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EPA・DHAが豊富なサンマは本当に健康食?青魚を沢山食べると寿命が短くなるという説とその反論

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夏の終わりから秋に出回る脂がのった秋刀魚の塩焼き、私の大好物です。サンマって子供の時はワタが苦くて、子供の時は苦手だったのが、30歳を過ぎたころから大根おろしにちょいと醤油とたらして、サンマを食べる、日本人に生まれて良かったなと思えるようになりました。

私はサンマが大好物です、EPA・DHAを意識しているわけじゃないですけど

ある一定の時期でないと食べることが出来ない「旬」もオッサンになると四季に恵まれた日本の素晴らしさに心を打たれます。そのサンマを含む青魚が今ではEPAだのDHAだの健康成分がいっぱいで、その成分だけ抽出したサプリメントが花盛りです。サンマは嫌いだけど健康に良いそうだからEPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサニン酸)が含まれたサプリを愛用している方も多いのではないでしょうか?

基本的に天邪鬼で理屈っぽい私ですので「体にいいから食べなさい」と言われると「美味しいものを楽しんで食べるのが本来の姿だ!」と反論する反面、本当に青魚に含まれる健康栄養成分って体にいいのかな、と思い様々な栄養学の本や論文を探す自分に嫌気がさすときもあります。そんな私にとって美味しくて健康に良い「サンマ」を追及していたら非常に不愉快なデータを見つけてしまいました。

一番サンマを食べる人ほど短命というショッキングな結果が

データなんか調べるんじゃなかったと後悔しているのですが、調べたからには皆さんにも一緒に考えていただこうと思い結果を発表します。総務省の調べによりますと日本で一番サンマを食べるのは青森県の人でした。

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http://todo-ran.com/よりお借りしました

青森の人は年間購入量が二人以上の世帯の場合、4269グラムとなっていました。全国平均は2171グラムです。上図から分かるようにサンマの購入量は西低東高傾向をしめしていますが、サンマは漁獲量は北海道ですので新鮮な美味しいサンマが安く購入できる点も青森のサンマ好き傾向に影響を与えていると思われます (じゃあ、なんで北海道が一番購入しないのか、という突っ込みはご遠慮ください。)

一方の体に良いかという問いに答えるために、ただ単に県別の寿命で表すより健康寿命の方が体によい青魚、EPA(エイコサペンタエン酸)やDHA(ドコサヘキサニン酸)イッパイのサンマには適していると調べたのが失敗でした。その結果は

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厚生労働科学研究費補助金「健康寿命における将来予測と生活習慣病対策の費用対効果に関する研究」より

げっ、青森の男性が一番短いじゃん❗

でも、これは健康寿命にしたからだよ、変なバイアスを掛けたからだよ、素直に寿命で調べようっと。

県別の平均寿命はこれです

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調べるんじゃなかった、男女ともに青森が一番短命だよ。 データを借りながら厚生労働省に文句を言いたくなってきた、私の美味しくて健康によい、そして季節感のあるサンマは食べれば食べる程、健康寿命どころか単なる寿命もみじかくなっちゃうの?厚生労働省さん及び総務省さん。

このような統計に引っかかってはいけません!

寿命と食べ物の関係を調べたり、嗜好品が健康に及ぼす影響を調べたりする学問の分野に「疫学」という物があります。

皆さんがマスメディアで目にしやすい「なになにを食べると心臓病のリスクが減少」とか「なになにを1日何杯のむとがんになりにくい」なんて記事は疫学調査によって得られたものがほとんどです。医学の専門誌も世界的な健康調査とされるものは多くが「疫学」の分野になります。

健康に関心のある人はある説とそれこそ真逆の説が登場する健康情報、この疫学に振り回されているのではないでしょうか?

体に良いとされるエイコサペンタエン酸やドコサヘキサニン酸をたくさん含むサンマが寿命を短くするという論理も一見正しいようにも見えます。もちろんこの説は明らかに間違っていますので。

タイトルの「EPA・DHAがタップリの青魚の代表「サンマ」は本当に健康食か?沢山食べると寿命が短くなるという説とその反論」はもちろん私の自作自演です。

なぜ、そのようなことが可能になってしまうのでしょうか?水を火にかけてお湯が沸くのは、水が火のエネルギーを吸収することによって、お湯になるのです、当たり前ですが水に「原因」として火をエネルギーとして与えると水の分子が激しく動くことにより「結果」としてお湯になります。つまり「原因と結果」がハッキリしています。

「原因があるから結果が導かれる」この原因と結果の関係を「因果律」と呼びます(チョッと喩があんまりよくないかもしれませんので、もっとすっきりするものを思いついたらこの原稿修正します 汗)。疫学による明らかな原因と結果を結びつけるデータを収集することは非常に困難なのです。影響を与える因子がおおすぎて生きている人間を対象にした場合、男女差、人種差、嗜好の差、教育レベル、住んでいる場所の環境、収入、そして遺伝などなどあげたらきりがありません。

疫学に限って言えば、例えば

「死亡リスクがコーヒー1日4杯飲むと高まるって本当?」

というブログを書きましたが、それに反する

「コーヒー1日4杯以上、前立腺がんリスク減❗この前の話と真逆だぞ。」

というブログもちゃんとした医学論文にしたがって書くことができるのです。

どうしてこんなことが起きてしまうかというと疫学でわかることは「相関関係」だからです。ある傾向のある人はこんな傾向になりますよ、ということしか分析することはできないのです。ということはそのある傾向を他の因子で調べていくと結果が全く違ったものにたどり着くことになってしまうという結果になります。極端なことを言えば今回のサンマのデータから「EPAやDHAを積極的に摂ると早死にする」という結論も誘導することも可能になってしまうのです。

美味しくって健康によいサンマをかばってみますと

サンマの購入量を見てみると西低東高ですが、一般的に東北地方の食事は塩分が多いとされています。さらに厳しい冬を越すための知恵として保存食の文化が根付いています。化学物質に頼らず安全な食品を使用して保存するための一番の方法は「塩蔵」です、いわゆる塩漬け。そうなるとどうしても血圧等に悪影響を与える塩分を過剰摂取する傾向がでてきますので脳卒中や心血管系の病気になりやすくなります。さらに県別の人口当たりの医師の数も

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厚生労働省 都道府県 (従業地) 別にみた人口10万対医師数より

となっており青森は全国平均を大きく下回っています。

さらに過疎化が進んでおり、夜間などに急病になった場合、近くに医療機関があるとは限りません。

ということを考えに入れますと、サンマをたくさん食べると健康寿命や寿命が短くなるわけではなく、サンマ以外に健康状況に影響を及ぼす因子は色々上げることができます。

やっぱり、味覚の秋を十分に堪能しなけりゃ日本に生まれた価値無いですよね❗

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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