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中華料理店症候群を知っているかい?トンデモ医学情報とメディアの影響力。

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医学健康情報は多くの人に求められています。権威ある専門誌に投稿されたセンセーショナルな記事はまたたく間に一般メディアが取り上げます。

一般メディアに取り上げられた医学健康情報は一気に一斉を風靡して、常識化して予想以上に根深く人々の記憶に残ります。

メディアが取り上げた医学健康情報が正しくなくても、そこからトンデモが多数派生して長年生き残ってしまうのです。

食べ物に関する健康神話の奥深さ

「何々を食べると健康になる」「何々を食べると病気になる」「何々を食べて病気を治した」こんな話で世の中は溢れかえっています。例えばがんにならないための食べ物や食事はあったとしても、がんを治す食べ物も食事は現時点で無いと断言して医学的・科学的に間違いではありません。

しかし、なんとなく手の混んだ手間のかかる食材を使用した手作りの食事は健康に良く、身近にある食材でパッパッと作った食事の方が健康に悪そうなイメージを抱いている人が少なくはありません。簡単に美味しい食事を作ることができる化学調味料を目の敵にする人々がいまでも数多く存在しているのはなぜでしょうか?

中華料理店症候群(Chinese restaurant syndrome )と呼ばれる世界的に有名なトンデモ現象があります。

中華料理店症候群は権威ある医学誌に掲載されたことによって世界中で注目をあつめ、この病気の原因は間違いなく化学調味料でことを裏付ける医学論文が多数発表されました。権威ある専門誌が取り上げた化学調味料が原因で引き起こされる中華料理店症候群の呪いがいまだに解けていない状況が、化学物質家忌避に繋がり、有効成分を抽出・濃縮した薬剤忌避傾向を促し、人類の英知の結晶ともいえるワクチン忌避および反ワクチンのうねりの裏付けになっていると強く感じる今日このごろです。

中華料理店症候群に端を発する化学物質家忌避について少々考察してみます。

グルタミン酸ナトリウムを使った調味料の代表「味の素」

「味の素」に代表される化学調味料は世界中で使用されている日本人の手による大発見です。味の素は固有名詞であるために、テレビの料理番組などでは、「うま味調味料」と紹介されることが多いようです。味の素の主成分はグルタミン酸ナトリウム(monosodium glutamate)であり、なんとなーく化学物質っぽいムードを醸し出します。

化学調味料忌避の発端はニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン(The New England Journal of Medicine、略してNEJMと表記されることが多い)という現在でもめちゃくちゃ権威のある医学誌に1968年に「Chinese-Restaurant Syndrome」 (PMID: 25276867) という記事が掲載されたことです。実はこの記事は医学論文というよりは読者のお手紙的な位置づけのものであったのに、中華料理症候群に同調する報告がNEJMに大量に押し寄せました。

NEJMは医学専門誌ですから読者のほとんどは医師あるいは医療関係者ですから、中華料理症店候群という病状があることを疑う一般人は少なかったと思われますし、医師であっても、「あのNEJMにあれだけ報告されているのだから中華料理店症候群という病状はあるに違いない」と思い込んでしまいます。

中華料理症候群の症状として

  • 頭痛
  • 発汗
  • 動悸
  • 脱力感
  • 皮膚の紅潮

などの自覚症状が代表的なものであり、1968年当時ではしかたが無かったとも考えられますが、どちらかというと科学的・医学的な第三者による検証は行われておらず、「※個人の感想です」レベルなのです。

メディアによるトンデモ健康情報の拡散力

今となっては多くの検証によって否定されている中華料理症店候群。しかし、いまだに必要以上に化学調味料を忌避するムーブメントは根強く残っています。そもそもは限られた職種の人達が知っていた限られた健康情報が一般の人達に拡散される橋渡しをしているのがメディアです。

中華料理店症候群に関して1968年に既にニューヨーク・タイムズ(The New York Times)は’ Chinese Restaurant Syndrome’ Puzzles Doctors という記事を掲載しています。

