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女性の物忘れは銅の摂取量と深い関係が⋯医学論文があっても過信は禁物❗

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「自分は認知症になってしまうのではないか」と中高年の患者さんの多くが心配しています。

認知症の原因・予防法・治療法に関して世界中で研究が行われていても、決定的なものはありません。先日、日本の研究者によって、銅の摂取量が多い女性は物忘れが多いことがわかりました。

「銅」を含む食品が認知症と関連があったとしても、一方でその食品は常識的には健康に良いと考えられていたりします。

健康に良い食品・悪い食品と言われていても、明確な結論が出ているワケでは無いことに注意が必要です。

更年期以降の日本人女性の物忘れは銅の過剰摂取が原因?

東京医科歯科大学の研究者が興味深い論文を発表しました。「Severity of subjective forgetfulness is associated with high dietary intake of copper in Japanese senior women: A cross‐sectional study」とタイトルされた研究論文では、銅の摂取量と物忘れの関係が示されています(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1002/fsn3.1740)。

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認知症の原疾患は多数確認されていて、認知症を進行させる一番の原因は加齢です。当然、加齢を止めることは不可能なので、日常の生活、特に認知症にならない、認知症を予防する食事を気にしている方も多いと思われます。

銅の摂取量が多い中年以降の女性は物忘れが多い❗と言われても「銅を大量に含む食材」あるいは「銅をあまり含まない食材」をすぐに答えられますか?

銅を過剰摂取すると物忘れが多くなるとの論文、ちょっと問題が⋯

東京医科歯科大学のウェブサイトでは今回の論文を次のように紹介しています。

この論文は、日本人更年期女性に多く見られる「物忘れし易い」という症状が、銅の摂取量と関連することを世界で初めて明らかにしたものです。

http://www.joseikenko.com/

実はこんなデータがあります。

平成29年国民健康・栄養調査結果

「厚生労働省 平成29年国民健康・栄養調査結果の概要」より

論文中では40〜54歳と55歳以上に分けて調査した結果として、

55歳以上の女性の銅の摂取量は物忘れと関係がある❗

と伝えていますよね。

でもさあ、厚生労働省の栄養調査によれば、40〜49歳の女性の銅の摂取量は1日あたり1.00ミリグラム、一方で50〜59歳だと1.05ミリグラム、60〜69歳だと1,15グラム、さらに70〜79歳だと1.18グラムとなっているんだよなあ。

女性の場合、高齢になればなるほど元々銅の摂取量が多いじゃん❗

って考え方もできるんじゃないでしょうか?

認知症の症状の一つである物忘れは加齢がリスク因子 → 高齢の女性は銅の摂取量が多い → 銅は高齢の女性にとって認知症のリスク因子である

との考え方はちょっと厳しいように感じちゃいます。

豆って身体に良いはずなのに、物忘れの原因となる銅がたくさん含まれているんだけど⋯

食べ物と病気の関係は一概に、「何々を食べるとこんな病気になる」と言えないのと同じで、「何々を食べるとこの病気の予防になる❗」とも言えないことは、賢明なる私のブログの読者はご存知のはずです。

銅の過剰摂取が物忘れや認知症の原因である、だから銅をデトックスしましょう、「東京医科歯科大学の研究で判明❗」を強調した、いいかげんな健康関連記事がそのうちネット上に登場することが大いに予想されます。

健康食の代表の大豆って意外に銅を多く含んでいますし、銅を多く含む食材として論文中でも「大豆」が記載されています。

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https://www.mame.or.jp/eiyou/eiyou.htmlより

しかし、国立長寿医療研究センターは、豆類を多く食べると認知機能のリスクが低くなる、と東京医科歯科大学の研究論文とは真逆とも言えることを伝えています。

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https://www.ncgg.go.jp/cgss/department/ep/topics/topics_edit24.htmlより

オバサマ達が「お豆の食べすぎって、認知症になっちゃうのよね〜」と会話が弾むグループと「お豆って食べると認知症になりにくいのよね〜」との会話が弾むグループに分断されてしまう可能性があります(まあ、私個人としてはどうでもいいことなんだけど)。

今回取り上げた研究はキッコーマンから研究費が出ていることを明記しています。キッコーマンといえば醤油、醤油の原料に大豆が使われていますのである意味でスポンサーに忖度しない論文である、との判断もできます。

早まるな!「何々を食べると〇〇病になる」「何々を食べると〇〇の予防になる」との話

年々寿命が伸びてくるとともに、重要なのは単に年齢を重ねることではなく、健康である期間をいかに伸ばすか、つまり健康寿命が注目されています。

何々を食べると〇〇病の予防になる❗何々を食べると〇〇病のリスクが高まる❗ってタイトルの健康関連記事をネット上で目にしない日は無いくらい、健康情報それも食材と絡ませたものが日々大量に生み出されています。

しっかりとした研究によって裏付けられた健康情報もあれば、まだまだ議論の余地のある論文をもとにした早まった健康情報もありますし、なーんの裏付けも無いてきとーにネットから拾い集めたトンデモ健康情報も少なくありません。

明らかに健康を害する食品や食材は皆さんが考えているほど多くはありません。また、少量だとめっちゃ身体に悪い化学物質であっても、普通の生活を送っていれば健康に影響するほどの量を摂取するわけがないのに大騒ぎをするトンデモさんもいます。

フードファディズム(food faddism)という言葉があります。ある特定の食べ物が健康や病気に大きく影響するとの考えにとらわれてしまった状態を意味します。私はいろいろな食材をもとにした様々な料理を楽しく食べることが一番良いと常々判断しています⋯ある意味で多種多様の食べ物を摂取することはリスクの分散にもなりますので。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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