子育て中の母親に、「食品添加物は危険」と煽る一派の背後に隠れた怪しい動き

保護者、特に母親が子どもの食に気を使うのは自然な行為だと思います。しかし、ファストフードやコンビニ食、あるいは保存食に使われている食品添加物に対して過剰な警告を発する人たちがいます。

必要以上に食品添加物の危険性を煽る風潮は保護者たちに不要なプレッシャーをかけてしまっているのではないでしょうか?

そもそも添加物は国や地域で違いがあって当たり前

「ヨーロッパでは使用が禁止されている添加物が日本では当たり前のように使われている」「日本の食品業界は何を考えているのよ、キーッ!!」って、おっしゃる意識高い系の方が少なくはないようです。

そもそも食品添加物って、どのような目的で使用されているのかをご存知ですか?

昔々、冷蔵庫がどの家庭にもあるような生活を送れるほど日本は豊かではありませんでした、国民全体が世界的に見ると貧乏だったのです。その当時は食材を無駄にしないために様々独特な保存方法が地域や家庭で取られていました。一般的にはめっちゃ甘くするか、めっちゃ塩辛くするか、そのようなレベルの保存方法しか無かったのです。

当時は当たり前のように食中毒が発生し、医療も今よりは遅れていましたので重症化したり、死んじゃったりした人もいたのです。そんなこんなの日本で食品を長期間安全に保存方法の一つとして食品添加物が使用されるようになりました。

食品添加物にはもう一つの役割があります。

見た目を華やかにして楽しい食卓をサポートする着色料

和食の見た目の美しさは世界的に定評があります。様々な色とりどりの食材、どぎつい色ではなくほのかな美しさを演出する微妙な色。見た目がキレイで、食べて美味しければ楽しい食事になることは間違いありません。

例えばお正月のお節料理の定番「きんとん」の鮮やかな黄色に染め上げるために使用するのがクチナシです。この自然派さんも認めてくれると思うクチナシから抽出されたもので「クチナシ黄色素」という着色料があります。

このクチナシ黄色素は厚生労働省によって菓子、冷菓、めん類、農産物加工品などに使用することが認められています。黄色だけじゃなくて、赤色も青色も認められています。詳細は東京都食品衛生の窓 (https://www.fukushihoken.metro.tokyo.lg.jp/shokuhin/shokuten/chakushokuryo.html)などを参照してね。

でもねえ、このクチナシ色素は欧米では使用して良い食品添加物に含まれていないんだよなあ、どうしてかわかりますか?

よくよく調べたらこれは単純に欧米できんとんは作らないから、クチナシ色素を食品添加物として行政に申請した会社が無い、ってだけのことなんですよ。

「欧米ではこの着色料は認められていないのよ、キーッ!!」って方々、地域や国々によって需要が無い添加物が欧米の使って良い添加物一覧に掲載されていないことを見つけて、鬼の首を取ったかのように日本の添加物事情を語らないで欲しいと思います。

とりあえずコンビニ食を否定しておきますか的な思考回路

女性の社会進出推進が叫ばれている一方で、主婦に合理的ではない負担をかけてしまう圧力が存在します。例えば「丁寧な生活」、これはやたらめったらとにかく手作りが良い、手間暇をかけた食生活が偉いという価値観で、余計なお節介をするものです。

丁寧な生活を送る人々が毛嫌いしているのがコンビニ食。コンビニ食はとにかく添加物がてんこ盛りでカラダに悪い、特に子どもにコンビニ食を与えるなんて保護者失格という極論の意識高い系(本当に意識が高いわけじゃない人々)の方達に支持される思考回路です。

毎日毎日コンビニ食だったら、それはそれで栄養の偏りが生じることもあるでしょう。しかし、そのような極端な生活であったとしても健康被害と呼べるような状態になる前に、誰であっても自分たちの健康状態の異常に気がつくのではないでしょうか?

添加物怖い怖い系のトンデモさんは量の概念が乏しいのです。

自分たちは丁寧な生活を送る余裕があることをマウントしたいだけの人々による、非科学的かつ非医学的な添加物怖い怖い現象の持ち主は、自然派と言いながらサプリメントを積極的に摂取していたり、サプリメント販売にお忙しい方を見かけるのは稀な現象ではありません。

添加物を毛嫌いする風潮の原点はこの事件かもしれない

1955年に森永ヒ素ミルク中毒事件という悲惨な痛ましい出来事がありました。当時森永乳業が粉ミルクを製造するときに安定剤として使用していた化学物質にヒ素が混入してしまい、一万人以上の乳児がヒ素中毒になり100人以上の赤ちゃんが亡くなったという大事件が発生しました。

当時森永の粉ミルクは他社の粉ミルクより安かったため、ヒ素中毒になってしまった赤ちゃんのお母さんは「うちが貧乏で森永の粉ミルクしか買えなかったから赤ちゃんがこんなことになってしまった」と嘆いたという一文がある本に書かれていました。

悪いのはお母さんではなく、森永の管理体制なのに・・・保護者は子どもに何らかの健康問題が生じると自分を責めてしまうのです。

森永ヒ素事件で原告側に立って証言をした中川米造という医師がいました。中川先生の著作「医の倫理」を読んで感動して以来尊敬する医師の代表が中川米造先生です。たまたまニセ医学批判・疑似科学批判で知り合った方が中川先生のお孫さんであったのも何かの縁なんでしょうね(引き寄せの法則じゃないぜ)。

添加物を必要以上に忌避すると、デトックスというトンデモにつながってしまう

デトックスという限りなくインチキであるニセ医学があります。

巷に溢れかえるデトックスは添加物として体内に取り入れた毒を体外に排出するために、様々な原始的呪術的な手法から疑似科学系ニセ医学手法まで多くのラインナップを取り揃えた、標準的な医学の考えからはかけ離れたトンデモ医学です。

体内に溜まってもいない食品添加物、万が一、体内に若干溜まっていたとしてもカラダに悪いとは限らないかのしれない食品添加物、それの恐怖を必要以上に煽ってデトックスなるニセ医学に誘導する傾向が食品添加物怖い怖いさんたちにはあることに注意が必要です。

高度成長期に添加物まみれの駄菓子や食材で育ってきた世代がそれ以前に成長期を過ごした人たちと比較して、平均寿命が極端に短くなってはいないことを考えると、必要以上に食品添加物を恐れる必要はありません。もしも、周囲にそのような人がいたとしたら、その人は添加物を忌避することによって何らかの利益を得ているのか、あるいは単に無知なだけです。

執筆者情報

桑満おさむ医師

このブログ記事の筆者:桑満おさむ
Osamu Kuwamitsu, M.D.

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

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