下っ腹が痛い(下腹部痛)

下腹部の痛み

下っ腹の痛みは放置していても自然に治る場合もありますが、診断が遅れると命に関わる危険な病気であることもあります。チクチクとした鋭い痛み、押されるような鈍い痛み、急激な発症の痛み、慢性的に続いている痛み、現れたり引いたり波がある痛みなど、痛みの症状はさまざまです。

症状

また、痛みとは別の症状として、発熱がないかどうか、血尿、頻尿、尿をする時の痛み、濁った尿などの尿路感染症の症状がないかどうか、血便、下痢、便秘、吐き気や嘔吐など消化器系の症状がないかどうか、陰嚢の腫れがないかどうかも、原因となる疾患を鑑別する際に役立ちます。

痛みの症状を正確に医師に伝えることが、診断の手助けになります。できるだけ詳しくお伝えください。

原因

下腹部痛の原因は実にさまざまです。下腹部には、大腸、膀胱、卵巣、精巣などの臓器が収まっており、基本的には、これらの中のいずれかに問題が起きて下腹部痛を引き起こすと考えられます。
具体的な病名としては、急性腸炎、急性虫垂炎、腸ねん転、腸閉塞などの消化器疾患、膀胱炎、膀胱腫瘍、膀胱結石、尿路結石、尿閉などの泌尿器科の疾患、特に男性では前立腺炎、精巣上体炎、精巣捻転などがあります。
また、女性であれば卵管炎、卵巣出血、卵巣のう腫茎捻転などの卵巣・子宮の婦人科の疾患や、子宮外妊娠が原因となることがあります。激しい下腹部の痛みが持続する時には、速やかに医師の診察が必要です。

疑いのある疾患

膀胱炎

腎層から送られてくるおしっこを、一時的にためている袋「膀胱」に細菌が繁殖することで、排尿時の痛み、おしっこの回数が多い頻尿、急に尿意をもよおして我慢できなくなる尿意切迫などの症状が見られる状態です。

女性の尿道が短いことや、膣や肛門など細菌が豊富に存在する部位と尿道が近いことから、男性よりも女性に多く見られます。急性膀胱炎の70〜95%は大腸菌が原因で、通常、抗菌剤で治療しますが、中には膀胱炎を繰り返す病気が治りにくいものもあります。

前立腺炎

前立腺に痛みと腫れが起きる病気で、細菌感染が原因で発症するものと、原因が良く分からないものがあります。

症状として、排尿時の痛み、おしっこの回数が多い頻尿、尿が出にくい排尿困難、膣の出口と肛門の間の会陰部や腰、男性の性器や精巣に痛みを感じます。ゆっくりと発症して再発を起こす慢性前立腺炎と急速に進行する急性前立腺炎があります。治療としては、薬物療法、物理療法、手術療法が選択されます。

精巣上体炎

精巣でつくられた精子の通り道である精巣上体に細菌が侵入し、炎症が起きたものが精巣上体炎で、陰嚢の腫れ、痛みや発熱などが現れます。

尿検査で尿中の白血球や細菌の有無を調べることにより診断され、抗菌剤による治療を行います。早期に適切な治療が行われないと慢性化して治療が困難になる場合があります。

尿閉

腎臓で尿は正常につくられて膀胱にたまってはいるものの、何らかの原因で膀胱の出口が開かず、排尿しようと思っても尿が出てこないという状態を尿閉といいます。

原因として多いのは前立腺肥大症で、肥大した前立腺が膀胱の出口をふさいでしまうことにより起こります。長時間座っていることや飲酒、せき止めの薬の内服などが誘因になることもあります。

精巣捻転

精巣が精索を軸としてねじれてしまうことで、精巣への血流が途絶える病気です。

思春期前後に発症することが多く、激しい陰嚢部痛で始まり、陰嚢が腫れてきて、吐き気や嘔吐(おうと)が出現することがあります。放置すると精巣が壊死してしまうため、早期の発見と治療が大切です。ねじれを元に戻すため、緊急手術が必要になります。

膀胱腫瘍

膀胱腫瘍のほとんどは悪性腫瘍、つまり膀胱がんです。男性に多く、60〜70歳が発症のピークです。膀胱がんの原因の1つとして喫煙が知られており、膀胱がんの7〜8割は、膀胱の内側表面にとどまる悪性度の低い膀胱がんです。

膀胱がんの最初の症状としては、目で見て分かる血尿が1番多く、血尿が持続するのではなく、しばらくすると止まることもあります。痛みを伴わないため放置しがちですが、血尿を見たら医師に相談することが大切です。

膀胱結石

膀胱から尿道にかけての尿の流れが悪いと、腎臓から尿管を通って膀胱に落ちてきた結石が膀胱にたまることになります。これが膀胱結石です。膀胱内に物質が結晶化して沈殿することにより、膀胱結石が生成されることもあります。

結石により膀胱が刺激されるため、不意におしっこがしたくなる尿意切迫や、おしっこの回数が多い頻尿、排尿困難などの症状が現れます。

間質性膀胱炎

通常の膀胱炎は細菌感染によるものが多いのですが、間質性膀胱炎は細菌によって起こるのではなく、尿自体はきれいなので抗菌剤は効きません。膀胱内側の粘膜のバリアが何らかの原因で壊れることにより起こります。

尿が膀胱にたまってくると痛みが強くなり、排尿すると痛みが軽くなることが多いようです。痛みを感じる前に早めにトイレに行くようになるため、頻尿になります。柑橘類などの酸性の強いものや、コーヒーなどカフェインを多く含むものを食べると症状が強く出ることがありますが、個人差が大きいようです。

【大きな誤解】泌尿器科って恥ずかしいし、痛い検査されるし、と受診を控えている方へ

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病気になっても受診したくない科目ベスト3入りが確実な(※n=5)である泌尿器科を専門としてしまった医師が、受診を躊躇している人々が泌尿器科に対して抱いているであろう誤解を解いてみます。オシッコのことで悩んでいる人、泌尿器科を受診するのは恥ずかしくないし怖くないし痛くないんだよ!ってことをお伝えします。

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桑満おさむ医師

このページの文責:桑満おさむ(医師)
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区で五本木クリニックを開院。

患者さん1人ひとりのホームドクターになるという理念のもと、常に敷居が低くどなたでもお気軽に来院できるクリニックを目指し、とくに日帰り検査・手術に力を入れています。技術の向上はもちろんですがより新しい医療機器や治療方法・医学情報の提供につとめています。患者さんとの会話を大切にしています。

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