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漢方薬「ヨクイニン」、イボには予想以上に効果があったけど副作用も出ちゃった。

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イボの治療に漢方薬「ヨクイニン」が保険処方として使われています。私は医師として、作用機序やデータからあまり効果は期待できないと考えていたヨクイニンを実際に自分自身で服用することのよってイボが完治しました。

しかし、ヨクイニンでイボは治ったものの、予想もしなかった副作用が出現してしまいました。

まだまだ謎の多いヨクイニン、その効果と副作用、さらに今後の期待できる可能性のある治療効果などを体験を踏まえてお伝えします。

漢方薬のヨクイニンでイボが治った❗

漢方薬で「ヨクイニン」という薬があります。漢字で書くと、「薏苡仁」、学名だと「coix lacryma-jobi」、英語だと、「Job’s tears seeds 」が使われることが多いようです。

このヨクイニン、昔から美肌効果があるとされているために、シミにも効果があると伝えるCMに対して以前ブログで猛烈な批判というか疑問を呈したことがあります。

私は今年に入って手足に無数のイボ(医学的な正式名称は「ウイルス性疣贅」)ができてしまいました。当院は美容皮膚科を併設しているために各種レーザーを使ってイボの治療を試みましたが、イボの数があまりにも多いために治療は途中で断念。

一般の皮膚科でイボ治療に使用される液体窒素は痛いから嫌だし、裏技的イボ治療方法である本来は医療器具の消毒に使用するグルタラールを塗りたくっても効果無いし、これまた裏技の痛く無いイボ治療とされているトリクロロ酢酸を使っても痛い治療の跡が酷いことになってしまったし⋯それこそ「信じるものは救われる」的にヨクイニンの服用を続けていたら、なんと私の手足のそれこそ星の数程あったイボが消え去ってしまったのです❗

私は雰囲気的に西洋医学至上主義者と思われてしまう傾向がありますが、自分の医学知識を総動員して治療に当たった手足のイボ(もちろん患者さんの病気に対しても経験と知識は総動員しているけどね)がなぜ漢方薬のヨクイニンごときで消えてしまった、つまり完治してしまったの、理屈と文献を引用しながら考えてみます。

ヨクイニンのどの成分がイボ治療に効果があるのか?

私が服用したのは、錠剤になったコタローという製薬会社の「ヨクイニンエキス」です。これは医療機関で処方用に販売されているもので1000錠入り(価格は忘れた)。

画像

このヨクイニンエキス錠は味は不味いし匂いは臭いのに、1回6錠を1日3回の服用が基本というかなりの難行苦行を強いられる点が難点です。

ヨクイニンに含まれるどんな成分がイボ治療に効果を発揮するのか⋯これが明確じゃ無いんだよなあ。

ヨクイニンの医薬品インタビューフォーム(https://www.kotaro.co.jp/iryou/seihin/if/if_tp072.pdf)には薬理効果・作用機序は書かれていないし、臨床成績の詳細も皆無。薬効を確かめる信頼性を高めるダブルブラインド等の比較試験も行われていないようだし、市販後臨床試験に関しても「該当資料なし」ってことになっています。

ヨクイニンがイボに効果がある理由として

  • インターロイキン1の産生増強による抗体産生細胞の増加
  • NK細胞を活性化する
  • 細胞傷害性T細胞を活性化する

などが、文献や論文(http://medical.radionikkei.jp/maruho_hifuka/maruho_hifuka_pdf/maruho_hifuka-180830.pdf等)には書かれているけど、下手すりゃニセ医学お得意の「免疫力アップ❗」じゃん。

でもねえ、少なくとも私の場合、ヨクイニンはイボに効果があったんですよ❗

飲み始めて一ヶ月程度はうんともすんともイボは一向に消える気配を見せていなかったのですが、2瓶目の途中、約3ヶ月経過した時点で

あら不思議、細かい無数のイボがどんどん消え去って行くじゃないですか❗

私が西洋医学に頼らないで漢方薬であるヨクイニンを服用し出したきっかけの一つに患者さんの経験談があります。手に複数の大きめのイボがあった患者さんなのですが、錠剤では無い粉状のヨクイニンをど大量に他院で処方されていて、「それって効果あるの?」と尋ねてから数年後にその患者さんのイボがどんどん小さくなって最終的に治ったことを目にしていたことも影響しているのかもね。

