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臍帯血移植で停止命令、でも診療はまだ続けている不思議。

更新日:

再生医療と称してがんの治療やエイジングケア治療として赤の他人の「臍帯血」を使用した医療機関11クリニックに対して2017年6月28日に厚生労働省が聞きなれない「緊急停止命令」を発表しました。

禁じ手の「臍帯血移植」で緊急停止命令が出ても、クリニックは診療中??

厚生省「臍帯血移植」で緊急停止命令

多くの人は違法に臍帯血移植を行なったために、営業停止処分になっているんだろうな、と考えているはず。

でもねえ

この緊急停止命令って再生医療として臍帯血を使用することに対して「停止」を命じたもの

であり、つまり

日常の診療活動の停止を意味するわけでは無い⋯現時点で診療は継続されている

ことはご存じ無いかと思われます。

今回、臍帯血移植の違法に行なっていたクリニックの名前が新聞に公表されました。トップに記載されていたクリニックは私のブログで医学的内容の不正確さ、医学知識がある人間が書いたとは思えない医療記事、無断引用、パクリ疑惑を指摘したために、ある健康関連情報サイトに業務妨害、名誉毀損だと内容証明を送って来た医学情報サイトで監修していた医師の経営するクリニックだったのです。

今回緊急停止命令を受けた医師は私が抗議を受けた医療情報サイトで多数の監修記事を掲載していて、

特に水素水関連のニセ医学的な医療情報のヨイショ記事を書いていました!

さらにさらに、先日小さな子供さんを残しながら乳がんで亡くなった有名人も臍帯血移植を無届けで行なっていたクリニックを受診してたとの話も出て来ています(臍帯血の治療を受けたわけでありません)。

私が正確でない医療情報サイトの蔓延に対して行政側のスタンスは「犠牲者・被害者が出ない限り精査は行わない」との話も伝わって来ています。しかし、ひょっとして乳がんとの闘病生活をブログにしていた有名人の方ががんの治療と称して臍帯血移植を行なっていたら大問題です。

代替医療・補完医療とさえ呼べない全くエビデンスのないニセ医学治療を行なっていることによって、がんに対する標準治療を受ける機会を損失していたとしたら、それこそ「犠牲者が出た」ってことになります。

「水素温熱免疫療法」ってなに?

◯◯クリニック式「水素温熱免疫療法(H2アクアサーミア)を世界初に有したクリニックであることを、今回無届けで臍帯血移植を行なった医師はご自分のサイトで強調しています(なぜか現時点ではメインテナンス中と表示されています。http://shuto-clinic.net/suisoonnetumeneki.html)。

独自のネーミングやご自分の名前あるいはクリニック名を治療方法に命名しているだけで、ニセ医学と考えていいと断言する医療関係者もいます。この「水素温熱免疫療法」は簡単にいえば水素風呂に浸かることによって免疫力を高め、エイジングケアやがん治療効果があるとサイト上では強く主張されています。大昔、確かに膀胱がんに対してハイパーサーミアと呼ばれる温熱療法がありましたが、電子レンジと同じ仕組みで膀胱内を高温(確か60度くらいにあげるんだってけなあ)に上げるものであり、患者さんの苦痛の大きさと期待したほどの治療効果がないために現在で行われていません。

膀胱がんに対する温熱治療はもちろん他の化学療法や放射線治療、時には手術を組み合わせたものであり、私が所属していた大学がオピニオンリーダー的な立場であり多くの症例をこなしていたのですが、ハイパーサーミア担当となると暑さに悶絶した患者さんの姿が頭に浮かび前日から嫌な気持ちがしたものでした(今ほど治験等に対する倫理規定は厳しくなかった時代もあったのです)。

このクリニックで「水素温熱免疫療法」を行なった膀胱がん(膀胱癌内視鏡手術を受けたが「外科手術では摘出困難」と診断された)症例として治療前の膀胱内の腫瘍の画像と治療後の画像があるのですが、この膀胱がんの状態はどう見ても膀胱粘膜上にあるT1からT2レベルのものであり、内視鏡によってがんは切除可能です。

そんな症例を標準治療が不可能(外科手術では摘出困難)と表現して、内視鏡の画像を掲載している時点で泌尿器科医であれば直感的に「ニセ医学」と判断できますが、一般の方はどのようにして「水素温熱免疫療法」に関する情報を集めたのでしょうか?多分、クリニックの評判をネットで検索したのではないでしょうか?

ネット上における標準医療を行なっていないこのクリニックの評判・口コミ

ドクターズ・ファイルという医療機関の口コミサイトがあります。このサイトで今回緊急停止命令を受けたクリニックの評判が記載されています(https://doctorsfile.jp/h/36622/k2/)

ある方はこんなことを投稿しています。

乳がんで受診しています。体力的に三大治療を受けられる気がしなかったので、ほかの治療法を探していたのですが、そのなかで首藤クリニックに出会いました。先生がこちらの意志をしっかり確認したうえで、選択肢を提示してくださるスタイルが大変ありがたいです。経済的な面も含めて患者さんの立場に立って選択肢を考えてくださるのも助かります。水素浴をメインにワクチンやサプリメントを組み合わせていますが、とても体調が良いです。

この投稿から手術・化学療法・放射線治療を受けないで、水素風呂・ワクチン・サプリによって乳がんを治療していることが理解できますね。水素風呂はともかく、乳がんに対するワクチン療法というこりゃまたニセ医学と呼ばれてもしかたがないようなヘンテコな治療方法も行なっていたことに驚きました。

さらにこんな投稿もあります。

乳がんを発症してから、自律神経免疫療法を受けていました。去年、がんが10?ほどの大きさにまで大きくなってしまったため、首藤先生に紹介された病院で放射線治療をして、その後、首藤クリニックで水素温熱療法や高濃度ビタミンC点滴、免疫の注射も受けました。その結果、乳がんが縮小され、治ってきました。画像検査でもがんは消えました。

高濃度ビタミンCの点滴ががん治療に効果がある、と今でも喧伝しているクリニックが他にも多数見受けられますが、明らかに治療効果があることを証明したエビデンスは存在しません。

今回臍帯血移植を無届けで行なっていて処分されたクリニックが11あるのですが、届け出ていたとしても、行政は認めることはなかったはずです⋯だって効果があることを示した精査に耐えうる明確にエビデンスを示した論文は存在しませんから。

このような医療機関であっても、診療活動全般に対して業務停止命令が出たわけではなく、再生医療に限り停止命令が出ているのです、このままだと被害者が続出することは大いに予想される問題であり、行政の速やかな判断が待たれます。

おまけ:先日、この「水素温熱免疫療法」の治療実績と称するCTが医師間で話題になりました。

画像

前掲某医療機関サイトより

多くの医療関係者はこのCTをみて「ニセ医学」「インチキ治療」と断定しています。その理由ですが、全く違う位置でスライスした二枚の画像ですから。上の方に写っている大きめの白い箇所は心臓です。左の写真と右の写真とを比較すると心臓の大きさが明らかに違っていることがわかります。つまり、肺の中にある腫瘍が小さく写って見えるCTを右に表記しているだけなのです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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