納豆に多くの健康効果を期待するのは、納豆も迷惑がっているかも(笑)。

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昔から納豆は体に良い食品として日本人に愛されてきました。

愛される故に愛する相手である納豆に過大な納豆自身も気がついていなかった健康面の効果を期待をしてしまうと、納豆だってプレッシャーに押し潰されてしまうかもしれません。

納豆がかわいそうじゃん。。。

納豆に多大な期待、免疫力アップ効果はあるのか?

たぶん、納豆も自分の特徴ある香りにコンプレックスというか負い目を感じていて、そんな自分を愛する納豆LOVEの人々に感謝の気持ちを伝えるため、一生懸命納豆なりに健康面でプラスになる効果を実力以上に頑張って発揮する努力をしていたのではないでしょうか?

先日、こんな記事を見かけました。

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CoCoKARA「納豆の驚くべき効果効能」(https://cocokara-next.com/food_and_diet/effect-efficacy-surprising-fermented-soybeans/)

納豆に期待される健康効果はこのようなものがあるようです。

●骨粗しょう症

●血液サラサラ

●免疫力アップ

●エイジングケア

なんか嫌なムードを感じてしまいます。時期が時期だけに「免疫力アップ」はウイルスから体を守る効果につながり、「ヘンテコな感染症にならないために納豆を食べましょう」的な内容の健康関連記事やそそっかしいバラエティ系健康番組が取り上げたら、まちがいなくマスク・トイレットペーパーについでスーパーから納豆が消えてしまいます。

そもそも納豆の血液サラサラ効果さえも、臨床的に効果を証明したと言い切れる質の高い医学論文は存在しないと言い切れる状態です。

免疫力アップはトンデモ判定におけるリトマス試験紙的な役割も果たすことが知られています(って、どこで知られているのか笑)。

愛すべき納豆をプレッシャーから開放するために(おいしくなる努力は続けて欲しい)、今回は納豆に免疫力アップ効果はあるのか、について検証してみます。

納豆の免疫力アップ効果、そもそも「免疫力」の定義を述べよ

医師がなんらかの会合や勉強会で「免疫力」と発言することはまずありません。学会で「免疫力」との言葉を述べた瞬間にその医師の信頼度はかなり失墜する可能性もあるくらい「免疫力」はリスキーな言葉です。

免疫は複雑なシステムであり、一言で免疫力とあまりにもざっくりな言葉は科学的思考で医学を考えた場合、適切な言葉ではないからなのです。

「免疫力」という言葉は「女子力」とかと似たような一般的にはなんとなーくイメージが伝わりやすいことからメディアにはしきりと登場してくる医学用語風の言葉であることをご理解ください。

前掲の健康関連記事には納豆の免疫力アップ効果に関しては以下のように書かれています。

納豆菌には腸壁の細胞や免疫細胞を活性化させ、免疫力を高める働きがあることが分かっているそうです。

この記事を書いた人は何を一次ソースとして「分かっているそうです」との情報を得たのか非常に気になるところですね。

これを詳細に検証して、愛すべき納豆への無言の圧力というか、不必要なプレッシャーからの開放を試みます。

【免疫力を上げる】そんな簡単な話では無いし、医学的根拠がスッカスカな記事が多数。

【免疫力を上げる】そんな簡単な話では無いし、医学的根拠がスッカスカな記事が多数。

「体温を上げて免疫力アップ」「食事で免疫力を上げる」といった免疫力をアップして風邪・ウイルスに克つ情報が蔓延しカラダによいとされる情報には大抵「免疫力UP」がつきもの。残念ながら私たちの体のもつ免疫システムは複雑で単純ではありません。体温を上げれば免疫力上昇してガンにならないといった情報に医学的根拠はありません。   

免疫はちょっとやそっとで変化するような単純なものでは無いよ。

納豆が腸壁の細胞を活性化させる、との謎の文言はなんじゃ?