ヨクイニンの予想外の副作用を経験

「ヨクイニンは漢方薬だから副作用が無いのよね〜」は間違いです。漢方薬であっても副作用はあります。私が服用した「T72 ヨクイニンエキス錠 コタロー」の副作用としては、

  • 過敏症 発疹・発赤・掻痒・蕁麻疹等
  • 消化器症状 胃部不快感・下痢等

が記載されています。ちょっと怖いのが副作用の概要。

本剤は使用成績調査等の副作用発現頻度が明確となる調査を実施していないため、発現頻度は不明である

うひゃ〜、副作用の調査は実施していなんだってさあ。まあ、多くの漢方薬、それも保険診療で処方される漢方薬が詳細な副作用調査が行われていないので、仕方ないですね(と、大人の対応)。

あくまで私が経験した副作用、n=1である点に注意して読み進めてくださいね。私は足の甲にも足の裏にも1ミリ程度のイボがメチャ多数発生していました。確かにイボは今では綺麗さっぱり、ツルツルの足になったんだけど、ヨクイニンをガンガン服用している時はなぜか足の裏、特に踵がガッサガサになってしまっていました。さらにガッサガッサだけじゃなくて、足の裏の皮膚が厚くなってしまったのです。医学的に言うところの「角化症」です。

なぜヨクイニンを服用して角化症になったのかを、理屈っぽく医学的考察してみると、多分大きな原因はターンオーバーの乱れ。角化症は自然に古い角質がはがれる前に新しい皮膚が奥からどんどん作られてしまうことによって、角質が重なり合って生じます。ヨクイニンの効果の一つとしてヨクイニンの原料はハトムギです。ハトムギの皮をむいた中味がヨクイニンであり、効果効能は「コイクノライド(Coixenolide )」と呼ばれる化学物質のためと考えられています(化学物質怖い怖いさん、漢方薬だって化学物質ですぜ)。

さらに肌に良いのよね〜、とオバサマ達のお好きなビタミンB群もヨクイニンには含まれています。コイクノライドとビタミンB群の作用によって古い角質がはがれ落ちる前にどんどん皮膚の奥から新しい角質が生み出されて、最終的には角質が重なり合ったことによって、私の場合は踵の角化症が副作用(厳密には有害事象)として出てしまったと考えています。

現在は角化症も綺麗さっぱり、もちろんイボも綺麗さっぱり無くなっています。

イボは自然治癒、つまり治療しなくても消えちゃう場合があります。かなり古い論文「Natural history of warts. A two-year study」(PMID: 13933441)によれば24週から28週で24%が自然治癒することが報告されています。

ヨクイニンは他の病気にも効果があるのか?

効果がある人にはある、効果が無い人にとっては全く効かない、謎だらけのヨクイニン。このヨクイニンに関してかなり気になる記述がネット上で見つけました。

  • ヨクイニンで子宮頸がんにも効果がある
  • ヨクイニンは皮膚がんの予防になる
  • ヨクイニンを服用して胆管のがん治療する

などです。ヨクイニンの作用機序として免疫に関連する細胞の活性化が指摘されていることを拡大解釈して、ニセ医学方面の方々が抗癌剤では無く、ナチュラルな治療方法としてヨクイニンで患者さんを惹きつけているのだろうと予想します。

今回、私はヨクイニンがイボに効果があることを体験しました。しかし、ヨクイニンを使用して癌を治療する件に関しては福井大学で現在進行形の「漢方薬ヨクイニンとその有用成分を応用した副作用の少ない口腔癌治療法の確立」(https://kaken.nii.ac.jp/ja/grant/KAKENHI-PROJECT-18K17196/)などの結果を待ちたいと判断しています。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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