デトックスは医学的な意味の解毒とはかけ離れた怪しいキーワードです。

デトックスしてダイエット、デトックスして体内に蓄積した重金属を排出しよう、などの健康関連情報がネットに溢れかえっています。

ママサイトとして愛読者が多い、「たまひよ」でもデトックスという言葉がカジュアルに使用されているのが非常に気になっています。

ついつい使ってしまう「デトックス」、でもデトックスという用語を使う医師はいません(例外あり)

まずはdetoxificationを略したと思われる「Detox(デトックス)」は一見医学用語風ですが、まっとうな医学では使わない言葉であることを頭に入れておいてください。

医師が患者さんにからだの仕組みや働きを説明するときは、あまり専門用語は使わない方が良いに決まっています。しかし、体内の老廃物を体外に排出することを、「デトックス(Detox)」を使って説明する医師に現時点ではお目にかかったことはないです(トンデモ医師は使っているようだけど)。

以前もブログ記事でデトックスという概念がかなり怪しげであることをお伝えしました。

英語のdetoxificationは解毒や無害化を意味しているために、通常の生活を営んでいる間に体内に蓄積してしまった毒素(?)をなんらかの方法によって強制的に体外に排出する意味で「デトックス」が世の中では使用されています。

たとえば子育て中のママに人気があってそれなりの信頼度が高いとされているベネッセが運営している「たまひよ」でもこんな感じで使用されています。

材料も作り方もとてもシンプルなスープですが、毎日続けることで、デトックス作用、免疫力アップなどの効果が期待でき、高血圧や糖尿病など生活習慣病の予防ができることで注目されています。

https://st.benesse.ne.jp/ninshin/content/?id=2079

デトックスにプラスして、「免疫力アップ」というニセ医学で多用されるワードが乱立している「たまひよ」、編集者はこれで通用すると思っているのですから、一般人が気軽にデトックスや免疫力アップという言葉を使ってしまうのもしかたないのかもしれません。

デトックスに関するまっとうな医学の世界での評価

医学用語に無いからニセ医学と断定することはできないとは思います。たとえばダイエット業界でなんのためらいも無く使用されている、「宿便」との言葉は医学用語では無いよ、と以前お伝えしました。

ところがここ数年、論文のタイトルに「宿便」を使用したものが数本でてきちゃっています。

デトックスに関して「’Detox’: science or sales pitch?」[1]という面白い論文を見つけました(PMID: 18075624)。

「デトックスは科学あるいは売り込み?」によれば化学物質や農薬や重金属が世界に蔓延しているために、知らず識らずのうちに毒素が体内に蓄積され、がんの原因になったり、生殖器や代謝、あるいはメンタルヘルスへも悪影響を及ぼしているために、デトックスは重要な効果が期待されているよ、って感じの内容です。

そもそもタイトルに「sales pitch?」と書かれているのですから、海外でもデトックスは代替医療業界で使われているセールストーク用語として医学の世界では受け止められている事情を推察することができます。

デトックスは代替医療用語であり、スタンダードな医学概念ではありません

デトックスは代替医療(Alternative medicine)を中心に使用されている用語であることを繰り返しお伝えしておきます。別に代替医療のすべてがインチキやニセ医学であると私は決めつけていません。しかし、代替医療の効果に関して、標準医学の標準治療で使用されているような科学的な手法によって検証されているものが稀であるために、スタンダードな医学を学んで実践している医師にとって代替医療はあくまで代替になってしまうのです。

「The dubious practice of detox. Internal cleansing may empty your wallet, but is it good for your health?」[2](PMID: 18700288)という医学論文がハーバード大学医学部から出版されています。

書き出しは衝撃的です(以下はグーグル翻訳使用)。

Internal cleansing may empty your wallet, but is it good for your health?(内部クレンジングはあなたの財布を空にするかもしれません、しかしそれはあなたの健康に良いですか?)

The dubious practice of detox

デトックスの概念は例えば瀉血や浣腸や断食はとして数千年前から存在していたが、現在のデトックスの概念である、普通に生活する上で体内に蓄積するとされている化学物質などを体外に排出することはアルコールや薬物を医療的な処置・治療で取り除く行為とは全く別物であることを伝えています。

つまり、

みなさんが考えているデトックスは金銭的負担が増えるだけであり、健康に良い行動にはつながっていないよ

ってことなんです。

そもそも肝臓や腎臓は人体には解毒や老廃物を体外に排出するために存在しているんですぜ。

ただでさえ不安である子育て中のママをさらに不安にさせるママサイトの問題

日常の診療で子育て中の保護者から相談される内容の多くがネットの情報が元ネタです。だれでも子育ては不安であり、可能な限りこどもに良いことをしてあげたいと考えるのは当然の行為です。

そんなときに、「こんな本があるから買って読むか、図書館で借りてみたら」とお伝えするのが森戸やすみ先生が執筆した、「子育てはだいたいで大丈夫」(内外出版社)です。

デト子育てはだいたいで大丈夫

注意:子育ては代替で大丈夫、じゃないよ(笑)

デトックスに関する記述はこの本には書かれていませんが、神経質になりすぎることは無いよ、との優しい語り口は迷いに迷っているママをほっとさせてくれると思います。

ところでベネッセのママサイト「たまひよ」は以前もこんなことをやらかしています。

2021年6月17日現在でも、妊婦さんにDHAやEPAサプリメントの服用をOKして大丈夫とのトンデモ記事は削除され、こたつレベルの電磁波が胎児に悪影響があるとの疑似科学記事も削除されてはいるのですが、いまだに母親にいらんお世話というかプレッシャーをかけ続けるトンデモ系ニセ医学である「胎内記憶」に関する記事は掲載され続けています。

メリットいっぱいで高血圧予防、便秘予防になって妊婦さんにとってうれしい野菜スープ(ハーバード大学式野菜スープと呼ぶそーです)推しのたまひよの編集者さん!!

そもそもデトックスってなんですか?

デトックスの作用機序はどうなっているんですか?

デトックスしたらどれほどからだによいのですか?


・・・そのあたりの説明をおねがいしたいと存じます。

参考文献

  1. Cohen M. ‘Detox’: science or sales pitch? Aust Fam Physician. 2007 Dec;36(12):1009-10. PMID: 18075624.
  2. The dubious practice of detox. Internal cleansing may empty your wallet, but is it good for your health? Harv Womens Health Watch. 2008 May;15(9):1-3. PMID: 18700288.

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

詳しいプロフィール

五本木クリニックのブログを購読する

五本木クリニック院長のtwitterアカウントをフォローfeedlyで五本木クリニックのブログを購読する