あっさりと「腸」と言ってくれてもねえ、腸といってもいろいろあるんあけどなあ⋯。医学的にというか、たぶんこれは中学の理科でならったはずなんだけど、腸は大きく分けて小腸と大腸があります。

●小腸⋯口に近い方から、十二指腸・空腸・回腸

●大腸⋯口に近い方から、盲腸・上行結腸・横行結腸・下行結腸・S状結腸・直腸

腸と言っても9種類もあるんです。

腸壁の細胞を活性化させる納豆の威力には驚かされますが、そもそもどの腸の細胞壁を活性化させてくれるのでしょうか?

そこでまたもや気になるキーワード、誰でもがなんとなーくイメージはできるけど、そもそもの定義はなんじゃろ的な「活性化」とは?

腸の細胞の活性化って何?

活性化は英語だと「activation」、そして腸は英語だと「Intestine」とか「gut」。このキーワードに納豆の英語表記「natto」を加えて、で世界中の医学論文のデータサイトである「pubmed」で検索してみると、10本の論文が検索結果にあらわれました。

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これらの医学論文は全部基礎実験レベルのものであり、人に対する納豆の効果というか、人間の腸の細胞を活性化することに関連するものはゼロ。

念のために日本語の論文検索サイトであるJ-STAGEで「納豆」とのキーワードで検索してみると、3530本の論文が検索結果として出てきました。そこで「納豆 腸 活性化」で絞って検索したところ結果は249件の論文に絞られてきました。

なお、J-STAGEは医学論文だけを対象としてはいませんので「納豆の歴史」とか「納豆の国際化にむけて」などの論文も検索結果として表示される点にご注意ください。

一番、納豆が腸の細胞を活性化させ免疫力があがる説に近い論文はこれでしょうかね。

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「Probioticとしての納豆菌の作用 腸内菌叢と腸管免疫システムに対する作用」(日本醸造協会誌/98 巻 (2003) 12 号/)。

この論文は醸造に関わる研究者が投稿する会誌であり、医学系論文とは言い切れません。でも、他の業種の研究者の仕事の中に、医学の分野でも十分に利用可能な研究もあるので有料だけどダウンロードして論文を拝見させていただきました。

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この論文は

納豆菌のprobioticとしての作用に関する研究がさらに発展することを期待している。

と締め括られています。

研究者が地道に研究を続けているのに、研究の一部を切り取って「納豆菌には腸壁の細胞や免疫細胞を活性化させることがわかっているそうです」と無責任な記事を書くのはお控えになっていただけると非常にありがたいのですけど。

やっぱり納豆は新型コロナ感染予防効果がある、との話が出回っていたようす

納豆は今では学校給食でも出るそうですね。今回の新型コロナ騒動の影響で全国的に学校閉鎖がおこなわれているため、納豆を学校給食に提供している会社がかなり困った状況になっていることを報道で知りました。

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朝日新聞デジタル「休校で給食食材余った⋯即売に長い列、15分で売り切れ」(https://digital.asahi.com/articles/ASN323JS7N32OBJB001.html)

私も家族も好みのめちゃくちゃ美味しい納豆があるため、時々工場まで買いにいくこともあります。

納豆を愛すべきあまり近所のスーパーで売れ残っていたら納豆が気の毒、と思ったら速攻に行動に移すのが当家の伝統。ちかくのスーパーの納豆売り場はこのような状況でした。

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売れ残っている様子はなく、安心しました。

ところがどっこい、やっぱりいるんですねえ、「新型コロナの予防には納豆が効果的」なんてことをどっかの誰かが言い出したようで、こんな事態が発生しているようです(局地的なものか、全国的なものかは不明。前掲のように少なくとも私の行動範囲のスーパーでは売り切れてはいませんでした)。

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https://yukawanet.com/archives/natto20200308.html

まことしやかに「納豆は新型コロナ感染症ウイルスの感染防止に効果がある」という噂が飛び交っているのです。

新型コロナ感染症の影響で品薄の納豆にとんでもない事実発覚

給食で使うはずの納豆が学校閉鎖によって余ってしまうのは問題ですけど、納豆が新型コロナ感染予防とのデタラメ記事を見つけたら、速攻でスマホやPCを閉じるか他のサイトをご覧くださいませ。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

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