ブロッコリーが健康に良さげであるのは大間違いではありません。ブロッコリーががんの発症を防ぐ可能性がありそうなのも間違いではありません(「A major inducer of anticarcinogenic protective enzymes from broccoli: isolation and elucidation of structure.」PMID 1549603などによる)。
しかしブロッコリーを食べることによってがんを治す、これは間違いです❗
さらにブロッコリー由来のサプリでがんが治る❗は全く根拠なしです
本記事の内容
ブロッコリー、がん予防効果があっても、がん治療に役立つかは疑問だらけ
ブロッコリー系のサプリはネット広告上に溢れかえっています。先日のニセ医者騒動の主もしきりにブロッコリーの成分を含むサプリを推奨していました。
いかにもがんの治療に役立ちそうな表現テンコ盛りのブロッコリー系サプリには、もっともらしい特許取得とか患者さんの声とか臨床データ風のグラフが掲載されています⋯これらをじっくり調べてみるとかなりいい加減です。
家族ががんと診断された、ご自身ががん闘病中が「がんに良い食べ物って何だろう?」とネットを検索する行為は人として当然のことです。そんな方々の足元を見るかのようなサプリビジネスがネット上にははびこっているのです。
薬機法や医師法による取り締まりが厳しくなっている中、あの手のこの手でサプリの効果をうったえる広告手法にウンザリしている方はぜひ御一読いただけると幸いに存じます。
特許取得=治療効果が証明、というわけにはいきません❗
「ブロッコリー サプリ」のキーワードで検索すると、こんな感じになりませんか?上位にブロッコリー系のサプリの広告が現れます。
たまたま、一番上に表示された「特許取得のブロリコ」の広告をクリックすると
こんな感じの宣伝文句が現れます。
何でこんなにURLが長いの?という問題はひとまずおいといて、
おお❗天下の東京大学と共同で特許取得したサプリ❗こりゃ本物だあ
って普通は考えます。
でもねえ、この特許を調べて見るとこの
特許はこのサプリの治療効果を示したものではありません
⋯特許とかの専門家なら当然と考えるでしょうけど。
薬の特許を取得する場合、実は実際に効果があるかを調べる臨床試験の前に特許を取得しなければならないのです(先に臨床試験の論文を書いちゃうと公開された情報と判断されて特許が取れなくなる可能性があるからだそうです)。
つまり
特許を取得していても治療効果があるとは限らない❗
ということです(ここ重要ですから、ぜひメモを)。
おまけ:この特許取得に発明者としてお名前がある東大の先生のご専門は蚕です。特許も蚕の筋の収縮活性に関するものであることにご留意くださいませ。
1000倍のパワーが確認⋯何のパワー???
サプリの常套文句として「乳酸菌が100億個❗」とか「シジミ300個分のオルニチン」ってのがあります。これって実は何を意味しているのかよくよく考えると謎。
乳酸菌が10個の場合と100億個の場合で何が違っているのか、個数が増えれば何かの効果が高くなるのかも不明ですし、シジミのオルニチンが一個分だとどれだけ体に良く、それが300個分になれば300倍効果があるとは考えにくいと思うのです。
あるブロッコリー系サプリの場合はこんな表現をしています。
これもメチャURLが長いなあ。
食品の活性率が1000倍以上❗って何がどれだけすごいの???
日常生活で「これって食品の活性率が10倍なんだよねえ」って使いますか?まだ乳酸菌が100億個やシジミ300個分の方が何となーく理解できます。
ガン細胞も消滅するブロッコリーの成分???
確かにブロッコリーはひょっとするとがんの予防になるんじゃないの?との可能性を示す医学論文は多数存在しています。私が専門とする泌尿器科領域でいえば、ブロッコリーを食べると前立腺がんになりにくいとの結果の論文がいくつか存在します。
一方で「Phytotherapeutic interventions in the management of biochemically recurrent prostate cancer: a systematic review of randomised trials.」(BJU Int. 2016 Apr;117 Suppl 4:17-34.) のように残念ながらサンプルサイズが小さくて判定不可との論文もあります。
別のサプリ会社のこんな広告記事がありました。
ブロッコリーの成分、例えば「スルフォラファン」が試験管レベルでがん細胞にダメージを与えたとしても、スルフォラファンによってできてしまった人のがんを治療し、生存率が高くなるような治療効果を明らかにしたエビデンスレベルの高い医学論文は見当たりません。
ブロッコリーの成分が、がん治療効果あるのなら、なぜ医薬品にしないのでしょうか?
間違いなく医薬品にした方が値段も高く設定できますし、企業として儲けも大きくなるはずなんですけど⋯。
ブロッコリーが健康に良いとしてもブロッコリーによる、がん治療は残念ながら今のところは確立されていません。
ここでどうしても素朴な疑問が湧き出てきます。
実は遺伝子レベルでいうとブロッコリーもキャベツもカリフラワーもほとんど違いが無いのですが、何でブロッコリーだけがもてはやされるのでしょう?この理由、誰か教えてくれないかなあ⋯非常に個人的なことなんですけど、私ブロッコリーが大嫌いです。