fbpx

都医師会の尾崎会長のイベルメクチン推し発言、会長は論文をお読みでしょうか?

更新日:

東京都医師会の尾﨑治夫会長が医療現場を大混乱に陥れる可能性のある爆弾発言をしてしまいました。

医師でも東京都医師会長のイベルメクチン発言を誤解

https://twitter.com/nanaracco/status/1426883810440871941?s=12

どこかの医師会の感染症関連理事でさえこのような受け止め方をしています。

イベルメクチンの服用を東京都医師会が推奨?

都医師会の尾﨑治夫会長が2021年8月13日の緊急記者会見でイベルメクチンというオンコセルカ症の治療薬が感染症に効果がある発言したと受け止められています。

詳細に会見を視聴してみると、イベルメクチンがいま世界中を席巻している感染症に対する治療効果があるだけではなく、感染予防効果もあると受け止められてしかたのない内容です。

しかし、イベルメクチンが現在世界中に拡散している感染症に対して効果があることは論文ベースでは全く認められていないのです。

そこで大慌てで私はこのようなブログ記事を書きました。

東京都医師会長のイベルメクチン関連発言、多くの開業医は一気にやる気モードがダダ下がり。

東京都医師会長のイベルメクチン関連発言、多くの開業医は一気にやる気モードがダダ下がり。

東京都医師会の会長の発言がニュースになる・一般人に影響を与えるなんてことはこれまでほとんどなかったはずなのですが、コロナ禍という特別な状況下で、トンデモないことになっています。ひとりの医師の個人的な意見というか私見が、東京都の医師の総意かのように報道されて、医師の多くは非常に困惑しています。何が問題なのか解説します。

しかし、前掲のスクショのように医師であっても、東京都医師会がイベルメクチン服用を推奨しているように受け止められてしまう状況になってしまっています。

イベルメクチンの効果を示した論文は捏造であり既に撤回されている。

これだけ世界中に蔓延していて多数の死亡者を出している感染症ですから、それこそ世界中の医師以外の研究者も血眼で治療薬を模索しています。ひょっとして効果があるんじゃないかと言われつつ消え去った薬も少なくはありませんが、その中の代表例がイベルメクチンなのです。

イベルメクチンが新型コロナ感染症に効果があるのではないかという話は2020年に「Antiviral Research」という医学専門誌に掲載されたこれです。

イベルメクチンの抗ウイルス効果論文

しかし、この論文は「in vitro」と書かれている試験管内での実験の結果であり、イベルメクチンを人体に投与したものではありません。

この論文がきっかけとなってイベルメクチンの投与を開始した国もあったようですが、思わしい感染抑制効果も感染者に対する治療効果も残念ながら認められていません。

イベルメクチンに関する誤解を招く論文は多く研究によって効果は否定されてます

結論からお伝えします。

イベルメクチンはいくつかの国や医療機関及び医師によって誤って使用されており、この疾患の治療に対する有効性と安全性の科学的証拠はありません❗

世界中が特効薬的なものを求めていて現時点でイベルメクチン関連の臨床データが不均一で信頼性を欠くものであると認識されているため、しっかりしデータを取るために日本の製薬会社がイベルメクチンの治験を開始しようという矢先に都医師会の会長尾崎先生のそそっかしい発言ですから、現場の臨床医は困惑しています。

イベルメクチンの効果を否定した論文の代表はこれ

イベルメクチンが期待されたような効果がないことを伝える論文は多数あります。JAMAという信頼性の高い医学専門誌にもこのような論文が掲載されています。

イベルメクチンの効果を否定した論文

https://jamanetwork.com/journals/jamanetworkopen/fullarticle/2779044

この論文の結論は

イベルメクチンはプラセボを投与された患者と比較して有意差はありませんでした。

です。つまり全く効果のない偽薬を服用させたグループとイベルメクチンを服用させたグループと比較して効果に差が無い、つまりイベルメクチンを服用する意味がないことを伝えています。

