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ニセ医学かな?シャンプーの比較実験、なんだかカビない山崎パンのような⋯。追記あり

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経皮毒という疑似科学系のニセ医学があります。有名なトンデモ話として出産時の羊水からシャンプーの香りがした、なんて話はなかば都市伝説化して、静かに拡散しています。食品添加物を必要以上に忌避する自然派と呼ばれる集団と経皮毒を信じ込んでしまう集団の類似性についてのお話です。

美容師さんによる市販シャンプーの比較実験

美容師さんが市販シャンプーの問題点?を露わにした実験をネット上で見かけました。結論として「ラウレス硫酸Na、ラウリル硫酸Naは悪い成分」と「シリコン入りシャンプーは悪い」となっています。

ご自分で実際に実験をして、その結果を発表することはいいことですが、実験方法の不備及び実験結果が「化学物質は悪い」という証明にはなっていない点が気になりました。

美容師が市販シャンプーを買ってみた実験と結果と【安くて良いシャンプー】のススメ___1分で感動

ネット上に実験の詳細が残っていました⋯これが結果です。

シャンプーにまつわる都市伝説として「化学物質を含むシャンプーを使用すると出産時の羊水がシャンプーの匂いがする」なんてありえない話も出回っています。化学物質が体内に皮膚を通過して、体内に蓄積される「経皮毒」という全く科学的・医学的ではない話を振りまいている一派もいますが、今回の美容師さんは単に市販のシャンプーの問題点を探求心から研究したようです。「経皮毒」というユニークな概念を唱えている人は玄米や味噌で放射線障害が防げる一派と重なり合います。

「玄米で放射線被害が防げる」って話、実は玄米食が放射能汚染に有効である可能性は⋯0??

山崎パン実験_-_Google_検索
ヤマザキパンは本当にカビないのか?調べてみた」より この実験では山崎パンもしっかりカビていました。

山崎パンはホコリや不要の菌が製造過程で混じりこまない環境で作られているために、開封しない限りなかなかカビが生えないのです。一方で、手作りパンは防腐剤が入っていないのでカビやすいという考え方は明らかに間違いです⋯製造過程でバイキンが混じり込むのですぐにカビちゃうんです。

せっかくの美容師さんの実験にケチをつけるわけではないですが、山崎パンがカビない=防腐剤、という考え方をしている人の多くが「経皮毒」という不思議な理論を振り回していますので、ひょっとしたらこの美容師さんも「経皮毒」一派の話にインスパイアされて今回の実験を行ったのではないか、と考察をおこないました❗

美容師さんの実験の問題点

泡立てる為の成分であるラウレス硫酸Na・ラウリル硫酸Naがタンパク質の変性を引き起こす⋯髪を傷める、という推測を元に実験を行っています。実験方法は卵の白身の中に直接シャンプーを注入して、その結果、試験管内が白く濁ったことから「タンパクが変性した」という結論に至っています。ここで疑問があります。この美容師さんは画像から試験管を縦に振っています。実際に試験管の中で二つの物質を混ぜ合わせる場合、円を描くように慎重に混ぜ合わせ、泡立つような乱暴な攪拌はおこなってはいけません。さらに比較実験として使用している「美容サロン用のシャンプー」は白濁しなかったので、タンパクの変性が起きていない、という結論になっています。

◎すべてのシャンプーを同じ方法で攪拌したのか?
◎もともと白っぽい市販シャンプーの色で白濁して見えているのではないか?
◎タンパクの変性ではなく、乳化作用ではないのか?

という素朴な疑問が出てしまいます。乳化作用は界面活性剤の特徴であり、一瞬完全に混じり合ったように見えて実は「濁っているだけ」の状態です。フレンチドレッシングが二層に分かれていて、振ることにより白濁した状態が「乳化」です。

界面活性剤が油の成分を包み込む状態で、これがシャンプーであれ自然成分のみの石鹸であれ、汚れを落とすメカニズムなのです。汚れを落とす力がある、ということは界面活性剤の効果です。となると、美容師さん専用のシャンプーの洗浄力はどうなのよ的な疑問も生じてしまいます、少なくともこの実験からは。

ラウリル硫酸Naとラウレス硫酸Naは悪い成分か?

ラウレス硫酸Naはラウリル硫酸Naをより肌に優しくする為に開発された成分です。肌に優しいと言われる石鹸も泡立つということは、界面活性剤が含まれています。ボディーソープは石油由来の合成界面活性剤を使用しているから、自然の成分の石鹸の方が肌に優しい、と考えらえる傾向があります。

しかし、石油由来成分が悪いとなると、基礎化粧品以外のほとんどのコスメも肌に悪いことになります。ラウレス硫酸Na・ラウリル硫酸Naが髪のタンパクを変性させちゃって、髪の毛にダメージを与える、と考えて石鹸で洗った場合、石鹸の特徴はアルカリ性ですから逆に髪に良くないと考えらえます。

じゃあ、ラウレス硫酸Naやラウリル硫酸Naが肌や髪に悪影響である(タンパク質を変性させるという話はおいといて)という考え方は正しいのでしょうか?ラウリル硫酸が悪者とされた原因は分子量が小さいために、皮膚を通過して体内に蓄積されるのでは?という例の「経皮毒」という考え方が元となっているのです。ということは経皮毒は体に蓄積される理論として

◎口と鼻以外から取り込んだ物質は体内で分解・代謝されない

という非常に不思議な考え方があります。でもね〜、心臓の薬や過活動膀胱の薬で貼る薬もあって、しっかり代謝経路も調べらているんだけどね〜。

美容師さんを悩ませる「経皮毒」というトンデモ疑似科学

今回の美容師さんの実験は経皮毒ではなく、合成界面活性剤がタンパク質を変性させるか?についてのものでした。実験方法やその結論はかなり不確かなものになっていますが、なんでも自分の目で確かめてやる、という姿勢は「ググればいいや」「ウィキで見ればいいや」という最近の風潮から考えれば、好感が持てます(たとえ結果が間違っていたとしても)。しかし、「経皮毒」というもっともらしい言葉を用いて、一般の方を惑わせる業者もいますし、中には医師でも「経皮毒」という間違った考えを振りまいている人もいます。

さらに美容師さんの間ではシャンプーに含まれる「コカミドDEA」という成分が発がん物質である、という話も密かに話題になっているようですので、調査が完了したらまた報告しますね❗

彼を批判することが目的ではありませんので、美容師さんの元のブログはあえて明記しませんでした。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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