画像

https://www.nytimes.com/1968/05/19/archives/-chinese-restaurant-syndrome-puzzles-doctors.html

中華料理店症候群がNEJMに掲載されたのが1968年5月16日、ニューヨーク・タイムズに「医者を困らせる中華料理店症候群」とのタイトルの記事が掲載されたのが1968年5月18日です。専門誌に掲載されてたったの二日で一般の人が読む新聞、それも権威ある信頼たる媒体だと思われるニューヨーク・タイムズに取り上げられているのです。

中華料理店症候群の顛末

化学調味料の代表「味の素」の主成分であるグルタミン酸ナトリウムが中華量店症候群を引き起こす原因であることは現在では多くの研究によって科学的・医学的には否定されています。

しかし、根強く化学調味料忌避派は多数存在していますよね。そりゃそうですよね、権威ある医学誌でいまでも中華料理店症候群に関する論文は多数掲載されていますし、ニューヨーク・タイムズという権威あるメディアで取り上げられた影響は大きいですから。

そもそも、読者のお手紙コーナーである「letter」欄で取り上げられた1人の医師が投稿した中華料理店症候群、その中華料理店症候群を支持する医師の手紙や論文が多数さまざまな医学専門誌に掲載され、大手メディアが取り上げることによって拡散される状況は、1968年から50年以上経過した2021年でもあまり変わらないのでは無いでしょうか?

信頼たる一般向けメディアは裏付けをとって報道しているのか?

中華料理店症候群はそれこそ一世を風靡したセンセーショナルな出来事であり、現在もその影響が無いとは言い切れません。私が常々感じているのは、大手メディアの医学情報記事がどのような経緯で新聞や雑誌やテレビやネットに掲載されているのかという素朴な疑問です。

ニュースは速報性が求められています。速報性が求められる故に裏付けをしっかり取っていない場合も多いのではないでしょうか?メディアの記者が時間を書けて取材をした記事と通信社の速報を流しっぱなしの記事とどちらに信頼性があるかに関しては論ずるまでもありません。しかし、メディアもビジネスなので、読者が求めるセンセーショナルで今までの常識に反するような出来事が多く取り上げられる傾向が医学情報でも残念ながら多数である事実を再確認する必要があるのではないかと強く感じる2020年から本年2021年です。

例えば、ノーベル生理学・医学賞を受賞した日本人研究者によって開発されえた、昨年以来世界中をパニックに陥れているヘンテコな感染症の予防効果や治療効果が期待できる薬があります。

特効薬的な予防薬・治療薬の効果を証明しているようにメディアは報道していますし、確かに医学専門誌にも掲載されています。しかし、一般の読者が一次ソースである医学論文、それも英文の論文を読み込んで理解することはかなりハードルが高いと思われます。そこで本来ならば、メディアの記者が世界中の専門誌を読み込んで記事に仕上げるには膨大な時間が必要であり、ニュースに求められている速報性は無視しなければならない事情があるようです。

ノーベル生理学・医学賞の対象となったその薬は世界中で使用され、効果が実証されていて、さらに安価で安全性が高いことは疑う余地がない事実であり日本が誇ることのできる偉大な薬です。

しかし、残念ながら質の高い研究によって中国発とされているウイルスによる感染症へ対する予防効果や治療効果を裏付ける論文は現時点ではありません。

ところが世界各国で現在急遽開発されたヘンテコな感染症に対するワクチンを忌避する人達によって、なぜかその薬は強く支持されています。ワクチンは膨大な人数を治験の対象として効果と安全性が質の高い論文によって確認されています。日本発のノーベル賞の対象となった薬は今後は多数の症例があって大掛かりな治験によって効果効能、さらには予防効果が実証される可能性は否定できません。

速報性が求められることによって、話題性がありセンセーショナルなネタが一次ソースが確認されずに、複数の専門家の検証もされずに報道されていることを賢明なる読者の方々にしつこくお伝えしておきます。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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