イベルメクチンを製造販売している製薬会社が効果を否定

製薬会社は特効薬を開発すれば多大な利益を得ることができます。世界中が求めている薬を開発したらそれはそれは製薬会社としては大喜びでしょうね。しかし、イベルメクチンに関しては次のようなアナウンスをしています。

MSDがイベルメクチンの効果を否定

https://www.msd.co.jp/static/pdf/announce_20210402.pdf

もしも効果があり世界中で大ヒット商品間違いない自社の薬を否定したとしたら株主からめちゃくちゃ訴えられる可能性があるのに、イベルメクチンを製造販売している製薬会社自体が現時点では効果を否定しています。

イベルメクチン使用経験を喧伝する医師の問題点

先日テレビで自分はいままでイベルメクチンを積極的に処方して、診ている患者さんの誰一人死亡していない、と豪語しているお医者さんを見かけました。

このお医者さんがイベルメクチンブームに油を注ぐ結果になっていると感じています。この話を聞くには重要なポイントがあります。この先生、そもそも重症化しない軽症の患者さんだけを担当して診察治療しているんじゃないでしょうか?

バイアスかかりまくりの話に振り回されないように注意喚起したいところで、東京都医師会の尾崎会長の無責任発言というさらなる油が大量に注がれてしまいました。

私が所属する目黒区医師会は東京都医師会にもれなく所属し、東京都医師会は日本医師会に所属する組織構成になっています。日本医師会が東京都医師会の尾崎会長の爆弾発言に対してなんらかの対応をしていただけることが誤解を解消するいちばんの手段じゃないかなあ。

関連ブログ。

強引なイベルメクチン推しで悪夢のディオバン事件を思い出してしまった。

強引なイベルメクチン推しで悪夢のディオバン事件を思い出してしまった。

世界中で使われている・安い・日本人が発明してノーベル賞受賞と、年配の人たちが喜んで飛びつきそうなキャッチーなフレーズがテンコもりのイベルメクチン。世界中の多くの人を救い、これからも救い続ける偉大な薬ではありますが、これは新型コロナウイルス感染症の薬ではありませんし、検証した結果、効果なしと判明しています。

「いつでも、誰でも、何回でも」の世田谷区の保坂展人区長もなぜかイベルメクチン推し

【ニュー世田谷モデル】なぜ世田谷の保坂区長はイベルメクチンにこだわるのでしょうか?

【ニュー世田谷モデル】なぜ世田谷の保坂区長はイベルメクチンにこだわるのでしょうか?

コロナワクチンは登場したものの決定的な治療薬が出てこない中、イベルメクチンが効くのでは?と注目され、効果あると信じ込んで個人輸入して飲んでいる人も。イベルメクチンはワクチンに否定的な人をはじめとしてなぜこんなにも人を惹きつけるのか?効くというデータが捏造だったり査読前の論文が大量に出ては否定される異常事態です。

著者プロフィール

桑満おさむ(医師)


このブログ記事を書いた医師:桑満おさむ(Osamu Kuwamitsu, M.D.)

1986年横浜市立大学医学部卒業後、同大医学部病院泌尿器科勤務を経て、1997年に東京都目黒区に五本木クリニックを開院。

医学情報を、難解な医学論文をエビデンスとしつつも誰にでもわかるようにやさしく紹介していきます。

桑満おさむ医師のプロフィール詳細

Affiliated Medical Institutions

主な提携医療機関

一般診療
診療日
月・火・水・金
9:30~12:30/15:00~18:30

土 9:30~12:30
休診日
木・日・祝
受付時間
9:00〜12:15/14:30〜18:15

泌尿器科・内科・発熱外来

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7000

美容診療
診療日
月・火・水・木・金・土
10:00~18:30

※完全予約制です。ご予約はお電話ください。
休診日
日・祝
受付時間
10:00〜18:30

美容外科・美容皮膚科

フリーダイヤルがご利用になれない場合は03-5721-7015

© 2023 医療法人社団 萌隆会 五本木クリニック