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「紙」VS「iPad」医学業界用語「ムンテラ」はどっちが効果的?

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仕事・業界によって独特の用語がありますよね。

例えばお寿司屋さんでワサビを「なみだ」、醤油を「むらさき」とかお茶のことを「あがり」と呼んだりします。御会計の時も、回らない系お寿司屋さんでは「ゲタ・ダリ・ガレン」何て言います。これは「345」で三万四千五百円を指します。

医療系でも業界用語あるいは符牒として使われる言葉があってご飯を「エッセン」(ドイツ語のessen⋯食べる)と呼んだりします。符牒って基本的な考え方としてはお寿司屋さんの会計時ようにお客さんにあまり知られたくない場合に使われることが多く医療系も同様です。

「ムンテラ」という医学業界用語の意味は?

ムンテラって聞いたことありますか?これは医師が使うギョーカイ用語です。

「今日の患者さんにしっかりムンテラしたのにわかってもらえなくて」的な使い方をします。このムンテラはドイツ語の「mund therapie」が言葉の由来で英訳すれば「mouth therapy」。患者さんに対して非常に医師の上から目線の表現であって、直訳すれば「口による治療」ってことになります。偉い先生が無知な庶民に口で説明することによって、患者さんが安心して快方に向かう、って考え方が元にあったことが予想されます。現在このムンテラは患者さんに病状を説明すること、という意味合いで日常使いされています。

このムンテラはインフォームドコンセント(informed consent)と若干違った意味合いで使用されています。ムンテラはどちらかというと、医師が一方的に患者さんの病状を説明して、納得してもらうことを前提としています。あるいは治療に疑問を持っている患者さんの説得に使いますので、医師の上から目線的なそもそもの語源のニュアンスを含んでいるんです。一方、インフォームドコンセントは医師が患者さんに治療内容をいい面も悪い面も十分に説明して、それを患者さんが十分に理解して(この状態がインフォームド)、その上で治療を受けるか、受けないか、ほかの治療法を選択するかを自分の責任の上で合意(これがコンセント)することを意味します。

◎こぼれ話 今も存在するか不明ですけど、ちょっと前までネット上に看護師さんが医療機関の患者さんに対する横暴を訴える内容の記事があり「患者さんが亡くなったら、患者をステルって病院では言うんですよ」というものがありました。これは本当に医療関係者が書き込んだものかは不明なのですけど、もともと「ステルベン(sterben)」という「死亡」を意味するドイツ語を略して「ステル」って使うんです。患者さんが亡くなったから「捨てる」って意味じゃないです。

医療に関する情報を一方的に伝えられて、その内容を患者さんが十分に理解・納得するか、あるいみ医師側の上から目線がこれまた気になるインフォームドコンセントですが、これを紙ベースで行うか、あるいはiPadなどの電子デバイスを使用した場合、どっちの方が患者さんはより深く理解しているかを比較した論文があります。以前、「電子書籍VS紙の本⋯勉強するなら紙の本の圧勝❗」というブログを書きました。今回の研究の結果は意外や意外でして⋯。

iPadをインフォームドコンセントに使った場合

患者さんが医師サイドの説明をどれだけ理解しているかを判定する研究自体、なんだか医師の上から目線が感じられるんですが、話を進めます。この研究に対しての論文は「Interactive Informed Consent: Randomized Comparison with Paper Consents」(PLos One. 2013;8 (3) :e58603. )。研究内容はがんについて医療サイドが患者さんに説明をして、その手段として紙を使ったかグループとiPadを使ったグループに分け、両者の理解度を判定するという、やっぱり医師サイドの上から目線研究でした。その結果

iPadで説明を受けた患者さんの方が理解度が高かった

となっています。

この論文は読み込むとかなり失礼なもので、臨床試験に使用される抗がん剤によって神経障害が起こる可能性があり、それを患者さんに紙ベースで説明するか、iPadで説明するかの二つのグループに分け、さらにこの両者をオンラインテストで万が一質問があった場合誰に尋ねればいいか、臨床試験期間の長さはどのくらいか、なんてことを答えてもらっているようです。その結果を点数として評価して

正答率はiPad派は77パーセント、紙派は57パーセント

になっています。

臨床試験に参加してもらうことを前提としながら、さらにその理解度をテストしてしまうという一挙両得的なすっばらしい(嫌味を感じてくださいませ)研究でした。

問いかけというか質問はこのような内容でした。

PLOS_ONE:インタラクティブインフォームドコンセント:紙の同意とランダム化比較
前述論文より

医療機関で使用される電子デバイスを患者さんはどのように考えているか?

医療機関で使用される電子デバイスとして、一般に馴染みの深いものは「電子カルテ」ではないでしょうか?当院でも一般診療は電子カルテを使用していますが、その採用に当たって一番問題となったのはディスプレイの配置です。

とかく患者さんの顔を見ないで、パソコンの方ばっかり見ている、と言われがちな電子カルテ

椅子と机の配置、そしてディスプレイとキーボードの位置に対してはかなり工夫をこらして、どうにかなるべく患者さんとFace to Face になるようにしています。患者さんの顔を見ながらじっくり診察をして、その後に電子カルテに診療内容を打ち込む、という流れになってしまっていて、紙カルテ時より一人当たりの診療に必要な時間が余計に掛かってしまうという,電子カルテ医療事務簡素化説は全く否定されてしまっている当院です。

たった一つだけ「やっぱり電子カルテで良かった」と思うことがあります。それは他の医師の書いたカルテが読める、ということです。笑

「先生たちってカルテ英語で書くんですよね」、ちょっと古い人だと医師はカルテをドイツ語で書いている、と思い込んでいます。実は日本語・英語・略語が入り混じった言葉をグチャグチャと患者さんが一見しても内容が把握できない、それこそ業界用語・符牒だらけでカルテは書かれています。そんなグチャグチャ(自分で書いた昔のカルテが自分で瞬間的には読み取れないこともあった)と書き込まれたカルテを複数の医師で共有するには、紙より電子カルテが勝っています。

それより例のお薬手帳、あれって全医療機関でサクッと情報を共有化できるように電子化することできないんでしょうか?情報強者・ネット強者のオジさんの言っているようにそんなに複雑なシステムじゃないはずなんですけど。「どうして電子化しないのか?おくすり手帳の謎
関連エントリー 「お薬手帳を断ろう!」という動きは当然です、本来の機能を果たしていないんですから!

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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