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簡単なことで死亡率が半分に⁉術後の合併症や医療事故を防ぐ方法は単純でした

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日本においては医療事故とよばれるものの実際の発生件数を全て把握することは事実上できていません。

公益財団法人日本医療機能評価機構というところがデータを収集して報告をしています。昨年は以下のような結果でした。

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死亡もしくは重篤な状況に至ったと考えられるものはなんと2941件にも達しています。

日本における医療事故

新聞などのメディアに掲載されるものは氷山の一角だと考えて間違いありません。日本の場合、医師に責任があるかどうかが問われることが当然ですが多いのですが、海外では無用な医療費がかかってけしからん、という考え方も多くなっております。以前ブログで「手術ミスの4分の1は単純なことが原因」だけど、手術ミスを防ぐ方法はあるか?⋯医療事故防止は簡単な事です。」の中で書きましたが、チェックリストを作成するだけで手術に関連する事故や合併症はかなりの部分が回避することが可能なのです。

具体的なチェック項目とは

以前、海外の新聞で読んだ記憶があったのですが、何に掲載されていたか思い出せなかったため休日にスクラップブックを引っ掻き回して、関連記事をやっとみつけだしました。さらにそのチェックリスト自体も見つけました。

これです。

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このチェックリストを使用すると死亡率は約半分に、合併症は40%近く減少させることが出来るのです。

新聞の基調は海外も厳しい

海外の新聞は2009年のThe New York Times でした。医療では手術の合併症を予防したり医療事故を防ぐためには多大なコストがかかるが、実は簡単なチェックリストが手術による死亡率を減少させ、医療費全体もコストを下げられるというような内容でした。

日本の場合、患者さんの被害に論調が傾きがちで医師の責任を問うことが多いのですが、医療費というコスト面から話題を広げるという日米に違いも興味深いてんでしたのでスクラップしてあったのです。

さて、そのチェックリストの内容ですが、当たり前といえば当たり前の事ばっかりなんです。

  • 患者さんが手術を受ける当人であるかを確認する(実は私の出身大学で取り換え事件がありました⋯事故ではなく事件です)
  • 医療スタッフは手術器具が滅菌されていることを確認する
  • 必要な治療機器が揃えられているか確認する
  • 感染を防ぐための事前の抗菌薬の服用がなされているか確認する
  • 監視装置が作動するか確認する
  • 術前に撮影された画像検査の結果が用意されているか確認する

以上のように極々当たり前のチェック項目が表となっています。

果たしてその効果は⋯

効果は抜群でした。

アメリカ、カナダ、ヨルダン、タンザニアなどの病院で7688人の手術に際してこのチェックリストをしようしたところなんと

  • 平均死亡率は1.5パーセントから0.8パーセントに減少 約半分
  • 平均合併症率は11パーセントから7パーセントの減少 約4割減

と非常に効果を上げたのでした。

元々医療技術の差や改善の余地の幅によってこの結果はかなり左右されますので、もっと多くの病院でこのチェックリストを使用して結果をまとめる必要はあるとは思います。しかし、日本でマスメディアを騒がす医療事故のほとんどはなんでそんな単純なミスがおこったのか?と思われるようなものが多いのではないでしょうか。だからこそマスメディアは大騒ぎをするのです。

医療現場以外ではやっている単純なチェック

電車に乗るときに駅員さんが指さし確認をしていますね。バスの運転手さんも一々指さし確認をしていて少し滑稽に思えることもあります。当たり前のことですが、単純な指さし確認が事故を防ぐことが証明されているから取り入れられているのです。

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http://hiromi7.cocolog-nifty.com/blog/2009/04/

一般企業の場合、事故が起こると大変大きな金銭的損失を被ってしまいます。その為にいかに事故を防ぐかという問題は企業の存続をも左右してしまいます。原発の問題も「人為的な単純なミス」が後から後からでてきて、原発不信感を増長させてしまっています(もちろん隠ぺい等は論外です)。

医療現場も一般企業を見習うべき

チョッとしたミスが企業の信用を失い、多大なコスト負担になり、それこそ業績不振に陥るのが民間の企業です。世界に誇るトヨタだってトヨタ式カイゼンだけではなく、整理整頓にも気を使っています。医療現場では競争原理が働きにくい環境に甘やかされてきた傾向は否定できません。

しかし、医療費削減が国家財政の危機を回避する重要項目になっている現在では、医療ミス・医療事故によって賠償金の問題はもちろんですが、医療費自体ももともと不必要であったコストがオンされてしまいます。

医療現場の皆さんもぜひ一般企業とくに生産現場などを見学することをお薦めします。何かしら得るものがあるはずです。

新聞らしい辛口コメントがありました

新聞ってどうして素直に「チェックリストで医療事故が減ってよかったね、みんなの病院でも早速取り入れましょう」と終わってくれないのでしょうか?

このニューヨークタイムズにも最後にこんなコメントが載っていました。

「今回対象になった医療機関はチェックリストを使って医療事故が防げるかの調査をされていることを認識していた、だからいつもより注意したんじゃないの」 だって。

まあ、そのような考え方もありますがもう少し素直に評価してくれてもいいんじゃない?

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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