め的な動きをする医療機関も出てくるので、ルール上返品は可能であってもお行儀上は避けたほうが良いと私は解釈しています。

助成制度がある高齢者も前売り券を購入する必要があるの?

自治体によって若干の違いはあるようですが、高齢者に限って言えば65歳以上の方にはインフルエンザワクチン接種の受診券が送付されています。この受診券には有効期限があって、目黒区の場合は通常は1月31日までです。受診券があっても自己負担金が発生することはいかがなものか的な疑問があることには今回は触れません。

インフルエンザワクチンの受診券がある高齢者の場合もワクチン接種前売り券購入が必要なの?と素朴な疑問が湧き出てきちゃいます。

地域によってはちっちゃい子供さん向けにインフルエンザワクチン接種の助成を行っているところもありますよね。そのような家庭も前売り券の購入が必要となるのかねえ、とか前売り券を販売しても十分なワクチンの供給がなされなかった場合はどうするだろう、とか様々な理由により接種の機会を失った場合は返金可能なのか、その場合の売上の会計上の処理はどうするのか、などなど面倒な事態発生が頭の中をぐ~るぐる。

ワクチン接種前売り券、そのうちメルカリで販売されちゃうのか?

メルカリの利用方法というか販売されいる商品は私の常識を打ち破るものが多数あり、「いまの若い人は面白いこと考えるねえ」に始まり、「こんなものまで販売しちゃうの」から「これを販売したらマズイだろう」に。今シーズンは他の感染症禍の影響も考慮して、今シーズンはインフルエンザワクチンの増産が決定しています。

「インフルワクチン、最大6356万人分 今冬の供給量」(8月25日 朝日新聞 https://digital.asahi.com/articles/ASN8T471JN8TULBJ006.html)。

でもさあ、マスクにしろ消毒用アルコールにしろ政府は十分に供給できてるとの考えから転売禁止が解除されているけど、私のクリニックではN95は全く入荷する気配は無いし、手指消毒用のアルコールの納入予定はいまだに未定。

十分に供給される予定のインフルエンザワクチンであっても、流行が前倒しになったら間違いなく品薄になると思います。ってことは、現状では規制されていないと思われるのでメルカリでインフルエンザワクチンの前売り券が販売されてしまう可能性も否定はできないのでは?なんてことも心配になってきました。メルカリとかの詳細な利用規定は知らないけどね。

売上減少のクリニックが多発、前売り券販売と関係あるのかな?

2020年はヘンテコなウイルスが世界中に蔓延して、感染を怖れるあまりに医療機関の受診抑制が起きています。予定されいた手術や検査を延ばさざる得ない状況に陥っている医療機関も少なくありません。その結果として深刻な状況になっている医療機関が続出。

新型コロナ感染症患者を受け入れた病院や病棟を閉鎖せざるを得なかった病院では、今年(2020年)4月の医業利益率は二桁のマイナスに陥っていることなどが、5月27日の最終報告では、とりわけ東京都に所在する病院では、今年(2020年)4月の医業利益率がマイナス30%近いことなどが明らかにされました。

https://gemmed.ghc-j.com/?p=33992より

感染症患者さんを受け入れた医療機関以外でも受診抑制は深刻化しています。

「いまだに46.5%で患者減、60%が減少の診療科も」(2020年7月9日 日経メディカル https://medical.nikkeibp.co.jp/leaf/all/report/t344/202007/566334.htmlより

まあ、限られた医療資源の有効利用や院内感染予防の一つとしてワクチン接種の前売り券販売もあり、と大人の解釈をして心を落ち着けて9月1日火曜日の診療を開始しようと思った矢先⋯「院長〜❗●●クリニックの前に前売り券購入の行列が出来てるって患者さんが言っていましたよ。うちも前売り券を発売した方が良いんじゃないですかあ❗」と当院スタッフ。「あのさあ〜、今の時期に行列作ったらソーシャルディスタンス確保出来ないじゃん」と無情にもスタッフの注進を却下してしまう私でした。

当院としては例年通りにワクチン接種の予約券の発行もしませんし、当然前売り券販売はしないよ、受診時に口頭で、あるいは電話で「取っておいてね」でOKとします。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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