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禁煙薬補助薬でアルコール中毒も治療できる可能性あり

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禁煙治療補助薬と呼ばれる薬がアルコール依存症にも効果を発揮するという論文が Journal of Addiction Medicineに掲載されていました。

禁煙補助薬として日本でもで方薬として使用されています。この薬はアルコール依存症に関係するニコチン性アセチルコリン受容体部分に作用することで効果をだすことが知られており、ニコチンだけではなくアルコール依存症にも効果があるのでは?と以前から考えられていました。(当院では処方していません)

アル中はニコチン中毒を同じ?

今回の研究はアルコール依存症の人を200名参加してもらいました。その中で喫煙者と非喫煙者に分けて禁煙補助薬を偽薬であるプラセボ薬も含めて13週間にわたって調査を続けました。

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二重盲検プラセボのイメージです

もちろん参加者は自分が禁煙補助薬を飲んでいるか、プラセボなのかはわかりませんし、処方する医師側も誰がどっちを飲んでいるか分からない「ダブルブラインド」日本語でいうと二重盲検試験で行いましたので、バイアスがかかりにくくなっています。

さらに患者さんはランダムに選ばれています。このような実験・研究法を二重盲検プラセボ対照ランダム化比較試験と呼び、その結果は信用に値するものです。(常識を疑ってみようという趣旨の私のブログの読者もかなり疑い深くなっていますので⋯)

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今回の研究は上記のように行われました。

結果は

アメリカの国立アルコール乱用・依存症研究所(凄い名前ですが⋯)のRaye Z. Litten氏が中心になって論文を書いています。気になる結果ですが

  • 禁煙補助薬を飲んでいる方が一週間当たりの大量飲酒日が減った
  • 禁煙補助薬を飲んでいる方が一日あたりの飲酒量が減った
  • 禁煙補助薬を飲んでいる方が飲酒の欲求が減った

ちなみに飲酒に対する影響は喫煙者も非喫煙者も同様でした。つまりこの薬はアルコール依存症を治療する可能性が示されたのです。

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上記論文より

ニコチン性アセチルコリン受容体部分とは

アセチルコリン受容体とは副交感神経(リラックスする神経)における伝達物質です。ニコチン性アセチルコリン受容体はその一つでありニコチンに対して反応を起こします。

実はいま、この受容体が難病であるパーキンソン病の治療薬に関連すると予想して研究がすすめられています。

一般ではなじみのない言葉ですが医師国家試験でも

Q 運動神経又は骨格筋に作用する薬物に関する記述のうち、正しいものの組合せはどれか。

a A型ボツリヌス毒素は、神経筋接合部においてニコチン性アセチルコリン受容体を遮断するため、眼瞼痙れんの治療に使用される。
b ⋯・省略
c ⋯・省略
d ⋯・省略

なんて形で出題されています。

もちろんaを選んだ医学生は落第ですけど(医師国家試験って実は4択なんです)

今回のブログと無関係ですが美容に使われるボトックスも国家試験にでるくらいポピュラーになったか、と別の意味で感慨深い設問です。

増加するアルコール依存症の患者さん

最近の若者はアルコールを飲まなくなったと良くオッサンが嘆きますが、厚生労働省の調べによると、日本においては成人の飲酒者の割合はほとんど変化していません。

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厚生労働省HP

でも多量に飲む人は男性に限ってみると上昇しています

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そしてアルコール依存症と診断され医療機関を受診した人は増加傾向です。

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厚生労働省HP

上記3データと「若者のアルコール離れ」という現象を私が適当に解釈して無理くり結論を導き出すと

⇒若者があまり飲まない
⇒多量に飲酒する男性は増えている
⇒でもアルコール依存症が増えている
つまりオッサンのアル中が増えている

という驚愕の事実!確かにアルコール香りを漂わせながら、ほんのり赤い顔で来院する定年退職風の患者さんも見かけます。

喫煙者は非常に肩身の狭い思いをしていますが、アルコール依存も健康問題はもちろんのこと、周囲にも多大な迷惑をかけています。喫煙には厳しく、アルコールには寛容な世の中の流れに少し疑問ありです。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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